Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    xxsakanaxx_hq

    @xxsakanaxx_hq

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 12

    xxsakanaxx_hq

    ☆quiet follow

    リクエストで頂いた臣角名語り。
    わりと途中で終わります。ごめんなさい。続きはたぶんハッピーエンドじゃないかなと思います。

    定期的に添い寝する臣角名 静岡でEJPとMSBYの合同練習が行われた。最終日の練習試合を終えたあと、翌日はオフということで飲みに繰り出す選手たち。付き合いで一次会には参加した佐久早は、二次会に向かうメンバーと別れて早々にひとりで引き上げた。その日は久しぶりに古森の部屋に泊めてもらうことになっていたのに、家主の古森はすっかり出来上がって侑と肩を組んで二次会に行ってしまい、別れ際に「勝手に入ってて」と部屋の鍵だけを寄越した。だが、酔っ払っていたせいで間違えて、渡されたのはロッカーの鍵。当然、佐久早は家に入れない。しかも雨まで降り出して、いよいよどうしようもない。途方に暮れていると、マンションの廊下を偶然通りかかった角名と行き会う。以前、同じ階に住んでいると聞いたことがあるのを思い出した佐久早。
    「佐久早? なにやってんの?」
     不思議そうに首を傾げた角名は雨に降られてずぶ濡れだった。そのせいか、顔は少し青ざめて見える。むしろ泣いているようにも。その様子に少し戸惑いながら、佐久早が角名に事情を説明すると、角名は至って普段と変わらない声色で「じゃあ、とりあえずうちで待つ?」と言って佐久早を部屋に招き入れた。
     角名が風呂に入っている間、佐久早は古森に何度も電話を掛ける。だが、一向に出ない。メッセージには既読もつかない。よほど盛り上がっているらしい。どうしたものか。そうこうしているうちに角名が風呂から出て来た。
    「悪い。元也とまだ連絡つかない」
    「あー。カラオケ行ってたら聞こえてないかもね」
     言いながら角名はちらりと窓の外に目を向ける。つられて佐久早も見る。外はまだ土砂降り。今夜はやみそうにもない。角名は佐久早の隣にすとんと腰を下ろすと、出し抜けに提案した。
    「泊って行けば?」
    「え……いや、それはさすがに……」
    「だってこの雨だよ? 行けるとこなんかないでしょ」
    「そうだけど……」
    「俺は気にしないし。佐久早が嫌じゃないなら、別にいいよ」
     そう言われて、結局泊めてもらうことになった佐久早。角名の好意でベッドを使わせてもらえたので、横になって眠った。他人のベッドで眠るなんて普段ならあまりしたくはないけれど、角名の部屋は不思議と嫌な感じはしない。片付いているからかも知れない。部屋もキッチンも浴室も清潔で、整頓されていて、妙な言い方をすれば生活感がない。ベッドもそう。シーツも枕もほんのり洗剤の匂いがするだけで、人のいた気配が残っていない。たまたま洗いたてなのか、角名自身がそういう奴なのか。そんなことを考えながらうとうと浅い眠りについてしばらく、ふと違和感を感じて佐久早は目を覚ます。背中に温かいものを感じた。いつの間にか角名がベッドに入って来ていた。驚いて飛び起きる佐久早、小声で「おい! なにやってる!」と抗議するが、角名はぐっすり眠っていて起きる気配がない。死んだように眠るとはこういうことを言うんじゃないかと思うほどの熟睡ぶり。手足はほかほかと温かくて、それがなんだか角名には似つかわしくないようにも思える。油断しきった寝顔を見るにつけ、佐久早はなぜか出会い頭の角名の青い顔を思い出した。ずぶ濡れで、泣いているみたいに見えた覇気のない顔。なにがあったんだろう。考えて、思い出す。そういえば角名は飲み会に来ていなかった。
     起こすのを躊躇して、佐久早は渋々角名と背中合わせのままでもう一度寝直した。角名の行動の理由はなにも分からない。だけど、本当に意外だけど。誰かの体温と心音を背中で感じながら目を閉じると、不思議なほどに佐久早もよく眠れた。
     翌朝、佐久早は古森からの電話で目を覚ます。見れば何度も着信が入っている。時計を見て驚いた。すっかり寝過ごした。隣では角名がまだ気持ちよさそうに眠っている。きっとこいつも寝過ごしているに違いない。まさかこんなにぐっすり眠ってしまうなんて。複雑な気持ちで角名の寝顔を眺めていると、角名が目を覚ます。ばっちり目が合ってどきりとした。角名はさらりと微笑んで「おはよう。よく眠れた?」と聞いてくるので、佐久早が戸惑いながら頷けば、「俺も。久しぶりにぐっすり寝た。佐久早のおかげかもね」と言ってすり寄って来る。「おい、やめろ」と抵抗するも虚しく、無理やり胸元に入り込んだ角名はまた眠ってしまう。昨夜と同じ、体温と心音が妙に心地いい。結局動けなくなっているうちに佐久早もつられて二度寝してしまった。

     それからと言うもの、佐久早はひとり寝だとどうも調子が出なくなる。と言うよりは普段と変わらないのだけれど、角名と添い寝したことで一番快適な睡眠を知ってしまったので、なんだか物足りなくなってしまったのだ。誰かと一緒に寝ればいいのだろうかと、日向あたりに頼んでみようかと考えるも、さすがに恥ずかしい。思い切って添い寝サービスをしている風俗店に足を運んだが、落ち着くどころか不快感で眠るどころじゃなかった。たぶん、あいつじゃないとダメなんだ。無菌無臭のようなあの男じゃないと。そう思って、佐久早は次の練習試合でEJPが大阪に来る時に恥を忍んで角名に連絡を取ってみた。「二人きりで話がしたい。」と無駄に意味深なメッセージを送りつけたにも関わらず、角名は軽く応じてくれた。(佐久早自身は送ってから自分で恥ずかしくなった。)何も疑うことなく、チームメイトの目を盗んでこっそり佐久早の部屋に来た角名は、事情を聴いても驚かず、むしろ笑って答えた。
    「いいよ。添い寝くらいいくらでも。と言うか、俺の方からもお願いしたいな。今までいろんなやつの隣で寝たけど、佐久早の隣が一番安眠できたから」
    「色んなやつって……お前、そんなに不純な交遊を……」
    「不純って言うな。プライベートは言いっこなし。俺もお前の事情は聞かないから。俺たちは都合がいい時に添い寝するだけの関係。それ以外のことには干渉しない。それでいいでしょ? 嫌なら諦めるか他を当たって」
    「…………ヨロシクオ願イシマス」
    「こちらこそ、よろしくお願いします」
     こうして、添い寝するだけの奇妙な関係が始まった。頻度は二週間に一回。地元を離れてホテルで会うようにした。大阪と静岡は距離があるし、万が一にも誰かに気付かれてあらぬ噂を立てられたくはない。金と労力は少しかかるが、特別なメンテナンスと思えば十分に見合う価値はあった。やっぱり佐久早は角名と眠る時には不快感はなく、体温も心音も匂いも、全てに安心できた。隣で眠る角名を感じながら眠りに落ちるとゆっくりと深く眠れて、翌朝はすっきりと目が覚めた。二週間に一回でも良質な睡眠をとれると体の調子もいいし、パフォーマンスも上がる。それは角名も同じのようで、最初の日のように二人揃って朝寝坊なんてことも少なくなかった。
     ただ添い寝するだけの関係。それ以上の交流は一切なし。とは言え、頻繁に会っていれば会話も増えるし、お互いの事情もなんとなく分かってくる。時々はチームメイトに言いにくい話もした。親しい距離じゃないからこそ逆に話せる話題もあった。そのせいか、人としての距離が近くなるにつれて体の距離も無意識に近くなる。ある朝目が覚めた時、佐久早はいつの間にか角名を抱き締めて眠っていたことに自分で驚いた。角名は、しかし佐久早の腕の中でもよく眠っている。近寄りがたいオーラを纏っている奴が、警戒心なんてまるでない様子で。それは自分にだって言えることだ。最初の日の朝のように少し遅れて目を覚ました角名は、佐久早に抱かれている状況に一瞬驚いた顔をするも、
    「こういうのも悪くないね」
     そう言ってぎゅっと抱き締め返してくる。おい、やめろ。そう言いたいはずなのに、佐久早もまたこれが嫌だとは思えなくて、角名が懐いてくるのがほんの少し嬉しいだなんて思ってしまって、抱き締めた腕をほどけなかった。
    (もしかして、この状況はやばいんじゃないか……?)
     薄々そんなことを感じながらも抗えない。結局その日も二度寝して、佐久早と角名は何度目かの遅いモーニングを食べて、いつもより少しだけ長くしゃべってから帰った。

     ……と、こんな感じで臣角名がちょっとずつ添い寝だけの関係から距離を近づけていく話です。このあと角名くんが最初にずぶ濡れで帰ってきた理由や臣くんのベッドに入り込んだ理由が明かされたり、飲み会の席でみんなの前で古森に「佐久早と角名って付き合ってんの?」と爆弾を投下されたりしつつ、最終的にお付き合いする予定。そのあたりはご想像にお任せします。
     おそまつさまでした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤😍😍😍☺☺☺💖💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works