Recent Search

    komaki_etc

    波箱
    https://wavebox.me/wave/at23fs1i3k1q0dfa/
    北村Pの漣タケ狂い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 145

    komaki_etc

    DOODLE舞握
    ハートマーク 俺の家には冷蔵庫がないから、夏に遊びに行くのは嫌だ、と言われた。だから俺たちはいつもカフェで待ち合わせをする。
     カフェオレとカフェラテの違いがよくわからないなんて話をどちらかがして、どちらかが解説するのを、なんど繰り返しただろう。メニューを見ながら思いつく話は限られてて、でもラテアートのサンプル写真はどの店でも違ってて、やっぱりこれにしようって二人して選んで。異なるハート柄が運ばれてきて、小さく乾杯した。
    「冷蔵庫、買わないのか?」
    「んー、ミスターやましたんち行けばいいし……」
    「それで事足りるんだもんなあ……」
     ははは、と笑いながら口元に泡の髭をつくるミスターあくのは、店内をくるりと見渡して「いい店だな」と呟いた。仄暗いオレンジ色で照らされた隠れ家的な室内はシックなジャズがかかっていて、きらきらとした音色に観葉植物が泳いでいる。カウンター内にはアンティークのカップや皿が一面に飾られていて、曳きたてのコーヒーの香りが広がっていた。うん、いい店だね、と頷いて、俺は自分の部屋のことを思い出す。毎日蒸し暑いから洗濯が億劫で、ミスターやましたのとこにつっこんできたけど、大丈夫かな。またあとでなんか言われるかな。
    1608

    komaki_etc

    DOODLE天使の漣
    天使 平日の十四時のカフェなんて、人気のないものだ。タケルとの待ち合わせまで、時間つぶしに入っただけの漣にとって、それは都合のいいことだった。どこかの日陰でやり過ごすには暑すぎる日だった。
     心地いい雑音と、ゆったり氷の融けていくアイスティー。机の上に溜まっていく水滴を尻目に、背中の違和感が増す。漣は何度も姿勢を変えながら、じんわりと広がる痛みに眉根を顰めた。普段ならしまっているはずの羽が、窮屈そうに頭を出す。
     自身が天使であることは、タケルには隠していなかった。満月の夜にしか姿は変わらないし、日常生活に支障はない。ただ、こうして時々、背中が痛むのだ。早く人間の殻から解放されたいというように。
     人間でありつづけることを選んだのは漣自身だった。天使の母親と人間の父親の間に生まれ、父と共に暮らすことになったその時に、その運命は決められた。強い存在であることを望まれながら、人知の及ばない力が身体を襲う時、自分の存在意義がわからなくなる。漣にとって、満月とは煩わしいものだった。一種の呪いに、血を恨む。顔も知らない母親は、どうして父となど交わったのだろう。堕天する気もなかったくせに。
    1437