共ポの後日談「共、お誕生日おめでとう」
そう言って手渡されたのはレースのついた淡い水色の可愛らしいリボン。
師匠を見ると、いつもリボンで2つにまとめた髪が解かれ、美しいブロンドヘアが風にそよそよと弄ばれていた。
「これ師匠のネ」
「うん、その代わりに共のその赤い帽子と交換して欲しいの」
「交換してどうするアルか?」
「おまじない」
「おまじない?」
「そう。私と共が永遠の絆で結ばれますように、そういうおまじない」
師匠は優しく微笑みながら共ポのおさげにリボンを結び、共ポの被っていた帽子を自分の頭に載せる
「あなたはきっと素敵なプリキュアになる。共は私の自慢の弟子よ」
共ポは笑いながら泣いた。師匠の衣装に不揃いな赤い帽子が可笑しくて。誰よりも尊敬する世界一のプリキュアに自慢だと言われたことが嬉しくて。
師匠から貰ったそのプレゼントは今まで貰ったどんなプレゼントよりも嬉しくて、宝物だった。
でも、いつからだろう。師匠がその赤い帽子を被らなくなったのは。
はっと目が覚める。夢を見ていたのだろうか。涙が頬を伝い慌てて手で拭う。
ベッドから出て、小さく変身の呪文を唱える。一瞬、眩い光で覆われ、プリキュアの姿となった共ポが鏡に映る。
赤い中華風のワンピースに似合わない水色の可愛らしいリボン。憎くて、早く忘れてしまいたいのにずっとこのリボンを外せずにいる。
昨日共に戦った、黄色いプリキュアと緑のプリキュアを思い出す。あれだけぶつかりあったのに一緒に戦った後は馬鹿みたいな笑顔で「これからよろしく!」と2人揃って握手を求めてきた。
ふぅ、と溜息をつきもう一度鏡を見る。
楽しい思い出と同じくらい辛い思い出が詰まったこの布切れ。するりとリボンを解きクローゼットの奥にしまっていた赤い帽子を取り出す。
スマホがブブッと震え画面にメッセージが表示される。
『助けて〜(涙)』
チッと小さく舌打ちをし部屋の窓をあけ外に飛び出した。
戦闘後錠前がパタパタと走りよってくる。
「そっちの方が似合ってるよ!」
そう言って頭をポンと叩く
「ねえ〜?!わかめだ〜〜!!あのリボン変だったよね〜〜!!」
「人のファッションに口を出すつもりは無いけど、うん、そっちの方が共ポらしい」
ずっと心の中にこびりついていたあの思い出がスルスルと溶けていく
「うるさいネ!」
そう言って錠前の頭を軽く叩き返す
もう私にあのリボンは必要ない
新しい仲間と一緒にもっと強いプリキュアになるよ、さようなら、師匠
オレンジ色の空に3人のプリキュア達の笑い声が高く高く響いていた