本丸に顕現したら二振り目だったのは構わないが一振り目の長谷部が主に甘え上手すぎるだろう!?俺はこの本丸にとって二振り目のへし切長谷部だ。
当然に習合か鍛結、あるいは解刀されるものだと思ったが、主は俺を二振り目として本丸に置くことを選んだ。
一振り目とはわずかな顕現の時間差とはいえ、身に余る光栄であるとは思う。
だが、しかし。これはどうだ。
「主♡」
己と同じとは思えぬ甘い声で主を呼んで、腰を屈めて上目遣いに主に目配せするのはへし切長谷部。
そう、一振り目のへし切長谷部だ。
主は執務中でお忙しいというのに、手を止めて一振り目の方を向く。
「長谷部、撫でてもいい?」
「はい♡もちろんです♡」
一振り目がうれしそうに頬を緩めて頭を差し出すと、主も鈍色の髪を撫でながら目を細める。
出来上がったばかりの政府への報告書に主の捺印を求めようとしていた俺は、その様子をただ見ているだけだ。
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