夜の繁華街に学生服の少年が一人、立ち尽くしていた。
その少年に半田が声を掛けたのは、かつての“彼”に似ていたからだろう。パトロールの最中とはいえ、吸血鬼ではない相手に職務質問することはあまりない。
「君は高校生だな。こんな時間に何をしている?」
夜でも目立つ銀髪の少年は声を掛けた途端にびくりとあからさまに身体を震わせた。
「別に怖がらせようとしているわけではないんだ。もうすぐ夜の十二時になる。高校生が外出していい時間ではない。分かるだろう?」
できる限り警察官らしく諭すように半田は言った。かつて若かった頃の自分だったならば厳しく一喝していたことだろう。それが効果的でないことが分かるくらいには歳と経験を重ねた。
黙ったまま少年はうなずく。
「このままだと、君を深夜徘徊で補導しないといけなくなる。早く家に帰りなさい」
「吸対の人ですよね……?」
「そうだ。吸血鬼対策課でも警察官だからな。非行少年を補導する権限はある」
実際には少年課に一報を入れて引き継ぐだけだが。権限があるのは嘘ではない。
「俺、なんかよく分からないまま気づいたらここにいて……街の様子とかも全然変わってて……どうしたらいいか分からなくて……!」
泣きそうな顔で訴える少年の顔はあまりにも昔の“彼”に瓜二つで、心臓が大きく脈打つ。動揺を悟られないように半田は落ち着いた声で言った。
「その制服からすると新横第一高校の生徒だな?生徒証を持っているだろう。見せなさい」
少年は持っていたカバン――家庭科の時間に作ったような子供っぽい柄のナップザックから生徒証を取り出した。
そこに記された氏名と生年月日を見た瞬間、半田は自分の目を疑った。
そんなことがあるはずはない。だがしかし、この少年は明らかに――
誤字脱字その他おかしいところあったらこっそり教えてください…