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    xxsakanaxx_hq

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    xxsakanaxx_hq

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    なんちゃって昭和レトロの治角名。ハッピーではない。

    狐の嫁入り大正の終わりから昭和初期頃の設定。
    兵庫は稲荷崎の豪商・宮家の侑と治は、学生の傍ら父親の仕事を手伝いながら家業を学ぶ日々を送っていた。ある日、神戸に着港した貿易船の荷受けを見学に行った時、治は外国人と連れ立って歩く洋装の少年を見かける。すらりと背が高く、不思議な色香を纏わせる彼が気になったが、向こうはちらりと一瞥を寄越しただけでさっさとどこかへ行ってしまった。
    その日の夜、侑や父の部下たちと神戸の繁華街を飲み歩いて上機嫌だった治は、用を足そうと踏み行った路地裏で昼間の少年と再会する。なにか揉めているらしく、男に殴られて頬を腫らした彼を見て義憤に駆られた治は、咄嗟に割って入って少年を助けた。角名と名乗った少年は「あんた、昼間港にいた人だね」と治に笑いかける。「お礼させてよ」そう言った角名に絆されてついて行った治は、その日のうちに角名と関係を持ってしまった。
    角名は神戸を根城に稼いでいる街娼だった。それから治はすっかり角名に入れ上げて、何かしら理由を作っては足繁く神戸に通って角名を買った。何度も肌を重ねるうちに角名も心を開き、治に少しずつ身上を話してくれる。出身は三河、早くに親を亡くしたせいで家はなく、大阪の親類に引き取られた妹がいると言う。妹に金を送ってやるために早くから売春を生業として生きてきた角名は、最初は名古屋で働き、次に東京、西洋人の金払いの良さに目を付け横浜へ移ったあと、神戸に流れて来たらしい。
    「やりづらくなったら場所変えんの。ここの次は長崎か下関かなぁ。呉に行って軍人さん相手に稼ぐのもいいかもね?」
    軽く笑って話す角名。しかし治は角名が心配だった。
    「いつまでもそんな生き方できひんやん。どないするん?」
    答えに詰まる角名に、治は言う。
    「俺と一緒にならんか?俺な、ほんま言うと家継ぐ気あんまないねん。あっちはツムがやる。俺は飯屋をやろうと思う。実はもう準備始めててん。当てはいくつかあるし、手伝ってくれとる先輩の伝手で料理の勉強もさしてもろとるんよ。おとんやツムには内緒やけどな。店出すまではもうちょいかかるけど、絶対お前を不幸にせんから。お前がいてくれたら、なんでも踏ん張ってやれる気がすんねん」
    最初こそ角名はにべもなく突っ撥ねたが、何度も足を運んで説得する治の根気についに折れる。
    「分かった。もう好きにして。ほんといい趣味してるよ。こんな汚い商売してたような奴に食い物屋やらせようなんてさ」
    「アホ。汚いことあらへんやん。角名ほどの別嬪が店立っとったら繁盛してしゃあないわ。お前はご利益のお狐さんやで」
    「バカじゃねーの」
    しかしそうそう上手く話は運ばず。当然ながら治は両親と侑の猛反対を受ける。家を出て飲食店を開くこともだが、何より両親は街娼上がりの角名を絶対に許さなかった。それでも反対を押し切った治はほとんど駆け落ちのようにして家を出て、貯めていた資金で念願の店『おにぎり宮』を始める。実家の圧力もあって立ち上がりは難航したが、治の学生時代の先輩で米を卸してくれている北さんだけが変わらず協力してくれたので、店は徐々に軌道に乗っていった。猛反対していた侑も実家に内緒でちょくちょく顔を出すようになり、治と角名は苦労も多いが楽しい日々を過ごしていた。
    けれどある日、どこからか角名が『元・街娼』だという噂が立ち始める。外国人相手に体を売っていたと蔑む人も現れ、店の外聞は落ちていった。「気にせんでええ」と治は言うが、従業員の中にも角名を嫌悪する者が現れ始め、いよいよ無視できなくなった角名は治に告げる。
    「俺はもう店に立たない。その代わり、仕入れとか帳簿とか裏方仕事をやる。俺が店先から消えれば噂も消えて、お客さんも戻ってくるよ」
    治は腑に落ちないところもあったが、角名がこれ以上悪く言われないためにもそれを許した。角名の言うとおり、角名が一切表に顔を出さなくなると悪評は減り、店はまた以前の活気を取り戻した。売上は上々、治は料理の研鑽を惜しまず、角名も学が無いながら懸命に勉強をして裏方仕事をこなす。そんな二人の姿を見て北さんは言う。
    「ちゃんとやっとったら、神さんがちゃんと見ててくれはる。なんも気にせんで、自分のやることちゃんとやったらええねん」
    だが、その言葉を覆すようにまた事件は起きる。店の売上金が誰かに盗まれたのだ。痕跡からして内部犯なのは確実だが、証拠が上がらない。そんな中、警察や従業員までもが真っ先に疑いを掛けたのが角名だった。もちろん治は真っ向から否定するが、『元・街娼』の肩書きが再び槍玉に上げられる。「売春なんかやってる奴だから金を盗んでもおかしくない」世間の評価はそう簡単に変えられるものではなかった。金がなくなったことで買掛や給金の支払いが滞り、従業員も解雇せざるを得なくなり、追い詰められる治。そこへ侑が訪ねてくる。
    「言いたないけど耳にだけ入れとくわ。おとんがな、この店に金出してもええ言うとる。ただし条件付きや。『手癖の悪い狐追ん出して、嫁もらって真面目に働くんやったら金は出したる』。伝言は以上や」
    「なんやお前、喧嘩売りに来たんか?こちとらんなもん仕入れる暇あらへんねんぞ」
    「せやから『言いたない』言うたやん。俺かていい気せんわ。お前が腹決めてやっとることに横槍入れるんはオモロない。『自分でなんとかせえクソブタ!』が俺の本心や。けどな、お前が潰れんのを見とうないっちゅーおとんとおかんの気持ちも、分かりとうないけど分かってまうねん」
    「…………」
    治はそれ以上侑を責めなかった。
    その様子を陰から見ていた角名は、その日を境に突然姿を消す。「暫く留守にします。必ず戻るから心配しないでください。」と置き手紙を残して。治は方々探し回ったが角名の足取りは神戸から汽車に乗ったところで途絶え、行方は分からなかった。手紙を見た北さんは冷静に「あいつが必ず戻る言うてんやから、信じて待っとき」と治を諫める。不安ながらも治はぐっと堪えて角名の帰りを待った。それからひと月ほど経った頃、角名はふらりと帰って来た。
    「こんな長いことどこ行っとった?!」
    怒りと安堵が入り混じって取り乱す治に角名は笑って見せる。
    「ちょっとね。それより、治。ほら、これ見て。治にあげる」
    そう言って角名が差し出した風呂敷包みに入っていたのは、消えた売上金の倍以上はある札束の山。治はぎょっとする。
    「お前、これどこから持ってきた…?」
    「盗んだんじゃないから。借りたのでもない。正真正銘、俺が出稼ぎ行って稼いだ金。これだけあれば店も立て直せるでしょ?もう一回やろう、治。お前ならやれるよ。俺もいっぱい働くから」
    「お前…体売ったんやろ?」
    怒気を含んだ治の言葉を聞いて、上機嫌だった角名の笑顔が固まる。つまり、肯定だ。治は角名に詰め寄った。
    「なんでそないなことするん!俺がいつお前に『体売って金作れ』なんて言った!お前にそんなことさせとうなくて、俺はお前と一緒になったんや!好いとる奴に『他の男と寝た』言われて、嬉しいわけないやんか…!」
    つい怒鳴ってしまった治。角名はそんな治に困惑を隠せず、むしろ逆に掴みかかる。
    「じゃあ黙って見てればよかったのかよ?好きな奴が俺のせいで追い詰められてんのに、指咥えて呆けてればよかった?お前はその方が嬉しかった?冗談じゃねえ!俺だってお前を助けたかったんだよ!だけど…俺はこれしか知らない。これ、そんなに悪いこと?俺はずっとこうやって生きてきたんだ。治だって、そんな俺でいいって思ってくれたから、好きになってくれたんじゃねえの?なあ、治も俺を否定するの?」
    そう言って堰を切ったように泣き出した角名に、治はそれ以外何も言えなかった。手を触れようとすれば平手で弾かれる。やがて治に背を向けた角名はぼそりと吐き捨てた。
    「なにがご利益のお狐さんだよ。お客も、お前も、世の中みんな、俺のこと汚ねえ女狐だって思ってんじゃん…」
    それから、治は角名の金には手を付けずに黙々と働いた。角名もまた朝な夕な黙って働き続ける。依然苦しい状況は変わらず、それでも二人は一切の愚痴や文句を言わない代わりに、もうほとんど会話がなくなっていた。
    「角名はなぁ、たぶん変われへんよ」
    ある時、北さんは治に言った。
    「あいつはずっと雨ん中に生きとった。そこ以外を知らん。お天道様の下連れ出したところで、あいつの真上にだけ今も天気雨が降っとる。これからもずっとや。それを止ませるんは易しいことやない。もしかしたら死ぬまで止まんかも知れん。それでもお前は、差し出した傘、仕舞わんでいられるん?風吹いても、腕千切れても、あいつを雨から守ってやれるんか?」
    治は天を仰いだ。治の目には未だ真っ青の晴天にしか見えない。角名に降り続ける雨は、治にはまだ見えていない。いつか見える日は来るだろうか。あるいは、角名がこの青空を見上げて笑う日が来るのだろうか。そんなことは分からないけれど。
    「守ってやりたいです。俺の生涯かけてでも」
    祈るように、治は答えた。
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    しらい

    MEMO角名は老舗呉服問屋の一人息子で、治は廻船問屋の息子。
    まだ、っていうかこの二人はまだ両片想いにすらなってない。
    治角名和装パロ 和装パロの治角名は時代的には江戸くらいなんで、男色にもそこそこ理解があったと思うんですよね。だから女物みたいな派手な着流し着てる角名のことを歌舞伎役者みたいな塩顔も相俟って伊達男みたいに見て女は見惚れるし、男は男娼みたいな色気垂れ流してるのを見てあてられる。治は顔がいいのはもちろんのこと身体もいいんで女が騒ぐのは当然だけど、男らしい身体つきなのにちょっとぽやっとしてるからそのギャップであてられる男もいる。

     角名は普段は店の宣伝も兼ねて派手な着流し着てて、食事のために町に来てた治も「えらい歌舞伎もんやな」くらいにしか思ってなかったんだけど、何度目かの仕事終わりの食事の後に甘味が食べたくなって団子屋に入ったら満席で、たまたま相席したのが角名。雰囲気で気取ってるやつかと思ったら、団子屋に来てるのにうどんを頼んでるのを見て「は?うどん?」と零してしまう。「なに知らないの?ここ、うどんも美味しいんだよ」って言って一口くれて食べたら美味しかったから追加でうどんも頼む治。なんやこいつ、ええやつやんって認識を改めて、そこから少しずつ話すようになる。
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    あお。

    MOURNING治の部屋の鏡が異世界に繋がってた(寮設定)。異世界には角名くんそっくりな御曹司と治くんそっくりな執事がいて…というファンタジーパロのつもりだったものです。思いつく限り書いただけなので供養。異世界組はすなくんとおさむくんの姿をした誰かみたいになってしまったのでキャラ崩壊注意です🙏🏻💦後半はほぼ会話です。いつかもう少し修正したい。「」→崎『』→異世界組
    崎の治角名+異世界の治角名治の部屋の鏡を除くと違う世界に繋がっていた。何言ってんだこいつと思うかもしれないが、俺も意味がわからない。でも実際に目の前で起こっているのだ。しかも……鏡の中には俺にそっくりのやつがいた。

    「いや、意味わかんないんだけど」
    「まぁ同じ顔なんて俺らで見慣れてるやん」
    「それとは話が別だろ……」

    事の発端は少し前。週末に出された課題を一緒にやろうと言う話になった。丁度同室の侑が部屋を空けるからと治たちの部屋で。

    「どーぞぉ」
    「おじゃまします。綺麗にしてんね」
    「だいたいこんなもんやろ」

    同じ間取り、同じ家具でもやはり住んでる人たちの個性は出るものだ。机の上に無造作に積まれた教科書に今月号のバレー雑誌。ズボンなのかシャツなのかわからないがクローゼットの隙間から布がはみ出していて、急いで散乱している衣類を放り込む治の姿が目に浮かんだ。だいたいこんなもんやろなんて言ってたけど、急いで片付けたんだろうなと思うと自然と広角が上がる。
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