親愛スト2話を踏まえたグラエマの話 気付いていた。足音も小さな声の独り言も聞こえていた。気配は感じていたから、単純に目を開けるタイミングを見失っただけだ。声をかけられたら、それで今目が覚めた、という事にして目を開けようと思っていた。
その心持ちでいたのに、妙に静かだと思って薄目を開けて様子を窺ったら、隣でエマは両目を閉じて規則正しく小さく呼吸をしていて、というより、どうやら眠ってしまったらしかった。
寝ているところを起こすのも忍びないと思い、起きるまで待とうとしたらしい。そのつもりはなかったとはいえ、寝たフリをしていた事に変わりはないので、少しだけ申し訳なく思う。
改めてエマの顔を見る。罪悪感、という単語が浮かぶ。
こんな偽善めいた良心でどの口が、とも思って短く息を吐く。誤魔化すように見上げた木漏れ日は時間と共に移ろいだようで木々の影が交差の角度を変えていた。どこかで鳥の鳴き声がする。風もほとんど吹いていない。
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