褒めてやろうか?「褒めてあげようか?」
感情を極力抑えようと努めている静かな声と、隈を纏う鋭い双眸。
アオガミにとっては一瞬であったが、少年にとっては長い夜であったと直ぐに判断が出来た。しかし、アオガミは赦しを請わずに少年の隈へと指先を伸ばす。少年が避ける気配はない。
「君が無事で良かった」
揺らいだ緑灰色の瞳から零れた涙を指先で掬いながら、アオガミはやはり謝らない。少年が望む言葉は紡がずに、震える半身の体に手を伸ばした。
「本当に、良かった」
「……頑固者」
自身の背中に回される細い両腕。
触れる暖かさに今度はアオガミが身を震わせ、何があっても彼だけは守り抜くのだと、彼は幾度目の決意を固めるのであった。
それが、少年を傷つけるとしても。
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