「さぁいよいよやってまいりました!第一回・メンズ無意識お色気ボイス選手権!今回は特別にバーニィレース会場を一日お借りしてお送りいたします。本日の実況は私チサト・マディソン、解説はセリーヌ・ジュレスさんです」
「よろしくですわ」
「そして今回は特別解説顧問として、別席でオペラ・ベクトラさんをお招きしております」
「よろしく」
「なんでオペラだけVIP席みたいなとこいんの?」
「男子たちの声を肴にお酒を飲みたいらしいわ…」
「へ〜モノズキ〜。セリーヌは?」
「この間、バーニィレースで派手に失敗しちゃったらしくて……ヤケになってたところでチサトさんに捕まっちゃったみたい」
「そーなんだ…運がないねぇ…」
「ま、たまにはチサトさんの思いつきに付き合ってあげましょ」
「それでは今回のルールを説明します。選手達には一時間前から別室にて正座で待機いただいております。呼ばれた順番にこちらのステージに出てきて、この中央の椅子に座ってもらいます。審査員の皆様は椅子に座ってから十秒間、お手持ちの指し棒で足中をツンツンしてください。十秒経ちましたらこちらで合図をしますので、席に戻りましたらフリップでお色気度を十点満点中何点かご評価ください。最も合計点が高かった選手が優勝となります。
ではここで審査員のご紹介をさせていただきます。
左からレナ・ランフォードさん、プリシス・F・ノイマンさん、ケルメさん、マリアナさん、そして審査委員長のウェルチ・ビンヤードさんです」
「ビシバシいくわよ〜!」
「さぁそれでは早速一人目からまいりましょう!エントリーナンバー一番、レオン・D・S・ゲーステ選手!どうぞ!」
「もうだめ……どうしてこんなことしなきゃいけないの…はぁ…はぁ…」
「おおっとレオン選手、早速意地っ張りキャラが際立ちツンデレ好きのツボを心得ています!息も絶え絶えとはまさにこのこと!」
「ユカタという独特の服は色気をそそりますわね」
「少年から青年期へのこの大事な過渡期…ただのかわいい子供の面と、そこから垣間見える大人びた未来が吐息から伝わるわね…これは輝かしい未来に乾杯…スパークリングワインがピッタリよ」
「オペラなに言ってんの?」
「プリシス、椅子に座ったわ!急いで指し棒持って行くわよ!」
「なんでレナ急に張り切ってんの?」
「正座の痺れは短時間!これは時間との勝負なのよ!」
「やっちゃうわよ〜~!」
「うわぁ〜〜~!やめてぇ!もうだめぇ!動けないからぁ!ああぁ!」
「ダメと言われると余計やりたくなる…レオンさんは誘うのが上手ですね…」
「これは癖になるわね」
「はい、十秒経過しました!審査員の皆様は速やかに席にお戻りになりお手元のフリップにご記入お願いします!
それでは点数を発表します。7点、7点、8点、8点、5点。合計は35点です」
「ウェルチ採点厳しくない?」
「あたし、最初の『うわぁ』は喘ぎ声には相応しくないと思うのよね」
「喘ぎ声って言っちゃった」
「さすが委員長ね…目の付け所が違うわ」
「そこ感心するとこ?」
「はい、続いてまいりましょう!エントリーナンバー二番、ディアス・フラック選手!どうぞ!」
「…………くっ」
「苦悶の表情を浮かべる美丈夫…字面だけで十分おいしくいただけますわね」
「セリーヌめっちゃ楽しんでるじゃん」
「さすが最強の剣豪…その怯まぬ誇り高い姿勢だけでも評価に値するわ。ただ、陰で我慢しているのがバレバレよ。太腿に滲む汗が慣れない正座の辛い姿を物語ってるわね。素晴らしい、バーボンを持ってきてちょうだい」
「お付きの人いるの?」
「ディアス!今行くわ!」
「目が爛々だよレナ」
「…………っ心頭、滅却すれば………っく」
「それそれ〜~!」
「なるほど…こういう形で強い人をねじ伏せる…とても興味深いです」
「貴重ね。誰かマジカルカメラ持ってきて」
「さっきスルーしたけどあんたたち二人も大概だからね?」
「はい十秒です!あっディアス選手の台詞を盗った形になり申し訳ありません。では採点発表してください!
8点、7点、7点、6点、4点。合計32点です」
「ウェルチ、レオンより厳しいじゃん」
「あたし、台詞の使い回し嫌いなのよね」
「なんでそういうメタ発言すんの?」
「続いて三人目の登場です!エントリーナンバー三、ボーマン・ジーン選手!」
「ニーネ…助けてくれ……もう限界だ…」
「余裕のある妻帯者に似つかわしくない甘えですわね、それともこっちが本音なのかしら?」
「なんか急にSっ気発揮してきた」
「亭主関白の仮面が剥がれ落ちる瞬間ね。男というのは結局女がいないと生きていけないのよ……人生の世知辛さと現実を皆に伝えてくれてありがとう。味噌汁に合う熱燗を用意しなくちゃ」
「つまみも出るのあの席」
「ねぇねぇボーマン今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」
「頼む…もうやめてくれ……」
「いい大人の懇願姿…そそりますね」
「素晴らしいわ」
「では採点お願いします!8点、8点、9点、9点、6点!40点!初めての40点台です!」
「相変わらず辛口ね、ウェルチ」
「夜の主導権を握るニーネを想像しちゃったのよね、全般受けしないのはちょっとね」
「あたしこれからどんな顔して町で会えばいいの?」
「では四人目にいきます!ノエル・チャンドラー選手!」
「ふあああぁ……もう無理です…足が………ああぁ」
「まぁ、顔が真っ赤ですわ……こんなの庇護欲の塊ではありませんの」
「レオンとは違う大人のかわいらしさ……一体あの糸目には今何が映っているのかしらね。もっと追い詰めて瞳を暴いてみたいところね。ウォッカでガンガン攻めるわよ」
「誰かあの二人止めて」
「んんん〜~っ!あぁっ、誰か…!」
「はぁはぁ……先生…最高です…はぁ…」
「我慢してるチャンドラー博士…アーティスに見せてあげたいわ」
「ネーディアンの価値観変わっちゃうんだけどあれ」
「では採点お願いします!9点、8点、10点、9点、8点!合計44点!現在最高得点です!」
「高いじゃん、ウェルチ!減点ポイントはどこ?」
「う〜ん、ちょっとケルメ見て引いちゃった」
「それはわかる」
「さぁそろそろクライマックスに向けて盛り上がっていきますよ〜!エントリーナンバー五番、エルネスト・レヴィード選手!」
「ふっ…俺も不甲斐ないものだな……」
「カッコつけてますけど足がガクガクですわ、まるで生まれたての子鹿のよう」
「さすがエル、最年長の鑑ね。だけどその威勢はいつまで続くかしら?今度は私が追いかける番…船中八策は達した時のプレゼントよ」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「座ったわよ!急いでみんな!」
「ハァッ……!地球は何という拷問を編み出したんだっ…!末恐ろしい惑星だ…うぅっ……!」
「まだ余裕がありますね…延長お願いします」
「鬼畜ねケルメ、でも同感よ」
「ここで絆生まないでくれる?」
「はい、採点に入ります!7点、6点、7点、7点、6点!合計33点!うーん、今ひとつ届きませんでしたねぇ、セリーヌさん」
「そういう雰囲気になった時を考えたら、変にカッコつける男より余裕ない方が好みですわね……あっオペラ何でもありませんわですから銃口こちらに向けるのやめてくださる?」
「ウェルチ、何か言ったらたぶんあれの二の舞になるよ」
「ノーコメントにしとくわ…」
「それでは次にエントリーナンバー六番…と行きたいところなんですが、シード権を得ている最後のエントリーナンバーのクロード選手から「もう足が限界なので二人同時に審査してほしい」という要望が出たので、審査員の皆様が宜しければ二人まとめて出場してもいいでしょうか?」
「どうしてクロードがシード権持ってるんですの?」
「本人曰く、地球で少しだけ経験したことがあると口を滑らせたら強制的に最後にさせられたそうです」
「もうそれシード権じゃなくて罰ゲームじゃん」
「あの、私は一緒でも大丈夫です!」
「私も構わないよ」
「私も…」
「じゃ、スペシャルな指し棒に差し替えとくわ」
「嫌な予感しかない」
「それでは皆様の許可も下りたことですし、二人同時にどうぞ!アシュトン・アンカース選手とクロード・C・ケニー選手です!」
「あぁあぁ……もうダメ……むり……はぁっ」
「あああぁあぁ…くぅっ…冗談だろ………」
「これは……やらしいですわね」
「なんて素晴らしいの…我慢の限界を超えた二人、その先に見えた境地は一体何なのかしら?友情?それとも…あぁ…これ以上は私の口からはとても言えないわ。その時にはロマネコンチで祝杯を挙げましょう」
「ねぇチサト、これ二人だったら二十秒って計算になんの?」
「そうですね〜、特別ルールなので三十秒くらいいっちゃいましょうか!」
「さすが〜太っ腹!いっくわよ〜!」
「お…鬼だ……。アシュトン、息…してるか?うぅ…ああああぁあ!」
「ああぁああ……ギョロたち代わってよ……あううううぅ!」
「やだ…こんなの初めてです…素敵」
「何ともいえない恍惚感…これが目覚めというのかしら」
「クロード助けてよぉ!ああぁもう限界!」
「僕も無理……あぁあああっ」
「クロード!大丈夫よ、あなたならまだいけるわ!」
「今日一ひどいこと言ってる」
「はいっ、名残惜しいですがこれで最後のツンツン時間が終了いたしました。それでは採点お願いします!はい確認するまでもなく全員10点満点ですね!クロード&アシュトン選手のダブル優勝です!」
「文句なしの優勝よ、おめでとう二人とも!」
「「…………全然うれしくない……」」
「その後、女性陣は本当にロマネコンチを開けて、クロアシュ派かアシュクロ派で一晩盛り上がったのはまた別のお話☆」