嘘から出た何とやら 若い魔法使いたちが連れ立ってネロがいる台所にやってきたのは、任務も課題もない麗らかな昼下がりのことだった。
何やら楽しそうなクロエとルチルの後から、ヒースクリフが遠慮がちに顔を覗かせている。
「ネロ。ちょっと聞きたいことがあって来たんだけど、今大丈夫かな?」
「ああ、ちょうどスコーン焼きあがったところだから手はあいてるよ」
「道理でいい匂いがすると思いました。ネロさんが作ってくれるお菓子はどれもおいしいから、今から食べるのが楽しみです!」
「はは、そりゃどうも。よかったら試食につきあってくれないか?話があるなら食べながら聞くからさ」
「やった!」
この三人も気が付いたら随分と仲良くなったよな、とネロは微笑ましくなって目を細めた。
オーブンから取り出したばかりのスコーンの試食をお願いすると、三人の瞳がぱっと嬉しそうに輝く。
ルチルが里帰りした際にもらってきたという紅茶を持ってきてくれたので、クロテッドクリームと数種類のジャムを添えて皿に盛りつけて食堂に並べ、少し早めのお茶の時間となった。
「おいしいです!特に苺のジャムとクロテッドクリームを一緒につけて食べるとすっごくおいしい!」
「俺は林檎のジャムも好きだな。ルチルが持ってきてくれた紅茶ともよく合うし」
「マーマレードもいいね。ちょっと苦くてアクセントになるし、色がとっても綺麗。……ネロ、もう一個食べてもいいかな?他の人の分なくなっちゃう?」
「まだまだいっぱいあるから大丈夫だよ。ただし、夕飯が食べられなくなるのは勘弁してくれよ」
「わ、わかってるよ!」
「私ももう1個ほしいです!」
「あ、じゃあ俺もいい?」
「いいよ。一人一個ずつな」
口々に褒めながら次々と食べてくれる姿は嬉しいし胸が暖かくなる。
彼らより年少のリケやミチルがいる手前ではあからさまに甘やかしたりはしないが、やはり若い魔法使いたちが年相応にはしゃいでいる姿はかわいいものだ。
スコーンを各自に追加してやりながら、そういえば俺に何か用があるんじゃなかったのか、と聞くと、そうだった!とクロエが瞬きした。
「あのね、今俺が作っている服のことで聞きたいことがあったんだ。今までいろんな場所やシチュエーションに合わせてデザインしてきたけど、それ以外の要素も取り入れられないかなって思ってて」
「他の要素?」
「うん、俺たちは賢者の魔法使いだから、服にも何か賢者様がいた世界の決まりや流行りを取り入れたりできないかなって。それで賢者様がいる世界のことをいろいろ聞いたら、シミラールックっていうのを教えてもらったんだ」
聞いたことのない単語にそれはなんだと尋ねると、友人や恋人同士が、服装の系統や色、柄、素材等を揃えてさりげない統一感を出すことだという。
それは揃いの制服を着ることと何か違うのだろうか、まあクロエがはしゃいでいることからして違うんだろうな……と思いながら続きを促した。
「特に祭事用の服は国ごとに系統を揃えることが多いけど、それと並行して国が違っても仲がいい人たちの服に、よく見たらわかるような共通点を作るのも面白そうだなって思ったんだ!シルエットを似せたり、小物をお揃いにしたりね」
「俺たち三人でも何か揃えようかって話していたところだったんだよ」
「ミチルとリケも、お揃いのロゼットがつけられたらいいね、って嬉しそうでした!」
「へえ、俺は服のことは詳しくないが、いいんじゃないか?みんな喜びそうだ」
いつも服を作ってくれるだけで助かっているのにその先も考えているなんてすごいな、と言うと、クロエは面映ゆそうに微笑んだ。
その様子を見ていたヒースクリフとルチルも、自分のことのように嬉しそうな顔をしている。
賑やかで穏やかな時間だった。
クロエの服への情熱には本当に頭が下がるし、リケとミチルがお揃いではしゃいでいる姿も可愛いだろうし是非見たい。
微笑ましく思いながらそんなことを考えていたので、次のクロエの言葉に咄嗟に対応できなかったのだ。
「それでね、ネロとブラッドリーも仲がいいから、お揃いにしていいか聞きたくて!」
「は?!いやいやいやいや何で??俺がブラッド……リーくんと仲いいとかそんなことないけど全然」
思いもよらないことを言われたせいで年長者としての余裕が消し飛び、完全に素の言葉を返してしまったが三人は気にしていないようだ。
なぜ急にそんなことを思いついたのだろう。昨夜ブラッドリーの部屋で晩酌していたのがばれたのか、いやでも約束した時も部屋に行く時も周囲には誰もいなかったし……ほどほどで切り上げるはずがうっかり寝落ちして、朝食を作る前に慌てて自分の部屋に戻ったところをクロエに見られていたのか?
ぐるぐる考えながら誤魔化そうとするネロに、若い魔法使いたちは不思議そうな顔をした。
「でも、ネロってブラッドリーには気安いよね。南の島でも怒ったりしてたし……」
「私もミスラさんから、ブラッドリーさんを呼ぼうとしてアルシムしたら、よくネロさんもくっついてくるって聞きました!」
「この前その逆は見た!北の魔法使いのブラッドリーが首根っこを掴まれてるって、それだけで大分仲がいいんだなって思ったよ」
「あ、あれはあいつがつまみ食いしたから」
「でもブラッドリー、賢者様やカナリアさんが当番の時はそんなにつまみ食いしてないんじゃないかな。たまに俺が作る時も、つまみ食いされたことはないよ」
「うん、ネロがブラッドリーに怒ってるところはよく見るけど、他の人が作ってる時はあんまりない気がする」
「そうなのか?!いや、たまたま腹が減ってなかっただけじゃねえかな……」
「たくさんつまみ食いされるとみんなの分が減って困っちゃいますけど、ブラッドリーさん、それだけネロさんの料理が大好きってことですね!」
「ネロが作ったフライドチキンを食べてる時のブラッドリーってとっても幸せそうだもんね!」
「確かに、ブラッドリーって普段はちょっと怖いけど、ネロの料理を食べている時は嬉しそうだから話しかけやすいかも」
「それわかる!」
クロエとルチルと一緒に盛り上がるヒースクリフが見れて嬉しい。これが別の話題だったらもっと嬉しかったのにとネロは思った。
若い彼らの一度盛り上がった勢いを止めるのはネロ一人では難しく、次から次へと仲が良いと思った理由を聞かされて、羞恥で穴があったら入りたくなってくる。
三人には何も他意はないことはわかっているが、大好きだの幸せだの言われると、本人に言われたわけではないのに心の奥がざわついた。
かつてのブラッドリーはネロにとって相棒であると同時に師であり、仲間であり、悪友であり、時には兄のような親のような存在で、ありとあらゆる感情を向ける先だった。
どうしたものか、その中には恋情も混ざってはいたのだが、終ぞ伝えたことはない。
それは北の突き刺すような吹雪の中に置いてきたはずだったから、こんな穏やかな場所で思い起こしてしまうとどうにも収まりが悪いのだった。
「もしかして、お二人は魔法舎に来る前からお知り合いだったんですか?」
「俺とあいつが?いや全然?そんなことないし全くもって初対面だったぜ本当に。いやー、まさか死の盗賊団の頭領と会うなんてすごくびっくりしたな!」
「まあ!じゃあ、ここで出会ったばかりでそんなに仲良くなったんですね!素敵です!」
「そうくるか~」
とっても相性がいいんですね!とはしゃぐルチルの隣では、スコーンを食べ終えた皿をヒースクリフが片付け、クロエが衣装案のラフ絵を広げている。
ネロとブラッドリーをモデルに描かれたそれを指し示しながら、クロエは一生懸命に説明してくれた。
「次の衣装は全員、黒をベースにした衣装にする予定なんだ。二人のものは生地を揃えて、アクセントに対になる銀の装飾をつけようと思ってて」
「銀細工の制作は、俺も手伝わせてもらう予定なんだ」
「ヒースはとっても手先が器用だし、センスもいいからどんな仕上がりになるか楽しみだな!」
「ありがとう。クロエにはいつもお世話になっているし、俺も関われて嬉しいよ」
ブラッドリーと対の装飾だなんて考えただけで気恥ずかしいのでどうあっても避けたいのだが、楽しそうな姿に水を差す方が野暮な気がしてきて、何と言って止めればいいのかどんどんわからなくなってくる。
あと昔こっそりブラッドリーの瞳と同じ色のピアスをつけていたこともあったなと思い出し、うっかり死にそうになった。
「あー、二人の気持ちは嬉しいんだけど、俺とブラッドは別に、」
「俺様がなんだって?」
「あ、ブラッドリー!」
「うまそうなもんがあるじゃねぇか」
後ろから見慣れた腕が伸びて、ネロの皿にのっていたスコーンを攫って行く。
慌てて振り向くと案の定、大きく口を開けて手掴みのスコーンに齧り付くブラッドリーがいた。
目の前のことにいっぱいいっぱいになって、近づいていた気配と足音に気づかなかったのは不覚としか言いようがない。
「あ、おいてめぇ何勝手に食ってんだ!」
「西の国まで飛ばされて昼飯食えてねぇから腹減ってんだよ、別にいいだろおまえの手も止まってたし」
「そうじゃねぇ、オーブンに焼きたてのやつがまだあんだよ!」
「これも十分美味いって。あと足りねぇから肉焼いてくれ。確か保冷庫に鶏肉あっただろ」
「あれは今日の晩飯用だからだめだ!」
「なんだよケチくせぇな」
「あ、ブラッドリーさんこちらもよかったらどうぞ」
「紅茶か。気が利くな、ありがとよ」
いつの間にかネロの隣の椅子に座って図々しい要求をしてきたブラッドリーを叱るも、気にせず悠然とルチルが入れてくれた紅茶を飲んでいる。
空腹なのは事実のようだが、どうせ食べるなら焼き上がりの一番おいしいものを食べてほしかったのに。
それに今日のスコーンは、ジャムとクロテッドクリームをつけて食べることを前提に作っているのだ。
どう言おうか悶々としているネロをよそに、ある程度空腹を満たしたブラッドリーは机上に並べられた衣装案のラフ絵に目を止めたようだった。
「これは次の任務の衣装か?」
「うん、まだデザインを練っている段階だけどね。そうだ、ブラッドリーに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「おう、なんだ」
止める間もなく、クロエから先ほどの説明が繰り返される。
仲良し云々にどんな反応をするのかと戦々恐々とするネロに対して、ブラッドリーはひとしきりラフ絵を見て気に入ったようだった。
「好きにしろ。おまえのセンスは信用してるからな。どんなもんになっても俺様が着こなしてやるさ」
「やった、ありがとう!……ネロはどうかな、やっぱりだめ?」
「……いや、いいよ」
クロエの大きな菫色の瞳にまっすぐ見つめられ、ネロは折れた。
鷹揚と構えるブラッドリーと比べて、先ほどまでの自分の態度があまりにも大人げなかった気がしてくる。
よかったね、これから忙しくなるから頑張ろう!と喜び合う三人を見て、これでよかったのだと自分に言い聞かせた。
もともとクロエのデザインに不満があった訳ではないのだ。ただちょっと羞恥心で死にかけるだけで。
そんなネロの心情がわかっているらしく、にやにやするブラッドリーが癪に障ったので、嫌がらせも込みで残っていたスコーンにたっぷりのクロテッドクリームと苺のジャムをのせて差し出した。
ブラッドリーは何か言いたそうに片眉をあげたが、特に声に出すこともなくナイフとフォークで切り分けて口に運ぶ。
「美味い?」
「美味いけど甘ぇ」
「これが本来の食べ方なんだよ」
「塩気があるもんが食いたくなるな。フライドチキン揚げてくれ」
「さっきの話聞いてたか?晩飯用だからだめだっつっただろ」
「なんだよ、つれねぇな。まだ照れてんのか?」
「ば、照れてなんかねぇよ!……ああもう、ついてる」
ついいつもの癖でブラッドリーの顔についたスコーンの屑を拭ってやっていると、いつの間にかきらきらした三対の目がこちらを見つめていた。
すぐに手を離したが、時すでに遅し。横からブラッドリーの呆れたような視線がつきささってくる。
「やっぱりお二人は仲がいいんですね!」
「そう見えるか?」
「いやそんなことないって!」
ルチルの言葉に咄嗟に答えるも、ブラッドリーとちょうど被ってかき消されてしまった。
腹が立って机の下で横にある足を蹴ると、フンと鼻で笑ってブラッドリーが身を寄せてくる。
「そうやってむきになって否定するからこいつらも気になるんだろ?俺様がうまい躱し方を教えてやるから見てろよ」
耳元で囁かれた声に反駁する間もなく、ブラッドリーは三人に向かい合うと泰然と足を組む。
仕方がないのでお手並みを拝見してやろうと、ネロは様子を見守ることにした。
「今日は随分と好奇心に溢れてるみたいだな?聞きたいことがあるなら、特別に聞いてやってもいいぜ」
「あのね、俺は聞きたいことがあるっていうか、ずっと不思議だなって思ってて。ブラッドリーとネロって、正反対に見えて時々とても近くにも見えるし、全然違う場面で同じことを言うことがあるよね。そういう感じがいいなって思って、二人のデザインを考えたくなったんだ」
「創作意欲が湧くってやつか。そいつは光栄だな」
「確かに、東と北で任務に行くのはそんなに多くないけど、戦闘の時もすごく息があった動きをしているよね。俺はシノとそこまで息が合わないこともあるから、ちょっと羨ましいな……」
「おまえらには圧倒的に経験と場数が足りねえからな。他に必要なこともたくさんあるが、そのあたりは呪い屋がどうこうするだろ。まあ、俺たちの連携と比べると発展途上なのはしょうがねぇさ。関係の度合いが違うからな」
「まあ、ではお二人はどういう関係なんですか?」
クロエとルチルは身を乗り出して、ヒースクリフも控えめながら抑えきれない興味を持って、答えを待っている。
にやりと唇の端を引き上げるブラッドリーを見て、嫌な予感がした。こういう顔をする時はろくなことになった試しがない。
「あのなぁ、そういうことをわざわざ聞くのは野暮ってもんだ」
ぐっとネロの腰に手が回され、隣に引き寄せられた。
近くなる体温と嗅ぎなれた香水に固まるネロの前で、三人が大きく目を見開いている。
こめかみあたりに、そっと温かくて柔らかいものが触れた。
「ま、こういうこった。わかったら退散しな。余計な好奇心は身を滅ぼすぜ?」
*****
顔を赤くした若い魔法使いたちが慌てて立ち去った後、負けず劣らず顔を赤くしたネロは立ち上がってブラッドリーの胸倉を掴み上げていた。
「おいブラッド!てめぇ何やってんだよ!」
「若いのがいなくなった瞬間に本性出すなよ、おっかねぇな」
「誰のせいだよ!」
「ああ?俺のせいって言うのかよ。ちゃんとてめぇの過去は出さずに誤魔化してやっただろうが」
「そ、れはそうだけど!だからってあんな嘘つかなくてもよかっただろ!」
まくしたてるネロを、椅子に座ったままのブラッドリーはどこ吹く風で見上げてくる。
こちらを見定めるような瞳が、ネロの奥底で消えない感情を見透かしているようで怯みそうになるが、何とか気を奮い立たせて睨みつけた。
「嘘なんざついてねぇだろ。俺はただ、野暮なことはやめろって言っただけだ」
「それにしたって、あんなことしたら勘違いするに決まってんだろうが!」
「勘違いねぇ。あいつらがどんな風に勘違いしたって?」
「それはその……こ、恋人だって勘違いしたかもしれねぇだろ」
具体的に口にするのがどうにも気恥ずかしく、つい目をそらしてしまう。
その隙に胸倉を掴んでいた手をはずしたブラッドリーは、立ち上がると逆にその手を引いてきた。
たたらを踏んだネロの顎をもう片方の手で掴み、強い光を宿した瞳が顔を覗き込んでくる。
「勘違いじゃなかったらいいのかよ」
「は?何言って、」
「本当にすりゃ文句はねぇな?」
「……ふざけるのもいい加減にしろって」
「ふざけてねぇよ、てめぇもわかってんだろ」
すがめられたマラヤガーネットのような瞳を至近距離で見て、少し動いただけで唇が触れそうなほど近くなっていることに気が付き、慌てて自由な方の手で厚い胸板を押し返した。
少し遅れてどんどん顔が熱くなってくる。
咄嗟にふざけるなとは言ったが、ブラッドリーが真剣に言っていることがわかってしまったからだった。
その瞳も、触れる手の熱さからも、びりびりとブラッドリーの本気が伝わってくる。
同時に、ネロの思いも伝わってしまっていることを何となく悟った。
「ネロ」
低い声が名前を呼ぶ。
それだけで体の芯に響いて、近づく唇を受け入れるように目を伏せてしまう。
そうして視線がぼんやりと足元と床を漂ったので、気づいてしまった。
ここはどこだった?真昼間の食堂では?こんないつ誰が来るかもわからない場所で自分たちは一体何をしようとしているのか?
「ちょっっと待った!今はだめだろ!ここだと誰が来るかもわかんねぇし」
「ああ?これ以上待たせる気かよ」
「待たせるって何だよ!いやそもそも何で今?!タイミングとか場所とかもっとあっただろ他にも!」
「うるせぇ俺だって本当は昨日の夜に言うつもりだったんだよ!ぱかぱかワイン空けて早々に酔っぱらったのはてめぇだろうが!」
「あ、だからあんなにいいボトルがいくつもあったのか。珍しいからついテンション上がって飲んじまったんだよなー」
「お気楽に言いやがって、こっちは散々だったからな?!」
「いやー、悪い悪い」
「謝罪が軽いんだよ!」
昨夜のことは正直なところ詳しくは覚えていないが、酒も自作のつまみも美味かったので気分よく飲み進めたらいつの間にか朝だったのだ。
あからさまに機嫌を損ねたブラッドリーは、恨みがましくネロを一瞥すると素早く呪文を唱えた。
「アドノポテンスム」
ぎゅん、と周囲が歪んで、次の瞬間には見慣れたブラッドリーの部屋に二人して立っていた。
初めて見たが、ミスラのように乱発はできなくても、近距離であれば自分のテリトリーに転移することはできるらしい。
驚いて瞬きをするネロの背を大きな手が引き寄せて、こつりと額と額がくっつけられる。
至近距離で見る拗ねた顔が思いのほか子供っぽいのが愛しくなって、ネロはそっとブラッドリーの頬を撫でた。
「これで文句ないだろ」
「ああ」
「じゃあ観念して昨日の分まで体で支払えよ」
仮にも想いを通わせた直後とは思えないような語気の強い言葉とは裏腹に、目を閉じると優しく唇が降ってくる。
そっとねじ込まれたぶ厚い舌は、かすかに苺ジャムの味がした。