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    佳芙司(kafukafuji)

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    リンク集【https://potofu.me/msrk36

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    POIPOI 71

    https://poipiku.com/3176962/6565891.html】の続き

    #グラエマ
    graeme

    グラエマが初めて大人のキスした話。 音のないキスが‪前髪越しに、額に降りてくる。前髪をよけた指先がそのまま頬に添えられて、今度は直に唇が額に触れた。唇が完全に離れていってしまう前にこっそり目を開けて、目尻と眉尻と耳とを順番に見た。お互いに、こんなにも近くにいるんだと気付かされて、恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
     グランの体は大きいから、簡単に完全に抑え込まれてしまうのは分かっている。なのに、怖い、とは、全然思わない。どきどきするのに安心するなんて不思議だな、なんて思いながら彼の胸に寄り掛かった。
     こうなる前から距離感はそこそこ近かったように思う。でもだからこそ、適切な間隔がどのくらいのものなのか、初めは掴めないでいた。今はもうだいぶ慣れた方だと思う。肩とか腕とかに手を添えても平気だし、例えば唐突に抱きついてみたりしても、きっとグランは許してくれる。恥ずかしくて今は出来そうにないけれど、そのくらいなら、いつかしてみたいかも、とも思ったりする。
    「エマ」
     囁き声に顔を上げて、あ、と思った時には口付けが落ちてきた。額でも頬でもなくて、唇に。
    (……ぅ、わ)
     目を閉じるタイミングを逸してしまったせいで、間近にあるグランの顔の、鼻筋や瞼、実は長い睫毛まではっきりと分かってしまった。
     慌てて目を閉じて、いつもよりも少しだけ長く触れ合っていた唇がゆっくりと離れていく気配を感じ取ってから、恐る恐る瞼を持ち上げてみる。さっきよりもずっと近いところにグランの目があって、なんだか胸が痛くなる。きゅうきゅうと締め付けられるようで、呼吸の仕方まで忘れてしまいそうになる。
     キスに慣れない、というより、この距離感のグランに慣れてない。戸惑っているのは事実だけれど、それでもやっぱり嬉しいものは嬉しくて。恥ずかしくて照れてしまうけど思わず笑ってしまう。
     しあわせ、ってこういう感じなんだと、すんなり分かったような、そんな心地。
    「グラン」
    「どうした、エマ」
     グランの声も柔らかくて優しい。普段はこんな甘い声で名前を呼ばれたりしないから、心臓が跳ねる。こんなにも近くで、彼に触れられている事を改めて実感して、胸がいっぱいになる。
    「あのね、好き」
     気持ちを言葉にして声に乗せてみると胸があたたかくなるような、体温まで少し上がったような心地がした。
     ふにゃりと表情が崩れそうになるのを必死で堪えて、グランの反応を待つ。
     彼は一瞬だけ驚いた顔をして、それからすぐに微笑んでくれた。
    「俺もだ」
    「うん……」
     頭を撫でられる。その手が頬に降りてきて、あたたかくて大きな手で頬を包まれるのがとても気持ちいい。
     つい、目を閉じた時、グランの気配を感じた。
    「エマ。そのまま少し、口を開けててくれるか」
    「へ……?」
     なんだろうと思いつつも言われた通りにすると、また軽く唇を重ねられた。そのまま覆うように塞がれてしまう。
     ぬるりとしたものが入ってきて、それが舌だと分かるまでに数秒かかった。
    「ん、ぅ……?」
     なんで、と考える間もなく口の中がグランの舌でいっぱいになる。
     びっくりして固まってしまったままの私の歯列をなぞって、上顎の裏に触れられて、ぞく、と背筋が震えた。
     息継ぎの間合いすら分からずに混乱しているうちに、それはどんどん深くなっていく。自分の舌でも届かないようなところをグランの舌が掠めていく。
    「ふぁ、ぅ……ん」
     頭の奥が痺れて、ぼうっとする。
     グランに背中を撫でられて、唇と舌にも口の中を撫でられて、全身をグランに包まれているみたいだ、とようやく思考能力が戻ってきた。
    (そ、っか、これ……キス、されてるんだ、私)
     キスするのに、こんな風に舌を使うなんて、そんなの知らない。
     舌を絡め取られて、吸われて、こすられて。引っ込めようとしたら逆に捕まって、舐められて、甘噛みされて。自分が何をされているのか理解するのがやっとだった。
    「んぅ、は……」
     苦しくなって、酸素を求めて口を開こうとする度にグランの舌が深く入ってくる。食べられてるみたいに感じるのはどうしてだろう。
     とろとろと唾液も流れてきて、こくり、と喉が鳴った。飲み下したらもっと頭が熱くなった。
    (これ、だめ……かも)
     このままじゃ本当にどうにかなってしまう。
     そう思った瞬間、ようやく唇が解放された。
    「っぷぁ、は……ぁ」
     新鮮な空気を吸い込むと、一気に涙腺が緩むのを感じた。
     首から上がすごく熱くて、グランの顔もぼやけて見える。とても長い時間のように感じたけれど、実際はそうでもないのかもしれない。
     それより、私の顔を見つめたまま何も言わないグランが少しだけ、怖い。混乱してよく分からないまま何か変な事をしてしまってたらどうしよう。
    「ぐ、グラン……」
     名前を呼べば、グランは困ったように眉尻を下げた。
    「悪い、その……我慢出来なかった」
     瞬きして、よく見るとグランの顔が少し赤くなっている事に気付いた。
    「こんな……」
    「え?」
    「口まで小さいなんて思わなくて」
     グランの手が顎に触れる。親指で唇をなぞられながら言われて、カッと体が熱くなったのが分かった。
     確かに、実際にキスしてみるまで分からなかった。グランの手や指は触れられた事があるから大きいと分かっていたし、唇は意外と柔らかくて、あたたかくて、ちょっとかさついているのも知っていたけど。
     それで、その奥に、私よりもあんなに大きくて長い舌があったなんて。
     まだ頭の中がぐるぐるしていて上手く考えられないけど、とにかく恥ずかしくて仕方がない。
    「嫌だったか」
    「そ、うじゃ、なくて……嫌じゃない、けど……」
     恥ずかしくてたまらない。思い出すだけで体がぞわぞわして、また顔が赤くなってしまいそうだ。
    「なら、よかった」
    「う、うん……」
     なんと言えばいいのか分からなくなって俯いて黙っていると、グランが私の手を握った。
    「俺はお前の事が好きだ、エマ」
    「は、ハイ」
    「俺がこういった事をしたいと思うのは、お前だけだ」
    「うん」
     真剣な表情で言われて、思わず私まで緊張してしまう。勢いに呑まれてこくこく頷くしか出来ない。
    「だから」
    「うん」
    「……嫌いに、ならないでくれ」
     急にグランがとても悲しそうな表情でそんな事を言い出すから驚いてしまった。今の流れで、私がグランを嫌いになるような事なんてあったかな、と思いつつ首を傾げる。
     そもそもグランの事を、私が嫌いになるような要素なんて、どこにもないのに。不安げに見下ろしてくるグランの目を見て、私は安心させるように笑いかけた。
    「嫌いになんかならないよ」
     グランが好きだもん。
     心の中で付け足した言葉は、声には出さなかったけど、きっと伝わったんだろう。グランの強張っていた顔つきがほっとしたように緩んだ。
     グランにもかわいいところがあるなんて、なんだか嬉しくなる。
    「今日は初めて知る事たくさんあるなぁ」
     衝動的にぎゅっと抱きつくと、グランは私の背中に腕を回して応えてくれた。
    「なんだ、初めてって」
    「グランが、私に嫌われたくないんだなとか」
    「当たり前だろう」
    「あと、あんな風にするキスもあるんだ、って」
     言い終わるか終わらないくらいにグランがギクリと体を固くした。というより動きが止まった。
    「グラン?」
    「いや……初めて、というのは」
    「さっきみたいなキスの事だけど……?」
    「そうか。いや、そうだったな……そうだよな……」
     グランは何故か気まずそうに目を逸らしてしまった。難しい顔をして何か考えているようだ。
    (やっぱり私、変な事を言っちゃったのかな……?)
     グランの服を摘んで軽く引っ張ると、彼はハッとしてこちらを見た。目が合うと何やらバツが悪そうに咳払いをして、それから口を開いた。
    「大事にするからな」
    「えっ?」
    「責任は取る」
    「せきにん?」
     何の話だろう。きょとんとしていると、グランが私の頭を撫でた。
    「なんでもないよ」
     そのままグランの胸に抱き込まれて、ぽん、ぽん、と優しく背を叩かれる。まるで子供扱いされているみたいだなとちょっと不満に思ったけれど、まぁいっか、とすぐに考え直した。
     だって、グランのそばにいるのが一番安心するから。
     ――グランの言う『責任』が何をどこまで指しているのか、私が思い知る事になるのはまた別の話。



    〈了〉
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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    佳芙司(kafukafuji)

    DONEこちらのアンケート結果【https://twitter.com/kafukafuji/status/1522554377923620865?s=21&t=2GIpbQxVqsX9lfYCnepBbA】
    「わざと見せつける」を元にして書いたグラエマ+ヴィクトル。
    本人らは故意とは思ってないけど周囲がそう感じる時あるよね、と。
    several coats of nail polish.(グラエマ) 発売当時、雑誌でも取り上げられて話題になったカラフルマニュキアのキャッチコピーは『あなたのココロで染まる指先。』だったかしらね、とヴィクトルは記憶を辿った。持ち主の心が宿るという水晶鏡片を砕いて魔術で加工したものを染料として使っているとかいないとか。
    「アンタも塗ってみてよ。何色になるのか見てみたいわ」
     カジノの営業時間前に買い物に行ったついでに、つい盛り上がって一緒に買おうとなったカラフルマニキュア。そのままだと一見ラメ入りの青紫系統のマニキュアで、星空のように見えるのに、ひとたび爪に乗せると色が変わるのだから不思議だ。
     鼻歌交じりにボトルを開けて小指から塗り始めながらヴィクトルは自分の爪先がオレンジ色に染まっていくのをまじまじと見た。なるほど今はこの気分らしい、今日のネクタイはこの色にあわせてみようかしら、等々と考えて手際良く片手を塗り終えた。
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    佳芙司(kafukafuji)

    TRAININGエマ視点→【https://poipiku.com/3176962/6268101.html】

    『Let’s take the long way home sometimes.』
    ゆめくろのグランフレア×エマちゃん(グラン視点) マイスターボードにメッセージの着信を知らせる音が鳴った。先程エマに送った、仕事が終わったら迎えに行くという旨のメッセージに対する返信で『なるべく早く仕事を終わらせるから』とスタンプ付きで書かれていた。
     忙しいだろうに、わざわざ返事を送ってくれる気遣いが嬉しい。小さな約束を交わせる事がこんなにも心をあたたかくして満たされるなんて、今まで知らなかった。迎えに行く事を許される事も、帰りが待ち遠しいと思う人がいる事も、全部この上なく喜ばしい。
     エマは連盟本部所属のギルドキーパーとして、国を越えて様々なギルドと連携を取り、調整と便宜を図る役目を担っている。更には自分達『月渡り』のためにも日々駆け回っている。只でさえ忙しいのだからと、彼女の負担を減らすためにも報告書の提出時にはミスのないよう注意深く確認し、送られてくる依頼書だけでなく請求書や明細書にもきちんと目を通すようメンバーに徹底させている。クロウは努力しているようだがイツキやノアにはなかなか難しいようで、ルージュは言わずもがなのため、なんとか体裁を取りまとめるのは結局リーダーの自分の役割だ。
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    みぃ☆

    DONE2020→2021 甘々キスブラで始まります♡

    第8回キスブラワンライ「年の瀬」からお読みいただけると、より楽しめると思います!
    『3・2・1……Happy New Year!!』

    おめでとう。
    今年もよろしく!

    タワー内のあちらこちらで新年を祝う声が聞こえてくる。

    「夜勤をしている者もいるというのに……はしゃぎすぎだ」
    けしからんと言わんばかりに眉間に皺を寄せたブラッドも、今夜はグラス片手に談話室で皆の輪から外れたところに佇んでいる。
    先ほどまで、ジェイやリリーと新年の挨拶を交わしていたが、二人もセクターのメンバーや教官仲間たちの元へと戻り楽しそうに酒を酌み交わしていた。
    ブラッドはサウスメンバーと挨拶を交わした後、持て余し気味のグラスを片手に皆の輪から抜けたところだった。
    狭い会場の中心では、お祭り騒ぎの大好きなディノが、2021の形をした眼鏡をかけ、人々の間を楽しそうに歩き回っているのが見え、苦笑と共に小さなため息を尽いた。
    「まったく……明日、いやもう今日か。任務がある者もいるだろうに」
    そう零すブラッドの口元は緩いカーブを描き、言葉とは反対に穏やかな表情でパーティー会場を見つめていた。
    一人壁の花に扮するブラッドを気にするオスカーの視線を感じたが、今夜くらいはオスカーも楽しむべきだと、敢えてその視 3894