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    智美。

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    智美。

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    続フォロワー様のフムブン姉弟ちっこい頃ツイから膨らんだアニカビ妄想。大人組考えようとして轟沈するの図。オチとか色々はカビちゃが吸い込みました

    #アニカビ
    anikavi

    「……こんなものっ」
    デデデのハンマーを拝借してあの転送装置の前に立つ。怪しげな商売にすぐ乗っかるデデデもデデデだけれど、そもそもこんなものさえなければ大事にはならなかったのだ。元凶を絶ってしまえば良い。簡単な話だ。賑やかな足音が聞こえる。デデデは乱暴に扉を開けるとわたしを指す。デデデと少し遅れてやってきたエスカルゴンは目を丸くしていた。
    「何をするゾイ!?」
    「何って……見て分からない?」
    「わわわ、フームが暴走してるでゲス!」
    「だってこれがあるから村のみんなも困ってたじゃない」
    「……やめるんだ」
    藍色のマントがなびく。ハンマーはあっさりとわたしの手から離れた。メタナイト卿はこんな行動を取ったわたしに困惑している。気配を察することは難しいけれど、何を思っているかは少しだけ理解出来るようになった。小さい頃はその仮面が珍しくて、そして怖くなって距離を取っていたっけ。関わってみないと分からないこともある。メタナイト卿は一応デデデの部下だ。時々忘れそうになるけれど。
    「ぽよー?」
    「カービィどうした……ってねーちゃん!?」
    カービィとブンまで来てしまった。居心地が悪い。朧げな記憶のなかで、ブン共々城内で散々暴れていたことを思い出す。昔のわたしたちも相当城の人たちを困らせていた。デデデのことあんまり言えないかも……。ブンは城内でした悪戯の数々を覚えているだろうか。覚えていたときが怖いので絶対に聞きはしない。大抵そういうときに限って覚えていたりするものだ。
    「……ッ」
    呆然とするみんなを尻目に、わたしは自分の部屋へと逃げる。小さい頃のわたしにとって、この城は唯一の遊び場だった。たくさんいるワドルディ、そんなワドルディを率いるワドルドゥ、そして今や騒ぎを起こす元凶になりがちなデデデとエスカルゴン。好奇心を刺激するには充分だ。特に、ブンが生まれてからしばらくは城内の人たちに寂しさを紛らわせてもらっていたような気がする。
    「馬鹿……」
    いつしかわたしは本の世界に惹かれ、ブンもいつの間にか村で同年代のコと遊ぶようになった。デデデは魔獣という玩具を見付けた。知らず知らずのうちに時間は進んでいく。ププビレッジにはわたしと同年代の子供はいない。子供たちと遊ぶこともブンより少なかった。勝手にお姉さんでいなければいけないって思うようになっていたから、一緒に遊ぶというよりも羽目を外し過ぎないように見守ることは何度もあったけれど。
    「ふーむ!」
    「カービィ、どうしたの?」
    カービィがわたしの部屋に突然入ってくる。人の部屋に入るときにはノックをしなさいと注意する気にもなれず、要件を聞く。たまにはそういう日もあって良いよね。カービィだって良いことと悪いことの分別が付くようになってきた。もしかしたら考え過ぎてわたしの耳に届かなかっただけかもしれない。カービィは両手を広げてわたしに訴えかける。
    「すたー、わーぷすたー!」
    「ワープスターに来てほしいの?」
    「ぽよ!!」
    「分かった。……来て、ワープスター!」
    いつしかあの星もカービィ自身が呼べるようになるのだろう。否、そうならないといけない。わたしたち姉弟が各々の道を見付けたように、カービィにはカービィの進むべき道がある。時間は否が応でも進んでいく。ワープスターはわたしの呼びかけで飛んでくる。窓の外で待機するワープスターにカービィは乗った。カービィが手招きをする。わたしはカービィの誘いに乗った。
    魔獣騒ぎも落ち着き、こうしてカービィと一緒に空の旅に向かうことがある。ワープスターに乗って戦ってきて今更感はあるが、時々は乗らないとカンが鈍ってしまうかもしれないという自論を盾にミニチュアみたいになった村を見下ろす。カービィが守ってくれた日常がそこにはあった。可愛いのに立派な星の戦士だ。そっとカービィの頭を撫でる。
    「さっきはありがとう、カービィ」
    「ぽよ!」
    「……わたしも頑張らなきゃね。ちょっと行ってくる」
    カービィとの空の旅も終わり、意を決してデデデとエスカルゴンがいる場へ向かう。わたしはカービィと別れた。あのコはブンたちのところにでも向かったのだろうか。わたしの暴走を目の当たりにして、あのコなりに考えて行動してくれた。今度カービィのところに美味しいスイカでも持っていこう。通い慣れた通路も妙な圧を感じて歩きにくい。
    デデデはテレビを見ていた。さっきまでの喧騒はすっかり消え去っている。代わりにデデデの笑い声が広間に響く。忘れっぽいデデデのことだ、きっとわたしが起こした行動だって彼の脳内に残っている訳がない。いや、残っていても彼の興味は今テレビに向いている。すっかり過去の出来事なのだ。わたしが何も言わなくてもこのまま時は過ぎる。何事もなかったかのようにいつもの日常が始まるだけ。
    「ちょっといい?」
    「なんゾイ」
    「…………」
    「なかよし、ぽよ!」
    今更何を言えば。言葉を探していると、いつの間にか戻ってきたカービィはわたしとデデデの手を繋いできた。このコは本当にお人好しだ。魔獣にすら手を差し伸べてしまえるのはあのコの良い所だと思う。こんな環境でよくここまで育ってくれた。つまらない意地を捨てて、素直な言葉を告げる。
    「デデデ、さっきは騒いでごめんなさい。エスカルゴンもごめんなさい」
    「妙に素直だと気持ち悪いぞい」
    「まったく、肝が冷えたでゲス」
    「なーによ。……それっ」
    握手した手を利用してデデデの肩に乗る。昔みたいにすっぽりとハマることはない。かつてはわたしの特等席だった。今では時折カービィが乗っているのを見かける。初めは目くじらを立てていたが、いつからか受け入れていた。それはあのコに嫉妬し、そしてわたしを重ねていたからだと今更ながら気が付く。所詮わたしもまだまだ子供なのだ。わたしの行動を見たカービィはエスカルゴンの殻の上にちょこんと座る。
    エスカルゴンはカービィを下ろそうと四苦八苦している。それすらカービィは楽しんでいた。アトラクションか何かだと思っているのか。一方、デデデの反応は鈍い。そうそう、大人の余裕なのかこのぐらいは自由にしてもらえることが多かった。むしろエスカルゴンを筆頭に周りがうるさかったような気がする。わたしはデデデの帽子を外そうとした。ここでようやくデデデもわたしを下ろそうとする。わたしだって魔獣騒ぎで動き回ることも多かったんだから、少しぐらいは抵抗出来るもん。テレビの音はわたしたちの喧騒でかき消された。

    『叫ぶには遅過ぎて』

    *保護者サイド
    彼女は無邪気に笑っていた。転送装置を壊そうとしたり、カービィと同じように陛下に戯れていたり、どこか昔の彼女に戻ったかのような。その頃はまだ距離を置いている時期だった。
    「…………」
    「メタナイト卿、どうしました?」
    「メーム殿、私はフームに押し付けてしまったのかと」
    「そんなことないわ。カービィはフームにとって必要な存在よ」
    「ですが……」
    「メタナイト卿、あなたがいるから安心してあの子たちをある程度自由に出来てるの」
    メーム殿にガールードの姿が重なる。戦に関してはこの村の誰よりも強い自信がある。しかし、私に足りないものがここには溢れていた。デデデの策に嵌るこの村の民は少々……おそらく、少々頼りない。結果的にフームが陛下の暴走を止める主導者となることが多かった。
    『――まだまだね』
    「…………っ!?」
    ガールードの声がどこからか聞こえた気がした。そうだな、私ももっと精進せねば。失ったものもたくさんあった。だがそればかりではない。蒔いた種は確実に成長している。彼らを見届ける、そんなふうに前向きに生を捉えることが出来た。
    「あなたがどんな体験をしてきたかは私には分かりませんわ。でも、カービィが来てから少し丸くなった気がするのは気のせいかしら?」
    私には回答に困り、無邪気にじゃれている彼女たちを見る。あるときからフームが私を怖がるようになった。それからは自然と距離を取った。彼女が成長してからも今のように関わることはなかった。そう、カービィが来るまでは。
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    デデデのハンマーを拝借してあの転送装置の前に立つ。怪しげな商売にすぐ乗っかるデデデもデデデだけれど、そもそもこんなものさえなければ大事にはならなかったのだ。元凶を絶ってしまえば良い。簡単な話だ。賑やかな足音が聞こえる。デデデは乱暴に扉を開けるとわたしを指す。デデデと少し遅れてやってきたエスカルゴンは目を丸くしていた。
    「何をするゾイ!?」
    「何って……見て分からない?」
    「わわわ、フームが暴走してるでゲス!」
    「だってこれがあるから村のみんなも困ってたじゃない」
    「……やめるんだ」
    藍色のマントがなびく。ハンマーはあっさりとわたしの手から離れた。メタナイト卿はこんな行動を取ったわたしに困惑している。気配を察することは難しいけれど、何を思っているかは少しだけ理解出来るようになった。小さい頃はその仮面が珍しくて、そして怖くなって距離を取っていたっけ。関わってみないと分からないこともある。メタナイト卿は一応デデデの部下だ。時々忘れそうになるけれど。
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