komaki_etc 波箱https://wavebox.me/wave/at23fs1i3k1q0dfa/北村Pの漣タケ狂い ☆quiet follow Yell with Emoji POIPOI 224
komaki_etcDOODLE雨想、成人式リクエストおちょこ 日曜日、実家には帰らなかった。 正確には、帰る暇がなかった。年始早々仕事が続いたのもあるし、正直成人のお祝いなんて、東京でも出来るのだ。 実家には正月に顔を出したし、そこでお祝いの言葉をかけられて、おしまい。この方が気が楽で助かった。中高の頃の同級生と成人式の会場で会ったら、きっとあっというまにもみくちゃの質問攻めにされて、あることないこと噂が広まって、テレビ中継でその様子が報道されてしまうのだ。ほんの数人の親しい人とだけ連絡がとれればそれでいいし、それは成人式の時じゃなくてもいい。兄さんには「行ったらどうだ」と言われたけれど、行かない選択をしたことを後悔はしていない。 「それでね、九郎先生、一希先生と、袴で写真を撮ってきたんだよー。ほら」 2008 komaki_etcDOODLE漣タケ、海にて人魚の歌 人魚姫の物語が、とてもしあわせとは言えない終わり方だと知ったのは、つい最近のことであった。 一月の空気は凛と冷たく、凛という漢字が冬生まれであることを嫌でも感じさせる。寒さに思わず丸まってしまう背中を伸ばしながら、タケルは海を目指していた。 電車は少し混んでいた。冬休みが開けたからか、日常は通常運転に戻ったようだ。この時期の座席はあたたかい。電車そのものが暖房器具のようだった。 いくつか乗り継ぎをしていくうちに、窓の外に海が広がった。人工的に切り取られた海はそれでも壮大で、水平線に圧倒されてしまう。 駅に降りても、誰も海に心を躍らせていなかった。地元の人にとっては当たり前の光景であるし、冬にわざわざ海を求める人は稀有な存在だ。黒や灰色のコートが電車から排出されたり飲み込まれていく様は、波の音に反してなんと無機質なことだろう。 5753 komaki_etcDOODLE漣タケみぞれ みぞれが世界をゆるゆると冷やしていく。ぐしゃぐしゃになった地面を喜ぶ者は誰もおらず、ならばいっそしっかりと雪が降って欲しいとすら願う。交通網が混乱することはわかった上でだ。それほどまでに、みぞれは人々から嫌われている。 でも、と思う。窓ガラス越しに見るそれは、なんだか氷砂糖みたいで綺麗だ。街灯がじんわりと滲んで、その仄かな明るさがろうそくみたいで。 「冷えますねえ」 タクシー運転手は独り言のようにそう言った。俺は「そうですね」と答えて、シートベルトに指を滑らせる。冬のタクシーはいつも、どこか寂しい。みぞれが車体を叩く。運転手はおかまいなしに道を進んでくれるから、俺は安心して背もたれに身を預けた。 2608 komaki_etcDOODLE漣タケ、寒空の下西高東低 季節風というのだったか。北風が頬を切り裂くように吹いていく。おそらくこちらが北で間違いないと思う。太陽の照りが頼りないから。 指先が氷のように冷たいとは表現するものの、本当に氷と同じだけ冷たいのかは比べたことがない。チビの家の冷蔵庫の製氷皿を思い出す。氷が詰まってたり、詰まってなかったりする、白い受け皿。夏に「コーラを入れたらコーラ味の氷になって美味いんじゃないか」と二人して閃いたが、出来上がったそれは薄まった味でたいして美味しくはなかった。あれはもう半年前の出来事なのか。カレンダーは下半期になった途端に早く走り出すような気がする。 チビとの待ち合わせ場所の目印はポストだった。赤い四角は街中にうまく溶け込み、けれど一度目立つと途端に目を引く。何かの合図みたいだと思った。ポストの隣に立った時、横を歩いていた親子連れが「ここまで来たらだいじょうぶ」と言っていた。なにかから逃げているのかと思わせる言葉だ。でも、きっとポストが境目だったのだろう。なにかから守ってくれるおまじないなのだろう。 1983 komaki_etcDOODLE漣タケ、悪夢を見た夜中の話月の話 トラックに轢かれる夢を見て飛び起きる。 妙に生々しい夢だった。眩すぎるライトも、叫ぶようなブレーキの音も、耳を劈くようなクラクションも。 いや。夢じゃなかったのかもしれない。俺は以前、事故に遭っている。その時の記憶はとっくに失っていたが、脳みそのどこかに忘れてきていただけなのかもしれない。はあ、と深いため息を吐いた。こういう時は深呼吸だ。布団がしっとりと水分を含んだように重く感じる。 動悸が治まっていくと、隣にアイツが寝ていたことを思い出す。そうだ、コイツは夕飯をたかりに我が家に押しかけ、俺の分まで総菜のハンバーグを食べ尽くして、悠々と寝こけているのだった。いびきが部屋に響くのを聞きながら、よくこの中で眠れたな、と我ながら感心した。俺はアイツの鼻を摘まんだ。 2057 komaki_etcDOODLE漣タケ、レッカイ花束 退屈なレトロ映画を見た。「それらしくしよう」とポップコーンをわざわざ用意して見たのに、ありきたりなカーチェイスも歯の浮くベッドシーンも、俺たちのキスでかき消えた。 俺の部屋のソファベッドを占領しているレッカは何度も大あくびをしていたが、大人しく最後まで見ていた。キスの促進剤だとでも思っていたのだろう。エンドロールが流れた途端覆いかぶさってきたので確信する。映画を見ようと言った俺を否定しなかったのも、大人しく銃撃戦を見ていたのも、全ては俺を食べるためだったのだ。 「コーラの味」 バードキスを繰り返しているうち、そう言われた。だって映画にはポップコーン、ポップコーンにはコーラなんだろう? 俺たちは映画館で映画を見たことがない。 1347 komaki_etcDOODLE漣タケ、ファンクロ花冠 月が落っこちてくるとか言って、街は混乱していた。 ばかだなあ、とボクは笑う。月なんて落っこちてくるわけがないのに。だって宇宙でプカプカ浮いて、太陽の光を反射しているだけの、無力な星なんだから。 「ね、ファング、そう思うでしょう?」 ベッドの隣に寝ころぶダーリンは、側に転がるシケモクを咥えて「ああ」と答えた。この人にとってボクを抱くことなんてただの作業でしかなくて、どうにも情は湧かないのだという。それでも吐精は出来るんだから、人間って面白いね。 「月はもともと、いつ落ちてきてもおかしくねえんだ。今更慌てすぎなんだよ」 「ええ、そうなの?」 ファングがジョークを言う時は、死体を豚のように蹴り転がすときだけだと相場が決まっていた。テメェのイチモツを切り取ってお口に詰め込んで身体じゅうほじくってやろうか? なんて、下品なこと、ボクは言えないや。その時はマイナスドライバーで始末したっけ。うーん、センスがない。 1329 komaki_etcDOODLE雨想。とりとめもない話傘の降る星 雨の代わりに傘が降ってくるようになって、久しい。 つまりどれだけ濡れても構わないということだねー、と言うと、人は「それは何か違うだろう」と言って眉を顰める。だって、いつでも傘をさせるのだから、同じことだろうに。 兄さんと暮らしているマンションの前の道路に、傘が積み上がっていた。雪かきのように、もしくはイチョウを掃くように端においやっているのは、雨彦さんだった。 「おはよう、北村」 「おはようございますー、どうしてここにいるのー?」 「お前さんに会いたくてな」 雨が降らない世界で、農作物は枯れていく。近いうちに人類は滅ぶのだろう、傘の焼却も追いつかない。雨彦さんは家業が忙しいとかで近頃会えなかったから、実は寂しくて、僕はこっそり祈っていた。だから、僕は傘に感謝した。家まで出迎えに来てくれたのだ。濡れなくてもいいし、僕はこれでいい。 640 komaki_etcDOODLE雨想、あけおめめしあがれ 二人暮らしを始めて最初の元旦だから、という理由をつけて、初日の出を見にベランダを出た。ベランダの方角は東南だからしっかり日の出が見えるわけではないけれど、空が明るくなるのを一緒に見届けられたらそれでいい。 二人でひとつの毛布をかぶっている。二人羽織みたいに。寝起きの雨彦さんはあたたかくて、抱きしめられるのが心地よかった。 「お、そろそろだな」 空がだんだんと水色に染まっていき、黄色が差し込んでくる。空気は凛と冷たくて、鼻の奥が痛かった。白みだした世界を雨彦さんの腕の中から見ながら、僕は吐息で手をあたためた。 「腕の中 迎えて願う 初日の出」 「ほう、何を願うんだ」 「トップアイドル、でしょー?」 「それ以外で」 976 komaki_etcDOODLE漣タケ、あけおめ呼んだだけ 元旦は一緒に初日の出を見よう、と言ってみたら、なんでだよ、と言われてしまった。なんでと言われても。 「オマエと一緒に特別を味わいたいからだ」 アイツのことだから、太陽なんていつ見ても同じだろ、くらいのことは言いそうだった。けれどアイツはクリスマスの残りのチキンを食べながら、まあいいけど、と呟いた。特別、という言葉が、なんだかアイツのなかですとんと落ちたようだった。 トクベツ、というのは、日常のなかの非日常を味わうのに便利な言葉である。値段の高かった服を着るとか、牛肉を食べるとか、入浴剤を入れるとか。アイツがそのいちいちに反応しているかはわからないが、俺が大切に思っているものを踏みにじったりはしない。 1220 komaki_etcDOODLE漣タケ。タケルの看病頬 チビから合い鍵を渡されたのが一ヶ月前だった。これから冬を迎えるんだから、外で寝てたら風邪ひくだろ、毎日円城寺さんの家に泊まるのだっていい加減迷惑だろうし、と。 「らーめん屋は何も言わねえぞ」 「遠方ロケだってあるだろ。しょうがないから俺のところに泊めてやるんだ、ありがたく思え」 「まだチビの厄介になるなんて言ってねえ!」 そんなことを言いつつ、でも寝床がひとつ増えるのはありがたい、と思った。選択肢が増えるというのは、生きていく上で重要だ。悩んだ時、迷ったときに、正解への手段が一つ増えるのだから。 それから、何回かチビの家に泊まった。らーめん屋の家と同じくらい狭くてボロいが、雨風が防げればそれでいい。あたたかい布団があればそれでいい。 1996 komaki_etcDOODLE漣タケセックス 1343 komaki_etcDOODLE雨想。スタバのカスタム呪文 新宿は少し歩くだけでスタバにぶつかる。さてどこに行こうか、となった時、「とりあえず」で寄れるのがスタバのいいところだ。 年末年始は晴れが多くて助かる。人ごみは暗めの色のコートやジャケットのせいで真っ黒で、クリスマスの残骸のイルミネーションだけが綺麗だ。鳩の群れみたい、と思った。 そんな中でも、雨彦さんは目を引く。身長のせいでもあるが、やはり芸能人というべきか、華やかなオーラが増したように思う。黒のタートルネックなんて着るんだ。色気がとんでもないことになっている。これは早々に店内に仕舞わないといけない。 仕事と仕事のあいまの、ぶらりとしたデートだった。この程度じゃデートとは呼べないかもしれないが、二人で歩いていたらそれはもうデートとして換算することにしている。そう名付けるだけで、時間つぶしの散歩も特別なものになる気がする。 1757 komaki_etcDOODLEれおたいクリスマスデートマーキング まあクリスマスだからと言って何があるわけでもない。今日も今日とて部活がある。クラスメイトの女子たちはプレゼントを交換しあったりしていたが、男からしたら無縁の世界だ。街中がきらきらしているのも、季節の催し物だな、と思うくらいで。 ふっきれたとはいえ、マネージャーの方は見ないようにしている。たとえばこの後彼氏とデートなのかな、と思うことほど、空しいものはないからだ。リストバンドで汗を拭きながら、体育館の時計をちらりと見る。大きいアナログ時計。電池はいつ交換しているんだろう。そもそも電池なのか。 部活が終わったら会おうぜだなんて連絡が来たのは昨日、クリスマスイブのことだった。玲央先輩のことだから大学でもモテてしょうがないんじゃないかと思い連絡を控えていたのに、クリスマスを俺なんかと過ごして大丈夫なのか。聖なる夜に告白したい女性なんて山ほどいるはずだ。 2040 komaki_etcDOODLEタケルがドンペンさんを拾う話ドンペンさんと俺 ドラマの撮影が、うまくいかなかった。 俺が号泣するシーンを1カットで撮らなければならなかったのだが、うまく泣けず、泣けても「その泣き方じゃない」とリテイクを繰り返され、そのまま目が腫れ顔がむくみ、後日撮り直しとなってしまったのだった。 非常に悔しく思う。まだ感情の繊細なコントロールが苦手だ。ただ泣けばいいのではない。俺はもうその段階にはいない。 はあ、と溜息をこぼしながら、いや、溜息をこぼしているところなんて誰かに見られてはいけない、と姿勢を正した。俺はアイドルだ、いつだって輝いていないと。 しかしどうにも沈んだ気分は晴れず、まっすぐ帰る気にはなれなかった。少し、遠回りをして帰ろう。俺は錦糸町で電車を降りる。曇り空は重たく、今にも雨が降ってきそうだった。 3327 komaki_etcDOODLEキリ番リクエスト漣タケ♀ タケル女体化子作りセッセセ 2429 komaki_etcDOODLEコーギーを追いかける漣タケコーギー、あるいは食パン 目の前を食パンが歩いていた。 いや、違う。犬だ。コーギーと言ったか。短い足で一生懸命に歩いている姿がかわいらしい。 「なんか食パンみてー」 隣のアイツも同じ発想のようだ。見てると腹が減るな。赤いリードの先の、いわゆる「お母さん」みたいな人は歩くのがゆっくりめで、コーギーは先へ先へと走りたそうで、散歩を代わってやりたかった。俺ならいくらでも走らせられるから、あなたは休んでいてくれていい、と声をかけたいのを我慢し、隣のアイツのあくびを聞く。 「あー、腹減る」 「おい、聞こえるから」 歩くスピードは俺たちの方が早い。コーギーとお母さんを追い抜かす時、少し名残惜しかった。ずっとあの食パンを見ていたい。 その時、ブチッと、何かが切れる音がした。 899 komaki_etcDOODLE雨想。一人暮らしの雨彦さん柿 化粧水を、さっぱりタイプからしっとりタイプに変えてみた。秋から冬へ変わっていく今日この頃、乾燥対策をはじめなければならない。 「雨彦さんも使っていいからねー」 雨彦さんの家の洗面所には、勝手に僕のものが増えている。歯ブラシしかり、ヘアバンドしかり。僕が趣味で買ってくる入浴剤も溜まってきた。キンモクセイの香りの入浴剤がまだ残っている、僕に遠慮してあまり使っていないみたいだ。次のを買ってくるから、気にしなくていいのに。 「しっとりタイプの方が、やっぱり保湿力が違うんだろうな」 「そう思うよ―。べたべたするのが嫌で、普段はさっぱりタイプを使ってるんだけどねー。そろそろ冬だから」 「冬の訪れを北村の頬から味わえるってことだな」 1445 komaki_etcDOODLEリクエスト「小悪魔想楽くんと振り回される雨彦さん」やれやれ 一人暮らしをするようになって半年、いつのまにか我が家に北村の私物が増えた。 雑貨屋で見つけてきたものやら一人旅のおみやげやらで、リビングにはちまちまと雑貨が飾ってある。それに加え、彼の歯ブラシと寝巻き、数枚の下着も常備されるようになった。洗濯ものを干すとき、見慣れぬそれらに触れるのが少しこそばゆい。 だから――もちろんお互いのスケジュールの都合もあるが――北村はいつでも、我が家に泊まれるようになった。気軽に、今日泊めてよ、などと言ってくるようになった彼を、可愛らしく思ってしまうのだから仕方ない。俺のサイズに合ったベッドなら、男二人並んで寝ることは可能だ。 そんなわけで今夜も、北村はふらりと泊まりにきた。シャワーの音を聞きながら、さてどうしたもんかと考える。 1302 komaki_etcDOODLE巻緒と咲ちゃん指先から「どうしたの咲ちゃん、本とにらめっこなんかして」 「ロール!」 飲みかけのキャラメルラテのことも忘れて、ついつい目の前のことに熱中してしまった。今日はロールとお買い物をする日。カフェで待ち合わせて、あたしの方が早く着いたのだ。 「ごめんね、お待たせ」 「ううん、全然待ってないよ。手話の本読んでたんだ」 「手話?」 ロールは少しびっくりした顔をして、私の手元を覗き込んだ。表紙には両手のイラストが、たぶん「手話」という意味の形で描かれている。 「こないだの握手会で、耳の聞こえない人が、手話してくれたんだ。それを調べてたの」 「なんて言ってたかわかった?」 コートを脱いだロールはカフェオレを注文して、あたしの向かいに座る。テーブルの上のお砂糖の壺がかわいい。 922 komaki_etcDOODLE雨想、同棲。雑誌の表紙おめでとう乾杯 基本は節約メニューの我が家でも、「もういいや!」となることはある。 僕が表紙を飾る雑誌の発売日ともなれば、雨彦さんは「お祝いしよう」としきりに言って聞かない。これからそんなのいくらでも出るんだから、毎度毎度祝ってたらキリないでしょー、と言っても、「祝いたいんだ」と微笑まれちゃ、それ以上は口を噤むことしか出来なかった。 「で、お寿司ってわけー?」 「出前じゃなくてスーパーのパックで我慢したんだ、節約だろ?」 「そりゃまあ、そうですけどー」 雨彦さんはお寿司に醤油をかけながら、ほら、好きなのをとりな、と僕を急かす。二人で揃えた食器、箸、コップ。おなかがぐうと鳴ったので、仕方なく、という風を装ってサーモンをとった。雨彦さんはイクラに手を伸ばす。 1372 komaki_etcDOODLEリクエスト 片想いを拗らせてる漣タケまさかそんな 近頃、チビがウゼぇ。 見ていると以前よりイライラする。オレ様以外の誰かと喋っていると特に。オレ様には見せない表情で、オレ様には聞かせない声で接しているのを見ると、どうにも心臓がムカムカする。 「なあ。オレ様以外と喋んな」 ある日、チビと二人きりになったタイミングで、それをぶつけた。何と表現したらいいのかわからず、ただそうとしか言えなかった。 チビはきょとんとしたあとムスッとして、俺からプイと顔を背ける。 「無理に決まってるだろ。仕事の話だってあるし、俺が誰と仲良くしようと俺の勝手だ」 尤もだ。尤もではあることは、理解する。でもそれとこれとは別なのだ。ムカムカする。イライラする。 「オレ様だって他のヤツと話してやっからな」 1888 komaki_etcDOODLEリクエスト ライブ会場のトラブルに巻き込まれるタケル♀を助ける漣光のうず(女体化) THE 虎牙道のミニライブは、つつがなく進行していた。ユニット曲をいくつか披露し、トークを挟んで、今は円城寺さんのソロ曲だ。観客たちは泣いたり笑ったりしながら、私たちを見守っている。ペンライトの色とりどりが、私たちの勇気に繋がる。それに応えねばと武者震いをして、裏でアイツと目くばせをした。 円城寺さんのソロと、私のソロと、アイツのソロを、ひと繋ぎにする演出だ。じゃあ、行ってくる、しくんなよ、とアイツに頷いて、アイツが目で返事をしたのを見届けてから、私はステージへ駆け出した。円城寺さんのハケるタイミングに合わせるために。 ポジションゼロで拳をあわせ、円城寺さんがハケて、マイク前に立った時。 バッと、視界が真っ暗になった。 1414 komaki_etcDOODLEリクエスト 待ち合わせに遅れる漣タケまちあわせ 朝のロードワーク中に、それは訪れる。何度事務所で見た光景か、靴紐が切れたのだ。俺は無様にもバランスを崩し、顔面から転ぶ。 「いっつ……」 顔を拭うと、微かに血がついていた。ああ、アイドルなのに顔に傷をつけちまった。これは早く手当しなければ。急いで家に帰ろうとするも、膝もすりむいており、じんじんと痛みを孕んでいて、歩くのがやっとだった。 やっちまったな、と呟きながら、ゆっくりゆっくり家に帰った。よれよれになりながら帰宅し、シャワーを浴びて砂と血を落とし、消毒をする。酷く沁みるのは罰のように感じた。絆創膏をひざと鼻に貼った。鼻のあたまに絆創膏を貼るのは久しぶりだ。 「あ、やべ」 今日はアイツと待ち合わせをしているんだった。とはいえどこかにメシを食いに行こうというだけで、予約をするようなデートではない。ただ時間と場所を決めて、一緒に歩いていこうという、それだけだった。 1076 komaki_etcDOODLE漣タケ厚底 普段と、ぐっと視界が変わった。 足を上げようとすると少し重くて、段差に気をつけねば転んでしまいそうだ。俺は嬉しくて、辺りをキョロキョロ見渡した。 「これが今日の衣装です」 スタイリストさんが運んできた衣装は、クールカジュアルといったところか、ダメージ加工のされたTシャツとズボンで、黒いスニーカーの厚底がずいぶんと高かった。 「みんなの身長差はそんなに変わらないけど、ワイドパンツだから靴の先まで一体化してる感じで、脚が長く見えますよ」 なるほど、鏡の前に立つと、いつもより脚が長い。単純に身長が伸びたと言うより、スタイルが良く見えるんだ。俺はワクワクしてその辺を歩き回った。いつもより低いドアノブ、机、床との距離。 1269 komaki_etcDOODLE鋭百デート秋を運ぶ人 机の上に飾っていた花が萎れてきた。うまいこといけばドライフラワーになるかなと思っていたけれど、花にその元気はなさそうだった。僕はバラだったものを指先でつまんで、そのままゴミ箱に放った。美しいままでいられたらよかったのだけど。花瓶を片付けながら、命をひとつ見殺しにしている気分になって、新しい花が欲しくなった。 えーしんくんと映画を見に行く約束をしていた。しゅーくんは生徒会の仕事があって来られない(二人っきりじゃん。楽しんでよと言われた)ので、誰が何と言おうと、これはデートなのだ。だけど、気負う必要はない。えーしんくんに負担に思われたくない、ぼくのふわふわしたあいまいな感情なんて。ただ一緒に、映画を見るだけ。 1859 komaki_etcDOODLE漣タケ数年後ドライブウミネコ 旅行に行けるようになったら、俺たちの世界も広がるんじゃないか。そのために、まずは免許をとろうと思った。 網膜剥離の影響で、片目の視力が少し不安だった。免許をとるには問題ないレベルだが、安心して運転できるようにと、新しく眼鏡も作った。黒いセルの、ボストンタイプ。苦手な座学もこなさないといけないのは想定外で、俺は何度となく教官の目の前でうつらうつらした。 「で、ここドコなんだよ」 「文句があるなら地図を見てくれ」 さっきから同じところをぐるぐるしている気がする(一本道だからそんなことはないはずなのに)。円城寺さんを何度か乗せて練習した助手席に、満を持してアイツを乗せたものの、行きたいところはあるかと聞いたら「うまいもん食えるとこ」の一点張り。俺自身も観光地に詳しくなんかないから、とりあえず海を目指すこととなった。漁港とかの近くなら、うまい店があると信じて。 2386 komaki_etcDOODLE漣タケ女体化百合、生理満ち引き 腹の鈍痛は、軽い方だ。何故言い切れるかと言うと、今までそれで寝込んだり倒れたりしたことがないからだ。 木の上で日向を堪能している時、股間に違和感を覚える。あ、きたな、と察する。毎月毎月、やっかいなものだ。染みを作るのは恥ずかしいことだと、最初に教わったのは誰からだったか。木から降りて、薬局を目指す。本当は食い物でもないものに出費をしたくない。でもこれがないと生活が出来ない。 十月の秋風は、素肌に心地よかった。朝晩が冷え込むようになってきた。雨だったり晴れだったり忙しい空の上で、女性に苦しみを与えている存在がいるとすれば、いずれぶっとばしてやる、と思う。今に見てろよ、というこの思いも、どうやら生理のせいらしいというのも、最近知った。 2093 komaki_etcDOODLE漣タケリハビリドン 今年の夏は蚊がいなかった気がする。あまりの暑さに繁殖しなかったのではないか。 グラビア撮影をする時、虫刺されの跡をいつもコンシーラーで消されるのに、最近その時間をとられない。もしかしたら涼しくなってから出てくるかもしれない。それも思いっきりしぶといのが。 そんなことを思いながら仕事をこなし、無事に終えて帰路に着いた。今朝は早かったからロードワークに行けなかった。代わりに一駅歩いて帰ろうか。手前の駅で電車を降りた。改札でICカードがピピッと鳴り、残金が七百円であることを告げる。チャージして、経費精算しないと。苦手なんだよな、経費精算。 大型のスーパーマーケットを何となく一周し、めぼしい新商品もなかったので何も買わずに出てきた。近くの公園の自販機で飲み物を買おう。空は高く、秋風が心地よい。真夏の間はこのまま地球が滅亡するんじゃないかとすら思っていたのに、なんという過ごしやすさか。家族連れとすれ違いながら、ポケットの中の財布を撫でた。 1835 komaki_etcDOODLE漣タケ濡れていく人々 帰路、雨に降られた。はじめは気のせいかと思う雫のひとつふたつ、そのうちぱらぱらと存在感が大きくなり、やがて道行く人々がみな早歩きになっていく。折り畳み傘がある者はカバンを漁っていた。あいにくと俺は持っていない。 コンビニに寄って傘を買うには、家が近すぎる。早歩きになるほかなかった。リストバンドで瞼をぬぐいながら濡れていく道を急いでいると、見慣れた赤が家の前に突っ立っているのが見えた。 「来てたのか」 「雨」 「わかってる」 アイツはいつも手ぶらでやってくる。寝るためだとかメシにありつきたいからとか、時にはなんの理由もなく。今日はさしずめ雨宿りか。鍵を開けドアを開けるなり、アイツはするりと部屋に身体を滑り込ませた。 1719 komaki_etcDOODLE漣タケクーリッシュ 牛乳を飲み切ったので、コンビニに買いに行こうと外に出たら、なんとアイツが玄関前に立っていた。 「んだよチビ、出かけんのかよ」 「ああ、牛乳を買いに……いやそれはどうでもいい、来るなら前もって言えって言ってるだろ」 アイツは家に上がり込んでぬけぬけと留守番をするかと思いきや、俺と一緒にコンビニに連れ立った。小腹が空いたとのことだった。 俺は風呂上りのまま、髪も乾かさずに外に出てしまったので、秋めいてきた風が頭に冷たかった。季節の変わり目は服装に悩む。薄手の上着をそろそろひっぱりださないといけない。 コンビニは煌々と明るかった。外の道に沿って、電灯の向きを工夫してあると聞いたことがある。人は明るいものに寄っていくのだそうだ。俺たちは虫と同じか。 1181 komaki_etcDOODLE漣タケ、冬の話しんしん たまに、夜中にふと目覚めることがある。それは夢と夢の狭間だったり、尿意だったりまちまちだけれど、今日はぱちりと覚醒した。 隣に寝ているはずのアイツの気配が感じられなくて横を見やると、アイツは窓辺に立っていた。ああ目覚めたのは外の明かりが眩しかったのかと思ってから、カーテンの隙間から漏れる光がやけに明るいことに気付く。アイツは静かにカーテンの向こうを見つめている。 「どうした」 「起きたのか」 「何かあるのか……雪?」 アイツの隣に立ってカーテンを開けると、窓の外にはちらちらと雪が舞っていた。どうりで寒いわけだ。布団の中にあった温もりと、肌で感じる冷気の差にくしゃみをすると、アイツはフッと鼻で笑った。 1490 komaki_etcDOODLE漣タケ♀。女体化生理痛イブプロフェン 久しぶりに鈍痛と憂鬱が降ってきた。 PMSも生理痛も、そんなに重い方ではないのに。ごくたまにこういうことがおきるから、女の身体って不便だ。 「チビ、なに丸くなってんだよ」 ミーティングの予定時刻より早く事務所に来たものの、痛みで動けずにソファに沈みこんでいた。アイツに弱っているところを見せることなどないから、どうやら動揺しているようだ。ざまあねえな、とか、情けねえな、とか言われるくらいはすると思ったのに。 どろり、と股間に嫌な感触が広がる。ソファに染みてないか不安になったが、俺はクッションに顔を押し付けたまま微動だに出来なかった。吐く息が熱い。その熱さに泣きそうになる。生きるということの重みがのしかかる。 2300 komaki_etcDOODLE雨想、雨彦視点オレンジ 金木犀の香りがするという紅茶を頼んでみた。いつもならブレンドコーヒー一択なのだが、北村が季節に合わせて注文を変えるのを見て、なんだか真似してみたくなったのだ。 オレンジの輪切りの乗った茶色の液体を窓際のカウンター席に置き、傘を椅子の背もたれにかける。グリップの部分が木で出来た、大ぶりの黒い傘。その辺に売っているビニール傘を使っていたら、北村に「こういう小物にも愛着を持つの、楽しいよー」と教えてもらい、興味半分で買ったものだ。なるほどたしかに、こんな秋雨の日にはよく似合う、と我ながら感じる。 北村とは十一も違うのに、様々なことを教えられてばかりだ。彼が生きる若々しい人生の一瞬一瞬の、なんと鮮烈なことか。進むがままに身を任せてきた俺の人生とは大きく違う――彼から見た俺もまた、大人の人生を歩む眩い未来に見えていたならいいのだが。 2120 komaki_etcDOODLE輝夢。フォロワー誕プレわたあめ ただいま、の声に、私はキッチンでほくそ笑んだ。我ながら幼稚かもしれないけれど、この手の中にあるものの方がよっぽど幼稚だから別にいいのだ。 「おかえり、ね、見てみて」 「ん?」 はやく、と急かすと、なんだなんだと笑いながら彼は靴を脱いだ。疲れて帰ってきてるだろうに、愉快そうに私に付き合ってくれる。私は彼がリビングに来るまでこの場を動かない。わざわざ出迎えてカバンを受け取る甲斐甲斐しさでもあれば可愛らしいのだろうけど、そんなの私たちには似合わない。廊下を覗き込みながら、私はまた彼を急かした。はやくはやく。 「何だっつうんだよ」 リビングに入ってきた輝に、私は背中に隠していたソレを突き出した。 「じゃじゃーん」 1475 komaki_etcDOODLE漣タケリクエスト「ある日、〇〇が神になった」カミサマ ある日、漣が神になった。 神なんて、信じてこなかったもんだから、彼が何を言っているのかわからない。 手の中のスズメを生き返らせたからと言って、全知全能になったとは限らないのに。 「……神、って、何するんだ」 「……イノチに、さわれる」 スズメは軽やかに、彼の手の中から飛び立った。公園の隅で潰れていたそれをひょいと彼が拾い上げた時に、俺は咄嗟に「菌がたくさんいるかもしれないぞ」と言ってしまったのだが、そんなことはとても些末であるように感じた。 「リンネテンセーって信じるかよ、チビ」 アイツは黄金色の目をぎょろりとこちらに向け、俺はその視線から動けなくなった。輪廻転生についてなんて、今まで考えたこともない。 2375 komaki_etcDOODLEibsm 905 komaki_etcDOODLE雨想、ネイルバイオレット 本当にただ、なんとなくだけれど。爪を紫色に塗った。 仕事からの帰り道でドラッグストアに寄った時、爪のケア用品を見ていたんだった。やすりを手に取った瞬間、ちらりと視界の中に入ってきたネイルポリッシュたちのなかに、その紫色はぽつんといた。 明日が一日オフだから塗ったにすぎない。一日も経たずに落としてしまう。自分でも何でこんなことをしているのかはわからないけれど、なんとなく、駅前に花屋ができたせいだろうな、とは思っている。 ひまわりが高々と咲いていた。夏の風物詩、と黒板を用いた看板に絵が描かれていた。駅前の花屋でひまわりを買う人生。楽し気ではないか。なんとなく、それに対抗したくなったのだ。 ネイルポリッシュの名前はなんたらバイオレットというものだった。バイオレット、すみれ。すみれって確か、先天的に香りを感じられない人がいたはずだ。 721 komaki_etcDOODLE漣タケにょたセ 4073 komaki_etcDOODLE雨想同棲ヨーグルト 寝ぐせがとれない夢を見た。 それは梳かしても梳かしてもなおらない、針金みたいなかたちだった。根元に水をつけても、ドライヤーをしても、髪の根元は爆発していた。はやく、はやくしなければ、学校に遅れてしまう。でもこんな髪型のまま学校になんていけない。 心臓が早鐘をうつ感覚で起きた。夢から覚めると、ああ今のは夢だったのだ、と気付くまでに数秒かかる。僕は眼前に広がる雨彦さんの背中に、鼻をこすりつけた。 「起きたかい」 「あ、ごめん、起こしちゃったー?」 「そうだな、もうひと眠り」 雨彦さんは寝返りをうって、僕を抱きしめ直す。今度は胸に鼻をこすりつけた。雨彦さんの匂い。朝のベッドの中では、鬢付け油の匂いはしない。 2030 komaki_etcDOODLEレッカイ自家受粉 問題は山積みだった。まずはなにより、シャワーを浴びた方が良いと判断した。 要は、とカイは考える。要は、酔っぱらっていたのだ。日頃の疲れをバーで癒していたにすぎない。そこはこぢんまりとしたバーで、半地下にあって、すこし籠った香りがする。いつもは古いウイスキーを頼むのだが、昨日はビールで喉をうるおしていた。 常連客は自分の他おらず、なかば眠気にすら襲われていた時、レッカはやってきた。まるでここにカイがいることを知っているかのように、当たり前に隣の席に座り、同じモンを、と頼んだ。レッカがビールを飲めるだなんて意外だった。その前に、どうしてここに来たのかを問うた方がいいことに気付く。酔った頭はなかなかうまくまわらない。 2557 komaki_etcDOODLEかみしのリクエスト飴玉「男の人って、どうしてああ独善的なもの言いをするんでしょう」 何故そんなことをここで言うのか、全くわからなかった。俺としたことが言葉に詰まってしまったが、咄嗟に「俺たちは優しくするよ」とウインク出来たことを褒めて欲しい。相手の女性は赤面して黙ってしまった。握手会という場面でそんなことを言われたのは、生まれて初めてのことだった。 「それは災難でしたね」 アスランがいないから昼食は簡単に済まそう、と言うと、じゃあそうめんがいいです、と言われた。スーパーで麺と薬味と、ついでに麦茶を買ってきた。東雲がメニューに希望を出すなんてめずらしい。しかもそうめん。夏らしい。 「なんで握手会でわざわざそんなこと言ったんだろう」 1830 komaki_etcDOODLEリクエストじろるい炎 隣がどったんばったんうるさい。いわずもがな、るいの部屋だ。ゴキブリでも出たのだろうか。それなら俺の部屋もあぶない。ブラックキャップ、どこにやったっけ。そんなことを考えながら二度寝を楽しんでいると、案の定、ガンガンガンと扉を叩かれた。るいは何故かドアチャイムを押さない。 「グンモーニン、ミスターやました!」 「もー、何事よ」 「ねえ、キャンプファイヤーしたい」 「……はあ?」 俺はひとまず、るいを部屋に招き入れた。ご近所に迷惑をかけるわけにはいかない、と言いつつ、こうやって甘やかしてしまう。 冷蔵庫から麦茶を出して――るいの家には冷蔵庫がない――、コップに注いでやる。氷はまあいいでしょ。冷房の温度を来客用に一度だけ下げて、俺は改めてるいに向き直った。 2196 komaki_etcDOODLEレッカイbeautiful morning 思ったより華奢な手首をしている、と思った。 怠い腰を無理やり押し上げるように起きて、なんだまだ六時かと、と外の明るさに驚いた。昨日は八時くらいに帰ってきたはずなのに、微塵も持ち帰りの仕事が終わっていない。閉まりきっていなかったカーテンを思いっきり左右に開き日光を招き入れると、うう、とベッドから間抜けな声が聞こえた。 レッカは涎を垂らして寝ていた。呑気なもんだ。隣に誰かがいる状態で寝るだなんて、昔の俺たちには考えられなかったのに、いつのまにこうなったやら。寝室から引きあげて、俺は朝のコーヒーを淹れる。 コーヒーが飲めるようになったのも、ここ数年だった気がする。こんな泥水誰が好むんだと初めて飲んだ時は驚いたし、レッカも全く同じことを言っていたっけ。そうだ、アイツと組みだした頃だ。エンドーさんに一緒にコーヒーをご馳走になって、揃って苦い顔をしたんだ。 2048 komaki_etcDOODLEれおたい海の名 大学生になった最初の夏休み、さて何をするかと思っていたところに、玲央先輩から「海行こうぜ、海」と誘われた。海なんて久しく行ってない、夏は毎年バスケの強化合宿があった程度で、レジャーというものにすっかり縁遠くなっている。 「つか今から行こうぜ」 「い、今から!? 水着とか何もないっすけど」 「いーだろべつに。すぐ乾くし」 そういう問題じゃ……と思ったけれど、先輩は立ち上がって「それじゃあ行くぞ」と準備し始めてしまったから、俺は慌てて日焼け止めを探す。昔は美容用品だと思って敬遠していたけれど、今はもう塗らないと火傷レベルで焼けてしまう。近頃の太陽は異常だ。 鎌倉くらいならすぐ行けるだろう、と湘南新宿ラインに飛び乗った。先輩、また少し背が伸びた気がする。俺も追いつきたいとは思うが、彼を越す未来はなかなか想像できなかった。 1676 komaki_etcDOODLE漣タケ、真夏8月2日 そういえば、久しく入道雲を見ていない。 昨日、四季さんと隼人さんが、「消えた日本語」という話題で盛り上がっていた。曰く、「午前中の涼しいうちに」と「夕立ち」という言葉らしかった。どちらも夏の季語だろうに、今の異常気象じゃ、言葉も溶けて消えていくのか。 「あちぃ」 「言ってると余計暑くなるぞ」 蝉がジージー鳴いているなか、俺の住むワンルームは外気と冷気の狭間で揺らいでいた。いつもより低い温度にしているのに、じっとりと汗をかいてしまうのは何故だろう。陽炎で窓の外がうねって見える。フライパンを出したら、何もせずに目玉焼きが焼けてしまうんじゃないかと思った。味付けは塩コショウでいいかな、なんてことを考えながら、俺は読んでいた台本をぱたりと閉じた。今日は集中力が続かない。アイツの方に目線を投げると、がつがつとハンバーガーに食らいついていた。 1966 komaki_etcDOODLE気まぐれ1d1wお題「舞田類」チアーズ! 大きく伸びをして、そのままひっくり返ってしまった。布団にどすんと頭がぶつかる。 今日こそはポケモンを進めようと思っていたのに、集中力が切れてしまった。ジムリーダーって手ごわい。手持ちのポケモンをもっと育てないと。でももう、今日はここまででいいや。セーブをして、そのままゲーム機を布団に放り投げる。どすん。 誰かの声が聞きたい気分だった。北斗は今日、デートだと言っていた気がする。エンジェルちゃんに申し訳ないから電話をかけるのはやめておこう。隣の部屋のミスターやましたはラジオ収録だ。空っぽの部屋に行ったって意味はない。ゲストにミスターくずのはが来るとか言ってたかな。あの二人の話は聞いていて飽きないから、視聴者の反応もきっといいだろう。お便りでも送ってみようかな? プロデューサーちゃんに怒られるだろうか。 3103 komaki_etcDOODLEレイタツ/リクエスト:土砂降りの中笑う推しカプShall we dance? 梅雨はカラカラだったくせに、どうして最近、こうも雨が続くかな。店の中にいると爆音のBGMに耳がやられて、雷雨の音までわからない。 深夜二時すぎ、俺とレイジは揃って店を出た。ミツルさんはアフターに出ていたのと、酔いつぶれていた新人たちは黒服に介抱されていたので、何も気にせず退勤できたのが俺たちだけだったのだ。歌舞伎町の地面はしっとりと濡れており、ネオンが反射していた。 「げえ、すげー降ってんじゃねーか」 「なんで傘もってないんすか」 俺の傘に無理やり入ってきたレイジは、「オレの方が背が高いから」という理由をつけて俺から傘を奪った。傘にお互いが入りきるように肩を組まれたけれど、大人二人じゃだいぶはみ出るぞ。この季節の雨はじっとりとしていて、呼吸が籠る。ただでさえ酒臭いのに。 1338 12345