無題つぅ、つぅ、と肌を撫でる舌が喉仏を通り、首筋を這って胸元を辿る。胸の突起を丹念に舐め回されもう片方の突起をキュッと抓られると「ぁっ」と声が出た。刹那、腹の奥深くがじんわりと丸く熱くなるのがわかる。覆い被さるココが咥え摘んだまま視線だけを寄越す。しっとりと濡れた目で俺を見つめるその顔を鋭く見据えるけれど、限界はすぐそばにあった。ほんのひとひらの余裕を与えられた俺はその隙に小さく息を吸い直す。呼吸音すら気を抜いたら喘ぎになりそうなのを必死に耐えていると、腹の奥深くがきゅんと締まる。そのタイミングをココは見計らっていたとばかりに、また吸って抓る。もう我慢の我慢が限界を越えようとしている。
「コ、コっ!」
汗ばんだ手で握っていたワイシャツの袖口を手放しココの頭を遠ざけようとする。が、奴の口には腫れぼったい乳首がある。ココを遠ざけようとすればするほど引っ張られ、俺は痛みと快感の狭間を喘ぐ。空中を彷徨う俺の手を絡めとってそのままシーツの上で縫いとめられると、ちゅぷっ、とたっぷりと濡れた乳首が露になった。
「イヌピーがこんなに弱いって誰も知らねぇんだよな。」
「ッ!」
俺を押さえたまま、ココは額に唇を寄せる。微かなリップ音も、触れ合った体温も同じくらいに熱い。べたべたに汚れたスーツはいい加減脱ぎたかったし、風呂にも入りたい。
「少しくらいは我慢できねぇのかっ」
「それ、イヌピーが言う?」
ぐりっ、と腹の方を擦られる。そんなことをされなくてもそこがどうなっているかなどわかっている。ちゅぅちゅぅとわざと音をたてて吸い上げられる乳首はひりついて、声を噛み殺しきれない。
「っぁ、ンっ」
「本当のイヌピーは可愛いなんて知らない。俺以外は、な。」
見据えるココにぞくりと心臓が嫌な震え方をする。まるでそれを見計らっていたみたいなタイミングで両足を持ち上げ、膝裏に手を入れたココに俺は瞬間考えるのをやめた。こんな風にねちっこく、責めてくるのは俺に非があるからだ。理由は、多分アレだろう。
「俺が勝手に出てったの、怒ってんのか?」
数時間前、待機を命じられていたのを破って俺は特攻した。待つだけなんてガラじゃないと焦れた俺をココは怒っている。ケガもなく万事つつがなく済んだことをただの結果論とココが思っていると、その目を見れば一目瞭然だった。
「わかってんのにやったのか?マジで怒るよ。」
「もう怒ってんじゃねぇか...」
緊張感を解いて四肢を弛緩させると一番柔らかい場所をココが侵入するのがわかる。苦しくて息苦しいのは一瞬、その一瞬が過ぎれば後はココの思うがままに喘がされる。今日は仕方ないーーーと、諦めたのが悪かったのかもしれない。
「諦めモードでなぁなぁに済ませるほど今日の俺はやさしくないよ。」
鋭く睨み見据えるココの、らしくないキレ顔も悪くねぇなと思ったことは言わずにおいた。