ロスト・スプリング「……………落ちた」
六畳一間の部屋の中、スマホの画面に写し出された数字の羅列にネロが探していたものはなかった。
◆ロスト・スプリング
見下ろした校庭には、最後の会話を惜しむようにいつまでも生徒たちが残っている。桜が舞うその景色にネロはため息をついた。
頬杖をつきながら見るともなしにその姿を眺めていると、後ろから肩を叩かれる。
「……ブラッドか」
「ようやくこんなところからおさらばだってのによ、辛気くせぇ顔してんなぁ」
隣に並んで肩をぶつけられる。それでも反応しないネロにブラッドリーはつまらなそうな顔をする。
「まだ落ち込んでんのかぁ?」
「…そりゃあ、あんだけファウストに教えてもらっといて落ちるのは、申し訳ねぇつーか…」
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