「あんたなんか生まれてこなければ良かった」
それが母の最期の言葉だった。
青色の瞳、魔法と呼ぶにはあまりにも暴力的な力、半分流れる異国の血。「穢れた血」と罵倒され、「悪魔」と恐れられ、奴隷のように扱われる毎日に自分が生まれてきた意味を見出せなかった。
彼女と出会うまでは。
ーーー
「こんな所で何をしているの?」
胸まで伸びた栗色の髪、風をはらんでふわりと揺れる真っ白なワンピース。大きなまん丸とした赤い瞳が私を見つめる。
「わっ…!」
突然現れたその人物に驚き尻餅をつくと、少女は私に向かって手を差し伸ばした。
「大丈夫?」
黒く汚れ傷だらけの自分の手と差し伸ばされた健康的で綺麗な手を交互に見、私は彼女の手を借りずに立ち上がった。好意を無下にされたにも関わらず彼女は気にした様子もなくその手を下ろす。
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