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    ネギとキメラ

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    ネギとキメラ

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    #kmt夢ワンドロワンライ
    【アイドルとファンの恋】
    🔥×🚺
    現パロ/社会人/付き合ってる/キメラ作
    「推しとは」

    主催者様、いつもありがとうございます。

    推しとは「その日は……えっと、友人に誘われてアイドルのコンサートに行くんです」
     受話口の向こう側の煉獄さんが、小さく息を飲んだ気がした。なぜか実家で飼っている犬の、直前まで散歩に行く準備をしていたのに雨が降り出して中止になった時の落胆の表情が浮かんで、申し訳なさから謝罪の言葉を続ける。
     お互い企業に属し、朝から晩まで働く身。弊社の「取引先」という関係性から「恋人」という進化を経たとはいえ、日々忙しく過ごす中で煉獄さんと私の予定が合うのは、基本的に休日一択となっていた。しかし、営業として日本全国を飛び回る煉󠄁獄さんにとって仕事や打ち合わせの予定によっては、休日を移動にあてるため、実際のところ休日はあるようでないに等しい。
     今はだいぶ減ったというが、最低でも月に2回は出張で地方へ行くので、会うことができる日が限られるのは必然でもあった。なので、平日は寝る前の三十分ほど通話することが常である。それも、お互いの生活や仕事への影響を鑑み週に二回程度。声を聞けるだけで私としてはすごく幸せなのだが、やっぱり一分一秒でも長く煉󠄁獄さんと直接顔を合わせて声が聞きたいのは、惚れた弱みというものだろう。
     そんな私にとって、煉󠄁獄さんと休日が重なることは一緒に過ごすことができるチャンスであるのだ。だというのに――。
    「いや、いいんだ。君が、その……コンサートに行くのが意外だと、思って」
    「地元の友人が追いかけてるアイドルのコンサートのために上京するんです。久しぶりに会うついでに、友人にコンサートに誘われてしまって――」
    「それはいいことだな。楽しんでおいで」
    「せっかく誘ってくださったのにすみません。友人の布教の力強さに負けてしまいました。友人がせっかく手に入れてくれたチケットで席に穴を開けたくないので、全力で楽しんできます」
    「ふふふ、それが一番だ。でも、羽目を外しすぎないようにな」
     もう、と唇を尖らせれば、私の仕草を知ってか知らずか煉󠄁獄さんの柔らかな笑い声が耳に届く。
     ああ、コンサートも楽しみだけど、煉󠄁獄さんと会いたかった。電話じゃなくて、直接煉󠄁獄さんの声を聞きたい――そんなことを考えていれば、急に静かになった私を不思議に思った煉󠄁獄さんの、問いかける声はひどくやさしい。
    「そういえば、煉󠄁獄さんは、好きなアイドルとか女優さんとか――いわゆる『推し』はいらっしゃいますか?」
    「……すまない、『推し』とはなんなのだろうか?」
     お気に入りのアイドルやキャラクターなど、自分にとって「特別な存在」を一般的に「推し」というらしい。対象はアイドルや俳優をはじめとする実在の人物のほかに、アニメ、漫画、ゲームなどの2次元のキャラクター。それ以外にも動物や食べ物、乗り物、建物などが「推し」の対象となりうる。
     煉󠄁獄さんに「推し」について説明をしながら、私は頭の中である答えに行き着いた。
    「私からしたら、煉󠄁獄さんは『推し』ですね」
    「俺が? 君の『推し』?」
    「でも、煉󠄁獄さんは御社の皆さんからも他の取引先さんからも愛されてそうだから、煉󠄁獄さん『推し』の方がたくさんいそうですね」
    「……そういうものなのか?」
    「そういうものですよ」
     そもそも、バレンタインでアイドルも真っ青になるほどチョコレートをもらう煉󠄁獄さんだ。きっと本人の預かり知らぬところで「煉󠄁獄さんファンクラブ」が存在している可能性が――いや、絶対にある。
     そして、私が煉󠄁獄さんの勤めるキメツ商事の社員だったら、間違いなくファンクラブに入会するだろう。
     たとえば総務部や経理部あたりに配属されたとしよう。煉󠄁獄さんになら書類の提出期限などこっそり融通を利かしてしまうかもしれない。いや、そもそも煉󠄁獄さんはきちんと規則も締め切りも守りそうだからその心配はないか。でも、煉󠄁獄さんとエレベーターで乗り合わせた日は一日仕事頑張れそう。想像を膨らませる私をよそに、受話口から「ふむ」と一言、私の耳に届く。
    「それで言ったら、俺の『推し』は君ということになる」
    「ひえっ?」
    「俺にとって特別な存在を『推し』と言うのだろう? じゃあ、君しかいない」
     煉󠄁獄さんの言葉が鼓膜を揺らして、頭の奥から体全体を燃やしていくようだ。言葉の意味を上手く飲み込めなくて母音しか紡ぐことができない。心臓が慌ただしく脈打って息の仕方がわからない。時間が止まっている気さえする。こんな、こんな――。
    「……煉󠄁獄さんは、もっと『推し』としての自覚を持った方がいいです」
    「ふふふ、それはお互い様じゃないか?」
     いたく柔らかな声で「コンサート、楽しんでおいで」と続けられて、少しだけ思考が現実に戻ってきた気がする。そうだ、埋め合わせを――と己の予定を確認するために、鞄の中にしまわれた手帳を取ろうと腕を伸ばした瞬間。
    「心が狭いと思われてもしょうがないのだが、その、あまり俺以外の男性を目に映し過ぎないでくれ」
     前言撤回。鼓膜をあまく震わせた音の意味を理解するよりも早く、言葉にならない悲鳴を上げながら天を仰ぐ。煉獄さんがアイドルだったら本気で恋に落ちるファンの女の子数知れず――そんなことをぼんやりと思いながら「推し」からの言葉の破壊力に、心の中で左右の手のひらを合わせるのだった。
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    ネギとキメラ

    DONE #kmt夢ワンドロワンライ
    【初恋】【リボン】
    🔥×🚺
    👹学/🔥先.生と社.会人🚺/キメラ作/90分
    「初恋の人はいい香りがした」

    女生徒→🔥✕🚺です。
    生.徒の初.恋泥.棒な🔥先.生に夢を見ています。
    遅ればせながら参加となりますが、主催者様、いつもありがとうございます。
    初恋の人はいい香りがした 学園の最寄り駅から電車で四十分ほどのところにある国立公園が、新入生が交流を深めるべく設けられた校外学習の場だった。
     まだ四月の下旬だというのに、照りつける日差しはどこか夏の鋭さをはらんでいて、最高気温は三十度を超えるらしい。
     私立キメツ学園の制服のリボンを初めて結んだ日は、冷たい風が吹いて肩を竦めるほどだったというのに――公園で一番大きな広場で整列させられている間も、先生の説明なんかまったく耳に入ってきやしない。じりじりと焼け付くような日差しと、首の後ろを伝う汗の不快感から逃げ惑うように顔を伏せた。
     視界が揺れている気がするのは慣れない暑さのせいだろうか。すぐに自由時間に入ってよかった、と胸をなでおろしながら近場の大木の木陰に入り、膝を抱えて座り込む。くっつけた膝と膝の間に額を預けて、息を吸ってみる。だからと言って肺が大きく膨らむことも、ぼんやりとした思考が鮮明になるわけでもない。胸がつかえるような気分の悪さも相まって、体をさらに小さくして抱え込んだ。
    3023

    ネギとキメラ

    DONE #kmt夢ワンドロワンライ
    【エアコン】【この指止まれ】
    🍃×🚺
    現パ.ロ/社.会人/付.き合って.ない/キメラ作

    「隣に住んでる🍃さん」をテーマに、お隣さん同士という前提でふんわり読んでいただけると幸いです。
    エアコンが壊れた夏の日 酷暑のさらに上の暑さを表す言葉は何になるのだろう――部屋に吹き込む風を一言で表すならばまさに熱風。夜になっても気温は下がることなく、少しでも涼を求めて風呂場で頭の上から水を浴びたものの、瞬く間に肌は汗ばみ、髪も毛先から乾きはじめていた。
     小さく舌打ちをしながら、吐き出し窓のさらに上を睨みつける。いつもなら上下二枚並ぶフラップが開き、冷たい風を送り込んでいるというのに――今はうんともすんとも言わないエアコンに、本日何度目かわからない溜息が漏れた。

     都内の片隅にある築三十五年の古アパート。建物内の階段を中心とし左右に二つずつ設置された部屋は、どの部屋も角部屋になるように、という大家の配慮らしい。
     壁も薄く、設備も古くはあるがしっかりと手入れが行き届いている。しかも駅から徒歩十分かからない。都心にも出やすい立地で破格の家賃。住人の質もよく、面倒な近所付き合いなどは一切ない。
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    生.徒の初.恋泥.棒な🔥先.生に夢を見ています。
    遅ればせながら参加となりますが、主催者様、いつもありがとうございます。
    初恋の人はいい香りがした 学園の最寄り駅から電車で四十分ほどのところにある国立公園が、新入生が交流を深めるべく設けられた校外学習の場だった。
     まだ四月の下旬だというのに、照りつける日差しはどこか夏の鋭さをはらんでいて、最高気温は三十度を超えるらしい。
     私立キメツ学園の制服のリボンを初めて結んだ日は、冷たい風が吹いて肩を竦めるほどだったというのに――公園で一番大きな広場で整列させられている間も、先生の説明なんかまったく耳に入ってきやしない。じりじりと焼け付くような日差しと、首の後ろを伝う汗の不快感から逃げ惑うように顔を伏せた。
     視界が揺れている気がするのは慣れない暑さのせいだろうか。すぐに自由時間に入ってよかった、と胸をなでおろしながら近場の大木の木陰に入り、膝を抱えて座り込む。くっつけた膝と膝の間に額を預けて、息を吸ってみる。だからと言って肺が大きく膨らむことも、ぼんやりとした思考が鮮明になるわけでもない。胸がつかえるような気分の悪さも相まって、体をさらに小さくして抱え込んだ。
    3023

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     小さく舌打ちをしながら、吐き出し窓のさらに上を睨みつける。いつもなら上下二枚並ぶフラップが開き、冷たい風を送り込んでいるというのに――今はうんともすんとも言わないエアコンに、本日何度目かわからない溜息が漏れた。

     都内の片隅にある築三十五年の古アパート。建物内の階段を中心とし左右に二つずつ設置された部屋は、どの部屋も角部屋になるように、という大家の配慮らしい。
     壁も薄く、設備も古くはあるがしっかりと手入れが行き届いている。しかも駅から徒歩十分かからない。都心にも出やすい立地で破格の家賃。住人の質もよく、面倒な近所付き合いなどは一切ない。
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