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    佳芙司(kafukafuji)

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    POIPOI 71

    エマちゃんが丸っきり全部初めてだったら可愛いなと思った。

    #グラエマ
    graeme

    グラエマが初めてキスする話。『次に唇が離れたら、大好きだよって言うからね。』


     ぎゅう、と目を閉じるのに力を入れ過ぎて体が強張る。置き場所に困って胸の前で握った両手はグランの左手一つで覆われてしまって、右手には肩を掴まれて、もう絶対に逃げられない。逃げたくないけど逃げたくなる。怖い訳じゃないけれど緊張はする。もう自分ではどうしようもない。心臓が爆発してしまいそうなくらいドキドキして、なんだか泣き出してしまいそうになる。
     男女交際、お付き合い、というものを今まで経験した事がなくて、それで呆れられてしまうのが怖くて。でもそんな事を気にしている余裕なんてないくらい、今の状況にいっぱいいっぱいになっている。
     もう何も考えられなくて必死で目を閉じて、もうどうにでもして、とさえ思ってしまう。
    「エマ」
     名前を呼ばれても目を開けていいのかどうかも分からない。耳のすぐ側で聞こえるグランの声がいつもより低くて、まるで知らない人のようで余計に不安になる。
    「エマ」
     もう一度名前を呼ぶ声が聞こえた瞬間、不意に柔らかな感触が唇に触れた。
     それはあまりに一瞬の出来事で、すぐに離れていってしまう。瞬きしながら目を開けると、間近にグランの顔があって驚いて咄嗟にまた目を閉じた。
     もう一度目を閉じてからのキスはさっきよりも少しだけ長かった。
     今度は、ちゅ、という小さな音と共に離れていった。そしてまた直ぐにくっついてくる。何度も繰り返されて、その度に頭の中までふわふわしてくる。
     体の力が抜けて、気が付けばグランの腕の中で完全に身を任せてしまっていた。
     最後にゆっくり唇が離れていって、ぼんやり至近距離のまま見つめ合う。何だかだんだん恥ずかしくなってきて目を逸らしたのに、グランは追いかけるようにじっと私の目を見つめてくる。気不味くて仕方がないけれどグランがあまりに真剣に見つめてくるから、恐る恐る目を合わせた。
    「エマ」
     グランの方から目を合わせてきていたのに、どうしてか目が合った途端に困ったような表情をされてしまう。何か考えているような顔つきで、言いにくそうに口を開いた。
    「あのな、エマ。確認なんだが」
    「え、な、なに……?」
    「もしかして、初めて、だったか」
     あ、やっぱり分かっちゃうんだ。
     頷いて、下を向いたまま顔が上げられない。やっぱりなんか変だったんだろうな、とか、幻滅されちゃったかな、とか、ぐるぐる考えてしまって上手く言葉が出てこない。
    「ご、ごめんね。……っ」
     どうにかそれだけ言って、そのまま黙り込んでしまう。グランは何も言わないし、視線を向けられているのを感じるだけで居心地が悪い。キスどころか、男の人と抱きしめ合ったり、手を繋いだりするのもそうだし、そもそもこんなに近い距離感で男の人と接する機会自体あまりなかった。月渡りは全体的に家庭的な雰囲気で、みんなと距離感は近かったけど、それでもグランに対してだけは、他のどんな誰かとも違うような感じで、もっとそばまで近付きたくて、だから。…………
    「エマ、こっちを向いてくれ」
     両手で優しく肩を掴まれる。
     ぐるぐる考え込むくらい混乱していたらしい。つい肩が震えてしまって、グランの言う通りにそっと目線を上げると、グランは眉間に皺を寄せて難しい顔をしていた。
    「嫌なら、ちゃんと言ってくれ」
    「え……いやじゃないよ、私」
    「じゃあどうして泣いているんだ」
     言われてからやっと気が付いた。自分の頬を伝う涙の存在に。
    「わ、わたし」
    「うん」
    「わたし、はじめて、なの」
    「ああ」
    「だから、呆れられたく、なくて」
     下を向いたら涙がぽろりと零れてしまって、慌てて拭おうとしたけれどその前にグランに抱き寄せられてしまった。
     背中と頭に手が回されて、ぎゅうと力強く抱かれる。グランの匂いに包まれて、それが凄く安心できて、ずっとこうしていてほしいと思ってしまった。
    「呆れたりする訳ないだろう」
     耳元で囁かれた声はとても優しかった。グランはそのまま頭を撫でてくれるから、胸の奥がきゅう、としてしまって、もう本当にどうしようもない。
    「エマの初めてをもらえるなんて思ってなかった。……嬉しいよ」
     グランの声は静かで落ち着いていて、それでいて少し掠れていて。こんな声を聞いたのは、もしかしたらあのブルメリアから戻った夜以来かもしれない。
     思わず顔を上げたら目が合って、グランの瞳が揺れているのを見た。
     どうしよう、分かってしまった。
     私がグランを好きなように、グランも私と同じ気持ちでいてくれてるんだ。
    「グラン」
     両手を伸ばしてグランの頬に触れると、彼は驚いたように目を丸くした。振り払われなくてよかった、とほっとする。
    「二回目のキス、してくれる……?」
     目を見つめて訊ねるとグランの顔がゆっくりと近づいてきて、それから唇と唇が触れ合った。
    「ん……」
     つい漏れてしまった自分の声が甘えているみたいで恥ずかしくて、でも、嬉しくて堪らない。
     唇はすぐに離れていって、ちょっと寂しく思っていたら、グランはもう一度キスしてくれた。
     三回目のキスになるのかな、とぼんやり思う。
     グランは私の髪を手で掬ったり耳にかけたりしながら何度も何度も繰り返し口付けてくる。その度に頭がくすぐったくなって、なんだかまたふわふわしてきた。
     四回目も五回目も、それよりもっとたくさんの回数のキスをきっと、これからグランとする事になる。それは何だかとても幸せだな、と思った。



    〈了〉
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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    佳芙司(kafukafuji)

    TRAININGエマ視点→【https://poipiku.com/3176962/6268101.html】

    『Let’s take the long way home sometimes.』
    ゆめくろのグランフレア×エマちゃん(グラン視点) マイスターボードにメッセージの着信を知らせる音が鳴った。先程エマに送った、仕事が終わったら迎えに行くという旨のメッセージに対する返信で『なるべく早く仕事を終わらせるから』とスタンプ付きで書かれていた。
     忙しいだろうに、わざわざ返事を送ってくれる気遣いが嬉しい。小さな約束を交わせる事がこんなにも心をあたたかくして満たされるなんて、今まで知らなかった。迎えに行く事を許される事も、帰りが待ち遠しいと思う人がいる事も、全部この上なく喜ばしい。
     エマは連盟本部所属のギルドキーパーとして、国を越えて様々なギルドと連携を取り、調整と便宜を図る役目を担っている。更には自分達『月渡り』のためにも日々駆け回っている。只でさえ忙しいのだからと、彼女の負担を減らすためにも報告書の提出時にはミスのないよう注意深く確認し、送られてくる依頼書だけでなく請求書や明細書にもきちんと目を通すようメンバーに徹底させている。クロウは努力しているようだがイツキやノアにはなかなか難しいようで、ルージュは言わずもがなのため、なんとか体裁を取りまとめるのは結局リーダーの自分の役割だ。
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    佳芙司(kafukafuji)

    DONEこちらのアンケート結果【https://twitter.com/kafukafuji/status/1522554377923620865?s=21&t=2GIpbQxVqsX9lfYCnepBbA】
    「わざと見せつける」を元にして書いたグラエマ+ヴィクトル。
    本人らは故意とは思ってないけど周囲がそう感じる時あるよね、と。
    several coats of nail polish.(グラエマ) 発売当時、雑誌でも取り上げられて話題になったカラフルマニュキアのキャッチコピーは『あなたのココロで染まる指先。』だったかしらね、とヴィクトルは記憶を辿った。持ち主の心が宿るという水晶鏡片を砕いて魔術で加工したものを染料として使っているとかいないとか。
    「アンタも塗ってみてよ。何色になるのか見てみたいわ」
     カジノの営業時間前に買い物に行ったついでに、つい盛り上がって一緒に買おうとなったカラフルマニキュア。そのままだと一見ラメ入りの青紫系統のマニキュアで、星空のように見えるのに、ひとたび爪に乗せると色が変わるのだから不思議だ。
     鼻歌交じりにボトルを開けて小指から塗り始めながらヴィクトルは自分の爪先がオレンジ色に染まっていくのをまじまじと見た。なるほど今はこの気分らしい、今日のネクタイはこの色にあわせてみようかしら、等々と考えて手際良く片手を塗り終えた。
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