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    東野文風

    小説オンリー。二次創作の掌編を投げる予定

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    東野文風

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    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min

    第10回目『ホラー』
    本編ドラロナでロくんが生け贄役に選ばれる話です。(+55min)
    タイトル通りの創作変態吸血鬼が出てきます。CP要素は薄め、恐怖描写は皆無の上あっさり解決しますが宜しくお願いします。

    「我は吸血鬼『人身御供シチュエーション大好き』!」 ――はて、自分はどうしてここにいるのだろうか。
     夕餉を食べている最中、野菜の煮物を飲み込んだ青年は不意にそんなことを思った。
     古めかしい和風の旅館みたいな屋敷で過ごすようになって、何日目になるだろう。朝に目を覚まして、人肌程度の湯で沐浴を行い。白一色の着物を纏い、しめ縄で四隅を囲った部屋で屋敷の人々が唱える歌声に日がな一日、耳を傾けて。肉と魚と乳を使わない、野菜と穀物だけの食事を三回摂って。一日の終わりに再度沐浴を行って眠る。
    「おや、どうかされましたかな?」
     今の今まで何の疑問も持たずに行ってきた日課に首を傾げている青年に、背後から声をかける者があった。振り返れば、料理人のような格好をした異様に血色の悪い男が薄い笑みを浮かべている。男の足下には何故かアルマジロがいて、ヌーと可愛らしい鳴き声を上げていた。
     ここに動物に入ってきて大丈夫なのかとか、そんな疑念は重ねての問いかけに遮られる。
    「何か料理にご不満が?」
    「いや、そんなことは……凄く美味しいです」
    「そうでしょうそうでしょう。特にその煮物は自信作でしてね、オランダミツバの風味を抑えつつ活かした一品になります」
    「はぁ……あの、オランダミツバとは?」
     聞き慣れない野菜の名前に思わず尋ねると、男は口の端を愉快そうに吊り上げた。ぐっと顔が近づき、赤い目が青年の視線を奪った瞬間。
    「知っているだろう。セロリだよ、ロナルド君」
    「        」
     ぱきん、と、虚飾が剥がれる音がした。



     セロリ、という単語を脳が認識すると同時。
    「オンギャボロロアギャロッパーーー!!」
     退治人ロナルドは畳の上に倒れてもんどり打って転がり周り、襖に顔面を盛大にぶつけて沈黙した。廊下を駆けていく吸血鬼一人とアルマジロ一匹の足音が遠くに聞こえた。
    「……あんのクソ砂ァァァ!」
     数秒後、顔を押さえて立ち上がった彼は憤怒の表情を浮かべて衝突で歪んだ襖をこじ開けて廊下を走りだす。屋敷で働いている人らしき白い服の人々がすれ違う度に驚きの表情を浮かべるので、その度に軽く頭を下げつつスピードは下げずに疾走した。
     頭はまだ本調子でなく、自分がそもそもどうしてここにいたのかは完全には思い出せない。ただ一つ確かなことは、あの悪魔的緑の野菜を混入して食わせた邪悪な吸血鬼に鉄槌を下さねばならないということだ。
    「くそっ、どこに行きやがった……そこか!」
     廊下の途中、分岐点で立ち止まり五感を研ぎ澄ませる。左方向にアルマジロのジョンの鳴き声が微かに聞こえて、そちらへ駆けだした。
     それから、声、足音、時折砂が崩れる音を頼りに廊下を突き進み。気づけばロナルドは明らかに何かありそうな、豪華な装飾が施された木製引き戸の前に立っていた。錠前は外されている上に僅かな隙間が開いていることからこの中に入ったのは間違いないだろうが、金色の蛇で彩られた装飾には妙な威圧感があって入るのを躊躇してしまう。
    「ヘイヘーイ、そんなところで立ち止まってどうしたんだロナ造? B級ホラーでトイレに入れなくなっちゃう五歳児には刺激が強すぎたかね?」
    「ぶっ殺す!!」
     しかし、中から聞こえた煽りでよく分からない威圧など一瞬で忘れた。両開きの引き戸を勢いよく開き、薄暗くてだだっ広い空間に足を踏み入れ。
    「やぁやぁゴールおめでとうロナルド君! 賞品に半田君も絶賛セロリレシピ詠唱を聴く権利を――」
    「一兆回死んどけクソ砂ァァァァァ!」
     中で憎らしいほど楽しげに鈴を振ってる吸血鬼ドラルクを、背後のオブジェもろとも蹴り飛ばしたのだった。
     床に転がり落ちた蛇のオブジェが砕ける音。
     主人の死を嘆くジョンの鳴き声。
     砂山と貸したドラルクが再生する、流れる砂の音を逆回しにしたようなノイズ。
    「……あ」
    「やれやれ、やっと目を覚ましたようだな」
     いつの間にか料理人姿から普段の貴族服に戻っていたドラルクに呆れた様子で言われた頃には、ロナルドはやっと本来の目的を思い出していた。



     ――あるハイキング場で失踪者が続出している。吸血鬼の仕業である可能性が高い。
    「すみませんすみません、でも僕、本当に悪気はなかったんです……」
     その元凶たる、神社の神官っぽい服を着た吸血鬼は縄で縛られた状態でそう言った。いつの間にか着ていた着物から、タンスから回収した退治人服に着替え直したロナルドは、今回も変態案件の一種であったことに何ともいえない気分になりつつ「それで」と話を聞く姿勢に入る。
    「えっと、吸血鬼『ひとみ、ごくシチュエーション大好き』さん」
    「吸血鬼『人身御供シチュエーション大好き』です。参加者さんとのグループRINEでは人見さんと呼ばれています」
    「被害者とRINEでやり取りしてんの?!」
    「いやー、いつもはこんなに催眠をがっちりやらない、っていうかできないんですけどねー」
     人見曰く、普段は己の性癖を満たすために同好の志をSNSで集い、それっぽい廃墟や民宿を貸し切って人身御供ごっこをしているらしい。彼の催眠能力はあくまで演出を盛り上げる一環に過ぎず、生け贄役は人見の使い魔である蛇に丸呑みされるものの、卵として排出された後で万事無事に外に出られるそうだ。驚くことに生け贄役は人気で、特に美肌効果があると卵に入りたがる女性メンバーが多いとか何とか。
    「ふむ、今まで些細だった能力が急に成長したと?」
    「そうなんですかねぇ、自分にはいまいち分からないんですけど」
     ドラルクが訝しげに問うのに対し、当事者である筈の吸血鬼も妙に曖昧な態度で答える。
    「実は僕、この前ちょっと野暮用で新横浜に行ってて。帰る直前にロナルドさんを見たんですよ」
    「は、俺?」
    「そうです!」
     思わず自分を指さすロナルドに、人見は心なしか目を輝かせて頷いた。
    「退治人と勝負するのは吸血鬼の誉れでしょう? ロナルドさんみたいな若くて逞しい退治人を生け贄にして儀式成功できたら素敵だろうなーと思ったらテンション上がっちゃって、気づけば山奥の旅館貸し切るどころか従業員とか宿泊客とか近くでハイキングしてた方とかスカウトしながら催眠かけちゃって……いや本当に申し訳ありませんでした」
    「……なるほど」
     供述を一通り聞いたドラルクがしたり顔で頷く。
    「つまり新横浜の変態エネルギーとロナルド君の歩けば変態とぶつかるホイホイ体質が化学反応を起こし、変態を意図せず進化させてしまったと」
    「誰が変態特化ゴキホイだ変態的クソザコ砂野郎」
     ドラルクを一度エルボーで砂にした後、ともかくこれで解決だとロナルドは肩の荷を下ろす。背後で再生した彼がジョンと意味深に目を合わせていたことについては、VRCからの連絡に応答していた為に気づくことはなかった。



    「あの同胞、そもそも趣味の参考として"常夜神社"を見る為に新横浜に来たとか。……いやはや、あのまま丸呑みにされていたら果たして今までと同じ様に出てこられたのかね。全く、どんなにマーキングしても足りないのが面白くも困った人間だ」
    「ヌー……」
    「大丈夫だよジョン。最後の料理にこっそり魚のすり身、肉と卵そぼろに牛乳煮を紛れ込ませたからね。あの若造はすっかり生臭い"こちら側"へ逆戻りさ」
    「ヌン、ヌヌッヌ!」
    「まぁ暫くはいつも以上に肉を食べたがるだろうから、暫くはボリューム強化週間としてやろう。……ということでジョン、間食は控えるように」
    「」
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    Replies from the creator

    東野文風

    DONE #夏のヌーフェス
    オンリー開催&ヌー君お誕生日おめでとうございます!

    こちらは「お3」の展示小説になります。
    ・Δ世界線でジョンとノース本部長が睨み合ったりにっぴきがワヤワヤしたりする話です
    ・主従の出会った時期とか色々捏造してます
    ・ジョンはドラルク隊の隊長補佐という役職を持っている設定
    ・本部長が憎まれ役っぽい立ち回りに見えるかも

    全体的には平和でほのぼのな話です。よろしくお願いします!
    お勤めマジロとスコーンとヒゲ「どうしました、おじい様……この子を、私に?」
     その時のことは、いつまでも覚えている。
    「は、拾った? 大丈夫なんですか条約とか法律とか……問題ない? 本当ですね、何かあったら助けて下さいよ?!」
     子供の小さくて柔らかな手の温もり、まだ頬が痩けていないあどけない面立ち、声変わり前の溌剌とした少年声。
    「はぁ……えっと、こんにちは」
     そして、一等星のような黄金色の目と視線が合った瞬間、直感したのだ。
    「……ふふ、君、テニスボールみたいだな」
    「ピュー」
     己はきっと、彼に出会う為にこの世界、この時代に生まれたのだと。

    「さぁ、そこに掛けたまえ」
    「ー……」  
     吸血鬼対策課本部のとある一室。部屋の主に促されてフカフカの椅子に渋々座った一玉のアルマジロは低い唸り声を上げた。
    5331

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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
    2074

    sirokuma594

    DONE200年物のメッセージボトルがようやく退治人の元に流れ着いた話
    #ドラロナワンドロワンライ一本勝負 (@DR_60min)よりお題「海」で書かせていただいたものです。
    純情inボトル、onペイパードラルクが初めて手紙を書いたのは、8歳の時の海辺でのことだった。

    流れる水の傍というのは、吸血鬼にとって昼と同じくらい恐ろしい。虚弱なドラルクであれば尚更だ。人間の子供であっても海の事故は多いという。当然、心配性の父母はドラルクを海になど連れていきたがらなかった。

    「おじいさま、あれはなんですか?」
    「手紙。瓶に入れてどこかの誰かが流したの」
    「てがみ! よんでみたいです」

    偉大かつ子供のような祖父の腕に抱かれ、ドラルクは海辺の綺麗な小瓶を指差した。夜の砂浜に動くものは二人の他になく、曇り空の果てから真っ黒な水が唸るように打ち寄せる音だけが聞こえていた。
    ドラルクは祖父に似て好奇心が旺盛だった。血族には内緒の二人きりの冒険にも当然付いていく。手紙入りの綺麗な小瓶も当然欲しがった。祖父はキラキラと期待に満ちた孫の顔を見て、裾が濡れるのも構わずにざぶざぶと波打ち際を歩いて行った。祖父の大きな手の中に収まった透明な丸い瓶を見て、ドラルクはさらに目を輝かせた。
    5312

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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第4回目『デート』で参加させて頂きました(計130min)
    できてるらしい読切ドラロナが夜の植物園に行く話です。よろしくお願いします。
    お土産に赤い薔薇を一本買った 今日も今日とてロナルドに呼び出されて外に躍り出る夜。本日の目的地は、某県某所にある植物園であった。
    「へー、色々あるもんだねぇ」
    「約七百種、約六万本あるんだとよ」
     興味深そうに周囲の花壇に植えられた花を見回すドラルクに、ガイドブックを手にしたロナルドが淡々と返す。すっかり日が落ちた夜空の下、淡い光で照らされた植物が彼らを取り囲んでいた。
    「ねぇロナルド君、私あっちの熱帯植物館っての見てみたい」
    「……お前それ、暑さで死ぬんじゃねえの」
    「一回だけ、一回だけ試させて! まだ今日は死んでないから数分で復活できると思うし! それに、仕事なら全部見回る必要があるだろう?」
    「それは……くそ、仕方ねぇな」
     一回死ぬまでだからな、と不承不承といった態度で許可を出したロナルドにドラルクは微笑む。一回までと言いつつ、次案を出せば乗ってくれることが簡単に想像つくのが楽しい。仕事とはいえ、彼がわざわざチケットを用意し誘ったという事実に、己が思った以上に浮かれているのを感じる。
    2069

    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min

    第10回目『ホラー』
    本編ドラロナでロくんが生け贄役に選ばれる話です。(+55min)
    タイトル通りの創作変態吸血鬼が出てきます。CP要素は薄め、恐怖描写は皆無の上あっさり解決しますが宜しくお願いします。
    「我は吸血鬼『人身御供シチュエーション大好き』!」 ――はて、自分はどうしてここにいるのだろうか。
     夕餉を食べている最中、野菜の煮物を飲み込んだ青年は不意にそんなことを思った。
     古めかしい和風の旅館みたいな屋敷で過ごすようになって、何日目になるだろう。朝に目を覚まして、人肌程度の湯で沐浴を行い。白一色の着物を纏い、しめ縄で四隅を囲った部屋で屋敷の人々が唱える歌声に日がな一日、耳を傾けて。肉と魚と乳を使わない、野菜と穀物だけの食事を三回摂って。一日の終わりに再度沐浴を行って眠る。
    「おや、どうかされましたかな?」
     今の今まで何の疑問も持たずに行ってきた日課に首を傾げている青年に、背後から声をかける者があった。振り返れば、料理人のような格好をした異様に血色の悪い男が薄い笑みを浮かべている。男の足下には何故かアルマジロがいて、ヌーと可愛らしい鳴き声を上げていた。
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    東野文風

    DONE #ドラロナワンドロワンライ一本勝負
    @DR_60min
    第11回目『バトル』で参加させて頂きます(+10min)
    できてる本編ドラロナで糖度はあっさりめ。ドさんが捕まって闇コロシアムの賞品になったり、殴り込みに来たロくんがスケスケの衣装を着たりする話です。よろしくお願いします!
    催眠かセロリでも持って出直してこい ――やたら華美で豪奢な前時代的なコロシアムの中に、観客たちの歓声が湧き上がる。
     円筒形のケースの中に博物館の展示物のように押し込められたドラルクは、冷めた気分で最上階から見える景色を眺めていた。頭上の空気穴は砂粒を通さないようにきめ細かいメッシュが貼られており、適当に壁を蹴った反作用死で脱出を試みることは難しそうである。
    『それでは、本日の豪華賞品を求める勇敢な挑戦者を――』
    「はー……」
     つまらない気分のまま、ため息を吐く。自分が賭ける側になったり実況席に座ったりするならともかく、ただただ身動きできない賞品のように扱われるのは面白くない。
     スピーカーから聞こえる実況はスルーしつつ、反対側に見えるVIP席らしき場所へ視線を向ける。「悪い吸血鬼が私有地に潜んでいる気がするから調査して欲しい」という、やや具体性に欠けた依頼を事務所に持ち込んできた人間が一人、その男に露骨にゴマすりされてふんぞり返っている吸血鬼が一人。どうも自分たちはまんまと嵌められたようであった。
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