CPP2期第12話2期 12話
・なしなさんポイピク 手紙参照
atmがくしゃくしゃに、そして所々文字の滲むパリンからの手紙をウヅゥに見せる。
「カキンカキン…?」
atmが心配そうに顔を曇らせウヅゥの顔を覗き込む。
「atmごめんね、私ずっとあなたにも酷いことをさせてたのね。本当の自分のこと、大切な妹のパリンのことさえ忘れて。」
全部の記憶が戻った。思い出した。私は…光のプリキュアだったのだ。
でも弱くて大切なものをなにも守ることができなくて、それで、堕ちた。
なんて皮肉なことだろうあの時クレソンに見せた悪夢は全て本当は自分のものだった。
「パリン…パリン…パリン」
たくさんたくさん、今、どこにもいない妹の名前を呼ぶ。
私が記憶を取り戻したきっかけをパリンは作った。きっとそれをあの王様は許さない。
パリンが今どんな状況なのか私にはわからない。もう二度と会えないかもしれない。それでも、
「ここだフガ!!!」
ドカーンッ
「ほんとにここがフガを助けてくれた人がいるの場所?」
「そうだフガ!!」
この暗く寂れた静かな城に似つかわしくない大きな音と声たちが部屋に響く。
フガが案内するまま、通路を進む。そして重く厚いドアを開けた先に目を向ける。
そこにはその長く美しい水色の髪を常のようにツインテールにすることなくただ下ろし涙を流して冷たい地面に座り込むウヅゥの姿。
「カキン!!」
atmが招かれぬ侵入者を威嚇するようにウヅゥの前にでる。
「ウヅゥ?」
「錠前…さん……」
「ウヅゥ!あの時フガを助けてくれてありがとうなんだフガ!」
フガが初めてET星人に襲われた時。ボロボロになって消えそうなその最後の光を守ってくれた誰か。それはウヅゥだった。
「ありがとうございますなんだポコ!」
「えっと…私もありがとうございます!」
フガに続いてポコとセレナーデもウヅゥにお礼の言葉を口にする。
ありがとうなんて言われる価値私にはないのにこの子達は……。
「そっかフガも全部思い出したんですね。良かったわ……本当に。」
これまで戦っていた時に見せた狂気の笑みとは違うウヅゥの本当の優しい笑顔を向ける。
「ウヅゥ。ワタシ達と一緒に戦ってほしいの!」
そう錠前がウヅゥに声をかける。
ウヅゥが驚きに1度目を大きくする。そしてゆっくり瞼を落とし。もう一度瞳を開く。
「勘違いしないでください。私はこれまで悪いことをたくさんしました。闇のプリキュアなんです。あなた達と一緒になんて戦えない。」
リボンだってもうこんなに真っ黒。
そう胸元を飾るリボンへ視線を落とす。
「巫山戯んなアル」
「オマエは我達と同じプリキュアアル。プリキュアなら最後まで前を向いて戦え!!」
共ポジがウヅゥの襟元を掴み。下を向いたその顔を無理矢理自分達に合わせる。
ぽすぽすぽすっ
ウヅゥをいじめるな!そう言うようにatmが共ポジの足を叩く。
「カキンカキン、カキン~~!!」
atmの反撃を受け共ポジがウヅゥから手を離す。
それと入れ替わるようにウヅゥの傍へユーロとクレソンがしゃがみこむ。
「ウヅゥ…さん?ウヅゥさんは黒は嫌いですか?」
ユーロが問いかけ。ウヅゥが口をつぐむ。
「たしかに黒ってイメージだとあんまりいい色じゃないですよね」
「でも黒って嫌なものばかりじゃないんです。」
「例えば…日本にはお赤飯にのせるゴマとか!お正月に食べる黒豆とか、栄養もあるし縁起物もたくさんあるんです!」
だから私は黒も好きです!
ユーロが笑顔で言葉を伝える。
「えい。」
「!」
クレソンがウヅゥの額を指ではじく。
「これはあの時私が共ポジとセレナーデに叩かれた分。」
「ウヅゥ。悪いことをしたならごめんなさい、だよ。」
「……ごめん…なさい…!」
ウヅゥが額を抑え小さく声を震わせる。
「ちゃんちゃらちゃーーん!セレナーデさんお願いします!」
「えっへん、カキン星王女のウヅゥちゃん!ポコリーヌ星第3王女セレナーデの名において!私があなたを許します!!」
救いは有限のもの。
その機会も出会いも運も全ては平等じゃない。
その手を掴むか最後に決めるのは。
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「抹茶フラペチーノチョコチップとチョコソース追加で。」
「ワタシも同じやつください~!」
「私もそれにしちゃおうかな!」
「全員同じやつとか正気?なしなは限定のやつにしなよ」
「え~~でもワタシもそれがいい~ナシバのやつ美味しいんだもん!ってかユーロさんは?!」
「ゆーちゃんはいいの!」
「えこひーきはんたーい!」
「やっぱりとっても可愛いです!これも!これもセレナーデさんに似合います。」
「えへへ~そうかな?私もウヅゥちゃんにプレゼントあるの!これ!」
「蟹」
「カニ☆」
「あははは……ありがとうございます?」
「atmちゃんとパリンちゃんの分もあるんだよ!帰ってきたらみんなで着てお出かけしようね~~!」
「カキンカキン……?」
ベッドの枕元には可愛いぬいぐるみ。
意味のわからない柄のTシャツ。
ネイル、キーホルダー、 料理の本。
それに白いワンピース。
何も無いはずだった自分の部屋。
「怒って笑って泣いて、アイツらといるのはほんと疲れるネ。でもそれが楽しいと思えた。我はプリキュアだけど……自分のためにも戦いたいアル。」
「我走了。」
扉を開ける。
「共ポ!くるの遅いから迎えに来たよ!」
「行くポコ!」
「走るフガ!」
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「みんな!準備はできてるポコか?」
「ジュースとお菓子と絵本はちゃんと持ったフガ?」
「バナナはおやつに入るポコ?」
「うーん入らないフガ!」
「じゃあおやつは別に用意できるポコね!」
「ポコ?」
「も、もちろんスペースジョークポコよ!」
「さあみんな!パリンちゃんを助けに!悪い王様を倒しに!!」
ポコリーヌ星にスペーストリップ☆