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    りま!

    @ririmama_1101

    たまに絵とか小説更新します。
    主にらくがきなので薄ぼんやり(?)見てください。
    幻覚、存在しない記憶ばっかりです。

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    りま!

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    宗戴です。
    宗雲=叢雲の設定で書いています。
    ふせにも上げましたがこちらにも。

    #宗戴

    ゆりかご「どうしてあなたがいるんですか」
     戴天がエージェントから呼び出しがあった場所へ行くと、そこには宗雲が立っていた。場所は商業地区なので、彼がいること自体には何も不思議なことはない。今が調査のための待ち合わせ場所でなければ。
    「エージェントから話があったから来ただけだ」
     どういうことだ、とエージェントに連絡しようとした戴天のライダーフォンが着信を告げる。
    「はい、どうしましたか?」
    「すみません、戴天さん。もう場所には着きましたか?」
    「ええ。今着きました…しかし何故彼がここに?」
    「彼?…あぁ宗雲さんですか?無事に合流できたみたいで良かったです。実はカオストーンを持っていると思われる方が高塔エンタープライズの社員さんで」
    「それは知っています。だから私を呼びましたよね?」
    「はい。その話をたまたま颯さんにお話したら、ウィズダムの…宗雲さんのお客様だったそうで。カオスワールドを生み出した原因が分からない以上、お仕事、プライベートどちらの線も疑ってかかるべきかと思って」
    「なるほど。分かりました。それで?あなたは来ないのですか?」
    「行こうと思ったのですが、宗雲さんにお話した時に、2人いるなら充分だと言われまして…そちらに行った方がいいですか?」
    「……。いえ、今から移動となるとお時間もかかりますし。今回は結構ですよ。ただ、今後は出来れば同行者が一緒なら事前に教えていただきたいですね」
    「すみません、気をつけます」
    「それでは、調査に行って参ります」
    「はい、お気をつけて」
     通話を終了させると、はぁ…とひとつため息が漏れる。チラリと隣に立つ男の顔を見ると、じっとこちらを見つめる瞳と視線がかち合う。
    「誰か一緒になることは知っていたが、まさかお前とはな」
    「それはこちらの台詞です。あなたが来ると分かっていれば……いえ、今更言っても遅いですね。今回の調査の内容は把握していますか?」
    「あぁ。俺のお客様だとは聞いている」
    「さらに彼女は我が社の社員です」
    「なるほど、それでお前がいるのか。それにしても……」
    「どうしました?」
    「……お前少し痩せたか?」
     その言葉に失敗した、と戴天は顔に出さずに今日選んだシンプルなシャツにタイトなパンツ姿を後悔した。いつものスーツや着物はできるだけ体の線が出ないようにしている。自分でも分かっているのだ、食事を疎かにするとすぐに痩せてしまう。特に最近は案件が立て込んでおり、食事を疎かにすることが多かった。それでも目に見えて分かるのは雨竜くらいかと思っていたが、目ざといこの男には分かってしまったようだった。
    「あなたには関係ありませんよ。さぁ行きましょう」
     できるだけ会話を避けるように、近くで禍々しく開いているカオスワールドの扉へ先に歩き出す。宗雲は何か言いかけるように口を開き、結局何も言わずに後に続きカオスワールドへ足を踏み入れた。

     カオスワールドに入った途端、辺りは薄暗く、心地よいオルゴールの音が響き、床はふかふかとしたシーツが敷き詰められていた。
    「これは……」
    「異様な空間だな。まるでこの空間全部がゆりかごみたいだ」
     床ではあるものの、寝転がるとすぐに心地よい睡眠に誘われそうになるくらい居心地が良いと感じる世界。しかし2人に寝ている時間は無い。特に戴天にとっては宗雲とはできる限り時間を共にしたくなかった。
    「さぁカオスワールドの主を探しに行きましょう」
     戴天が一歩踏み出すと、ふかふかとした床はとても歩きにくかった。足を踏み出すたびに足が沈み、バランスを保つのが難しい。
    「ッ!」
    「おっ…と。大丈夫か?」
     バランスを崩した戴天の腰を宗雲が支える。人ひとり分離れていた距離が一気に縮まり、宗雲が纏う香水の匂いがほのかに香る。
    「大丈夫です…!離してください」
     宗雲が支えていた手を離す。なんとなく支えられていた腰が熱を持った気がした。
    「それにしても、細い。ちゃんと食事は摂れているのか?最近ろくに寝てないんじゃないか?」
    「またその話ですか。あなたには関係ないと言っている。体調は万全です」
    「お前は昔から無理ばかりする。もっと自分を大切に…」
     宗雲からの説教が始まる…と身構えた瞬間、向こうから人影が歩いてくる。
    「えっ…宗雲様…?社長…?」
     カオスワールドの主が現れたようだ。思いもよらない2人の登場に、カオスワールドの主の瞳が揺れた。

     結局、カオスワールドの主は仕事について悩みを持っていたようで、戴天の説得に応じてカオスワールドから出ることができた。申し訳ございませんでしたと頭を下げる彼女に対して会社として配慮ができていなかったことを詫び、さらに宗雲が接客用の笑顔を持ってラウンジへ遊びに来るように言ったところで迎えのタクシーが到着し、2人で見送った。
    「なんだか凄く疲れました」
    「俺と一緒だからか?」
    「そうですね」
    「……。ただ心配しているだけなんだがな」
    「画蛇添足。あなたに心配されずとも私は大丈夫です」
    「そういうところが本当に…お前は…」
    「さぁ。終わりましたので帰ります。報告は私からしておきますので。では」
    「待て」
     帰ろうと踵を返した戴天の腕を宗雲が掴む。まだ何か?と問おうと振り返った瞬間、唇が重なる。驚いて固まる戴天を抱きしめて、宗雲が囁く。
    「よく眠れるおまじないだ」
     それはカオスアカデミーで一緒に過ごしていた頃に、叢雲が眠れずにいる戴天によくしていたもので。抱き締める腕の温もりも囁く声も台詞もあの頃と寸分違わない。懐かしさと共に溢れるあの頃の幸せだった記憶。

    「迎えの車がきたな。気をつけて帰れ」
    「……はい。お疲れ様でした」
     名残惜しそうに片側に下ろした髪をさらりと撫でて、宗雲が背を向けて歩き出す。引き止めることはもちろんしない。揺り起こされた記憶を無理矢理押し留めて、戴天は迎えの車に乗り込む。
     本当はすぐにでもエージェントに報告を送るべきだ、そう頭では分かっていても戴天はそうしなかった。
    (ずるい人だ……)
    そう心で呟き、目を閉じる。今だけはあの人の温もりを感じていたい、そう思ったから。

    end
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