ロナルド君お誕生日の反転半ロナ「あら、お客様ですの?ごめんなさい…今日は事務所はお休みで…半田さん!?」
「ロナルド君、突然押しかけてすまない…どうしても今日渡したいものがあって」
ドラルクはため息をつきたくなった。
めずらしくドアから事務所に来たかと思えば、入り口でもだもだとしている半田とロナルドの様子を見に来てみれば、この調子だ。
若造は誕生日にもかかわらず吸血蝶の出現でお嬢様になっているし、そこに素直な半田君がやってきた。そして甘酸っぱい雰囲気を醸し出している。
普段からなんだかんだと騒いでいながら相手を目で追っている二人だ。互いへの気持ちに気付いていないのは本人達だけなのに、反転すると二人していきなり意識し出すところが正直おかしくて面白い。
「誕生日おめでとう。ケーキを作って来たのだが、受け取ってもらえるだろうか?」
「まあ、うれしい!半田さんの作るケーキとっても好きですわ」
おっとこれは意外な展開だ。若者達の青春に水を差してはいけない。ドラルクは用意していた誕生日ケーキを冷蔵庫の一番奥にしまい込むことに決めた。
「これからおディナーをいただきますの。半田さんもご一緒してくださるのでしょう?」
「しかし、せっかくの家族団欒に僕が混ざるわけには…」
正確には同居人だけど。使い魔のジョンは本当に家族だし、色々気に食わないことはありつつ歳の離れた人間と我ながらよく暮らしているとは思っている。家族と言われて、悪い気はしない。
「うふふ、半田さんも家族になってくださってもよくってよ?」
そう言って微笑むロナルドの頬はほんのり赤い。向かいの半田は耳まで真っ赤だ。
「ロナルド君には、本当に勝てないなぁ」
眉尻を下げて半田は降参宣言をした。
いつもの素直になれない彼が見たら地団駄を踏んで悔しがってセロリを振りまわしてロナルド君を追いかけることだろう。動画に撮っておけばよかった。
「夕食ができたよ。半田君もいらっしゃい」
「今行きますわ。ねえ、半田さん?」
ひと声かけるとドラルクはキッチンへと戻り、出来上がった料理を食卓へと運んでいく。
今日のメニューは若造の好きなから揚げだ。オシャレなディナーではないけれど、そこは我慢してもらおう。
「ジョン、ケーキは明日でもいいかい?せっかくの誕生日だからね。夕食のあとは若い二人だけにしてあげよう」
「ヌン、ヌンヌヌヌヌヌヌヌヌヌンヌヌヌイ」
「そうかい。お散歩の途中でカフェに寄るのもいいね」
「ヌン!」
互いに微笑み合いながら居住スペースに入ってくる半田とロナルドの手はしっかりと繋がれていた。“家族”が増える日も近いかもしれない。