「……く」
クロードが中で果て、一息ついたのを確認すると、ディアスはむさ苦しい部屋の換気のためにベッドから立ち上がった。クロードは放出した後独特の気怠さを感じながら、ディアスの鍛え抜かれた身体を見ていた。
何回交わっても、終わった後、常にディアスは涼しい顔をしている。どんなに情熱的に彼を愛しても、その半分も愛情が返って来ていない気がしてしょうがない。いや、元々の無愛想がそうさせているのは十分理解しているし、返してほしくて付き合っているわけではない。だから、こうして一緒にいられるだけ幸せなのかもしれない、とクロードは自分に言い聞かせていた。
何やら言いたげなクロードの視線を感じたのか、ディアスが窓を開けながら顔も見ずに言う。
「いつまでこういうことをやるつもりだ? お前もいい加減身を固める時期だろう」
ディアスの若干の荒っぽさが混じる声に気づかず、クロードはぱあっと顔を輝かせて答えた。
「あの、すごく嬉しいけど、結婚はまだ早いんじゃないかな」
ディアスは、初めてゲテモノ料理を前にしたような顔で振り向いた。
「言っている場合か? 地球に帰って親を安心させなくていいのか?」
「え、地球に着いて来てくれるのか?」
「?」
「ん?」
「誰の話だ」
「誰って、僕とディアスだろ」
「どういうことだ」
「だって、恋人を紹介して結婚するって、そういうことだろ?」
心底不可解な顔をしているディアスに、昔地球のコメディアンがこんな辻褄の合わないコントをしていたな、とクロードは脳内で思い浮かべる。
「恋人……?」
「え、そこから? どういう関係だと思ってたんだよ」
ディアスはベッドサイドまで戻り、腰掛けてクロードを見据える。
「近くにいるだけの、お前にとって都合の良い相手じゃないのか?」
クロードは聞いて呆れた。
「…………そんなにひどい男に見えるのか? 僕が」
信用がないにも程があるのではなかろうか。
「そして、そんな男に抱かれて楽しいのか? ディアスは」
そんなことはディアスとて楽しくはないが、クロードが地球に帰らないよう、繋ぎ止める手段がこれしかないと思い込んでいた。そんなことは口が裂けても打ち明けるつもりはなかったが。
「俺が、ずっとエクスペルにいろと言ったら、いるつもりだったのか?」
「うん、まあ、言われなくてもいるつもりだったけど……」
エナジーネーデからエクスペルに戻り、どれほど時間が経っていると思っているのだろう、この男は。長いこと一緒に過ごしているというのに、まだ自分が故郷を選ぶと思って───と、考えて気づく。
「……なぁディアス、もしかして今日までずっと、いつか僕が地球に帰るかも、って心配しながらこんなことしてた?」
ディアスは答えずベッドに入り、クロードに背を向けて横になった。
「寝る、力が抜けて疲れた」
図星だとわかった。クロードの胸が熱くなり、愛おしさでいっぱいになる。
「ディアスは意外とロマンチストなんだな」
クロードは嬉しそうに、未だにこちらを向こうとしないディアスの髪をくるくるとねじって遊ぶ。
言葉が欲しかったのはお互い様だったのだ。
サラサラの髪の毛を弄りながら、もう片方の手でディアスと手を繋いだ。後ろ姿のまま、ぎゅ、と握り返してくれて、クロードの我慢の限界が来てしまった。
「お願い、もう一回したくなった」
クロードは耳元で囁くと、ディアスの横向きの体勢を仰向けにさせようと身体を動かす。ディアスがそれを受け入れてやる。二人分の重みでベッドが激しく軋む。
「静かにしろ、窓が開いてる」
「こっちは聞かせたいくらいなんだけど?」
クロードが自発的なキスをせがむと、ディアスは諦めてため息をつき、その頭を抱き寄せた。