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    佳芙司(kafukafuji)

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    POIPOI 71

    テントウ虫とトマトの赤とターナーの「ユトレヒトシティ64号」の赤いブイとかけてます、多分。

    #グラエマ
    graeme

    テントウ虫とグラエマの話。『テントウ虫の飛んでいった方向に、将来結婚する相手がいるんだって!』

     まだ祖母も生きていた頃ぐらいの昔、もう名前も覚えていない遊び友達がそんなジンクスを話していた。今まで思い出しさえしなかったのに、今になって急に思い出したのは、洗い立てのテーブルクロスにテントウ虫がとまっていたからだ。
     昨日、『畑に出たっていうモンスターを倒したらお礼に野菜たくさん貰っちまった』とクロウが木箱いっぱいの野菜を抱えて帰ってきた。その中のトマトが特に熟れていたから、グランがミートソースのスパゲティにして先に食べてしまおうと提案した。みんなが競って食べるから、飛び散ったソースでテーブルクロスは汚れてしまって、エマは昨夜のうちにさっさと洗って軒下に干しておいたのだ。
     陽の下ですっかり乾いたテーブルクロスの赤い点を、洗い残しかな、なんて思いながらよくよく見たらテントウ虫で、エマはくすりと笑った。

    「お昼寝してたのかな。ごめんね」

     今日はよく晴れている。そよ風が吹いてひらひら揺れるテーブルクロスはハンモックのように心地よいだろう。その小さな羽を休めるためにここに来たのかと思うと、なんだか微笑ましい。
     不意に、テントウ虫がちょろちょろと動き出した。物干し竿まで登るとそのまま端に向かってまた歩いてゆく。揺らさないよう注意深くテーブルクロスを回収して、適当に畳んで腕に掛ける。テントウ虫は遂に物干し竿の一番端まで到達して、羽を開いて飛んでいった。
     なんとなく、どこへ飛んでいくのか追いかけてみたくなった。
     目で行方を追い、同じ方向へ歩き出す。そよ風にたまに煽られながらもテントウ虫はふわふわ飛んでゆき、不意に角を曲がった。あちら側は確かクロウのバイクが停めている場所だったはずだ。

    「あっ」
    「ん?」

     テントウ虫がキャンバスに描かれている――のではなくて、グランの描いていた花の葉の部分に、先程のテントウ虫がいた。

    「エマか。見てくれ、テントウ虫が」

     庭先で自生している花を描いていたらしいグランは、振り返ってエマを見ると微笑んだ。テントウ虫を指差して嬉しそうにしているグランを見て、エマも思わず笑顔になる。

    「まだ下塗りの段階だが、生きてる昆虫に気に入られたなら良い絵になりそうだ」

     グランは上機嫌で筆を置き、手についた塗料を拭き取り始める。テントウ虫がまた飛び立つまでは手を休める事にしたらしい。
     隣に立って改めてキャンバスを見つめると、まだうっすらと下書きの線が見えた。これだけでも完成作品のように感じられるが、このあと更に色が足されて鮮やかに染まっていく事を思うとわくわくしてくる。

    「ところで、エマ。何か用事があったんじゃないのか?」
    「え?」

     エマは首を傾げて、そしてハッと気付いた。
     ――テントウ虫の飛んでいった方向に、将来の……。
     ついさっきまで考えていた事を思い出した瞬間、瞬きするよりも早く顔に熱が集まってきてエマはたじろいだ。

    「どうした? 具合でも悪いのか……?」

     グランが心配そうな顔をして覗き込んでくる。その瞳は間違いなくエマしか映していない。
     それが何故かとても嬉しく感じられてしまって、余計に戸惑った。

    「な、……な、んでもない!」
    「エマ?」

     グランの呼び掛けも無視して慌てて家の中に駆け込み、テーブルクロスを抱えたままその場に呆然と立ち止まった。

    (ただのジンクス。……だよね?)

     そう言い聞かせてみるものの、どうにも心がざわついて落ち着かない。エマの心臓はまだドキドキしているし、相変わらず顔は熱いし、このままだときっと茹で上がってしまう。

    「うう〜……もうっ!」

     結局その日は一日中、結婚式のイメージが頭から離れずエマは一人で百面相をして過ごす羽目になった。
     将来の旦那様は、もしかしたら、きっと……。



    〈了〉
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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    佳芙司(kafukafuji)

    DONEこちらのアンケート結果【https://twitter.com/kafukafuji/status/1522554377923620865?s=21&t=2GIpbQxVqsX9lfYCnepBbA】
    「わざと見せつける」を元にして書いたグラエマ+ヴィクトル。
    本人らは故意とは思ってないけど周囲がそう感じる時あるよね、と。
    several coats of nail polish.(グラエマ) 発売当時、雑誌でも取り上げられて話題になったカラフルマニュキアのキャッチコピーは『あなたのココロで染まる指先。』だったかしらね、とヴィクトルは記憶を辿った。持ち主の心が宿るという水晶鏡片を砕いて魔術で加工したものを染料として使っているとかいないとか。
    「アンタも塗ってみてよ。何色になるのか見てみたいわ」
     カジノの営業時間前に買い物に行ったついでに、つい盛り上がって一緒に買おうとなったカラフルマニキュア。そのままだと一見ラメ入りの青紫系統のマニキュアで、星空のように見えるのに、ひとたび爪に乗せると色が変わるのだから不思議だ。
     鼻歌交じりにボトルを開けて小指から塗り始めながらヴィクトルは自分の爪先がオレンジ色に染まっていくのをまじまじと見た。なるほど今はこの気分らしい、今日のネクタイはこの色にあわせてみようかしら、等々と考えて手際良く片手を塗り終えた。
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    佳芙司(kafukafuji)

    TRAININGエマ視点→【https://poipiku.com/3176962/6268101.html】

    『Let’s take the long way home sometimes.』
    ゆめくろのグランフレア×エマちゃん(グラン視点) マイスターボードにメッセージの着信を知らせる音が鳴った。先程エマに送った、仕事が終わったら迎えに行くという旨のメッセージに対する返信で『なるべく早く仕事を終わらせるから』とスタンプ付きで書かれていた。
     忙しいだろうに、わざわざ返事を送ってくれる気遣いが嬉しい。小さな約束を交わせる事がこんなにも心をあたたかくして満たされるなんて、今まで知らなかった。迎えに行く事を許される事も、帰りが待ち遠しいと思う人がいる事も、全部この上なく喜ばしい。
     エマは連盟本部所属のギルドキーパーとして、国を越えて様々なギルドと連携を取り、調整と便宜を図る役目を担っている。更には自分達『月渡り』のためにも日々駆け回っている。只でさえ忙しいのだからと、彼女の負担を減らすためにも報告書の提出時にはミスのないよう注意深く確認し、送られてくる依頼書だけでなく請求書や明細書にもきちんと目を通すようメンバーに徹底させている。クロウは努力しているようだがイツキやノアにはなかなか難しいようで、ルージュは言わずもがなのため、なんとか体裁を取りまとめるのは結局リーダーの自分の役割だ。
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    佳芙司(kafukafuji)

    MOURNING出来上がってるオスアキのオスカーが昨夜の名残をジェイに見られてしまう的なアレ。
    男の勲章?(オスアキ前提オスカー+ジェイ)

     エリオスタワー内のジム設備があるフロアにて、こそこそとロッカールームに入っていく背中を見つけた。人目を気にするような、それとなく周囲を伺っているような。ただそのたった今入室していった人物がオスカー・ベイルだったので、ジェイ・キッドマンは思わず、んん? と声に出して首を傾げた。
     ジェイは以前、同チームのグレイ・リヴァースとトレーニングをした際に『人の目があると落ち着かないからロッカールームに人のいない時に着替えている』と話していた事を思い出した。彼は自分の筋肉のつきにくい体質や筋力不足を気にしていたようだが、果たしてかのオスカー・ベイルが、それを気にするような男だろうか。否や寧ろ逆であろう。
     オスカーがシャツを脱いでエリオスタワー内のジム器具を利用している様子は何度も見かけているし、自己鍛錬と研鑽に妥協のない男だから、まだまだだと冷静に己を見つめる事はあれど、人目から隠れて着替えようとするほど卑屈になる事はないだろう。ここは間を置いてから入るべきかと思ったが、もし何か思うところがあって体を縮こまらせているのならば、その悩みを聞くくらいは出来るし、何か人にいえないような怪我を負っているならば早急に確かめなければならない。
    1885