if 錠前がもし初めて会ったのがポコじゃなくatmだったら
「ぬいぐるみ…?」
地面に落ちている紫のふわふわが黒いカラスにつつかれている姿を見る。
「こらーー!」
なにかはわからないが鞄を振り回しカラスを必死になって追い払う。
「よかったあ、穴とかはあいてないみたい!」
「atm!!ここにいたのね!」
「あなたのこですか?はいどーぞ!」
「ありがとうございます。本当に良かった私の大切なオトモダチなの。」
必死にこのぬいぐるみを探していたのかぬいぐるみを抱きしめ安堵の表情を浮かべ、丁寧な言葉を使いなしなに優しい笑顔を向けお礼をする。
お姉さんの水色のツインテールが光に反射し風に揺られる度にキラキラと輝く。
「きれい!まほーしょうじょみたい!なしなもね…」
「なしなちゃん!外は危ない事がたくさんあるって教えたでしょどうしてママのお話が聞けないの!」
「…ごめんなさい。」
ままはお姉さんに1度視線を向けその髪色服装に嫌悪を抱いたのかなしなの手を強く引く。
「まま、いたいよお。」
「なしなちゃんはやくお家に帰るわよ。」
ままに引かれる反対の手をお姉さんさんがそっと掴む。
「あなた、なんなんですか?」
ままの言葉を聞くことはなくお姉さんがなしなの目をじっと見つめる。
青く輝く宝石みたい瞳まできれい。
「なしなさんあなたは私の大切なatmを助けてくれた。」
だから私は貴女を助けます。
そう× × × お姉さんは言葉を残して消えた。
あの後ままの機嫌は家に帰ってからもなおることはなく。
「なしなちゃんどうして、どうしてわかってくれないの。」
「ままは全部なしなちゃんのためやってることなのに!」
そういってままがまたなしなを叩く。
「ごめんなさい!ごめんなさい。」
「いたいのいたいのとんでいけー……」
ままがご飯の準備をしている時間、1人魔法の言葉を唱えても頬の痛みはなくなってくれない
いつもは耐えている体と心の痛みに今日はなぜか涙が止まらなくなる。
「ウヅッ…おねえさん。」
「はい、なしなさんどうしましたか?」
いるはずのないウヅゥお姉さんが目の前に現れる。
「…おねえさん!」
わからない、でもおねえさんがなしなを優しく抱きしめてくれる。
それがただ嬉しかった。
「よしよし、よく頑張りました、もうなにも心配はいりませんよもう大丈夫です。」
「だってほら。」
ゴロンとなにかが転がる。
「貴女を汚く罵るその口も、貴女を強く叩くその手も、もう二度と、動きませんから。」
初めて会った時となにも変わらない優しい笑顔をなしなに向ける。
ただ、昼間のきらきら輝く宝石のような瞳はなく。そこにあるのは星の見えない真っ暗な2つの夜だけだった。
ーーーーーーーーーー
「いぇーい!まほーしょうじょってサイッコー!」
「なしなさん。プリキュアですって。」
「あっそうやったっけ?」
「まあどっちでもいいんですけれど。」
ウヅゥが小さく注意をするがなしなはそれ以上に楽しくてたまらないといった表情を向ける。
楽しい楽しい楽しい。何をしても怒られない。はたかれることも無い。
あの日ウヅゥおねえさんはなしなを化け物から助けてくれました。ウヅゥおねえさんはなしなのヒーロー、だからなしなもヒーローになると決めました。
「ウヅゥ!ナシナ!またオマエら……!絶対に許さないアル。」
目の前に現れるのはプリキュアを名乗る赤い女。
「ちょっと〜人が考え事してる時に話しかけないでもらえます〜!」
「……あれ?もしかして青いお友だちいなくなっちゃったの?残念〜もっといっぱい遊びたかったのにな!」
無邪気に満面な笑みを赤いプリキュアに向ける。
いつもナシナ達の邪魔をしてくる。悪いヤツら。
だからこの間は少し強めに仕置きをしてやったの。
「アイツは友達なんかじゃないアル。」
プリキュアに友達なんかいらない。そう呟く。そうして拳を構え走り出す。
その拳はナシナへと向けられ衝撃を受ける。
「きゃっ!いった〜い!よくもやったわねー!」
「この借り今すぐ返すわ!ウヅゥおねえさんー!!」
ナシナがウヅゥの名前を呼ぶ。
「はいはい。」
「GO!GO!」
ウヅゥが呼び出した複数の敵たちが一斉に共ポジが守るべき街へと歩き出す。
「!」
共ポジの注意が一瞬そちらへ盗られる。
「ばーか。戦ってる時は気を抜いちゃだめなんだから!」
共ポジの頭に力いっぱい魔法少女を模したステッキが振り下げられる。
「がっ!」
「共ポジ!」
「なんだーいるじゃんチビ達も」
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踏みつける。
ムギュっとぬいぐるみのような。粘土のような。不思議な感覚が楽しい。
まだ強い目眩がする頭を抑えることもできず共ポジが重たい瞼を開く。
「起きたー?おはよ!」
ナシナが足をぐりぐりと動かす先にはポコの姿。
「ポ…ポコを離せ。」
「友達なんていらないとか言っといて大事なの?笑っちゃう。まあ、やなんだけど!」
「でも飽きたからもういいや〜。」
ポコをそのまま蹴り捨て倒れている共ポジに近づく。
「ワタシ優しいからさ。いつでも遊んであげるよ。飽きるまではね!」
そのまま歩き去る足を1度とめ共ポジへ振り返る。
「そういえばそれ似合ってないよね!」
共ポジの頭に着いた水色のリボンを指さして
ただ笑う。
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「ウヅゥおねえさん!次この子達にしようと思うの!」
後ろからギュッとナシナがウヅゥに抱きつく。
「なしなさんが選ぶのは珍しいですね。もちろんいいですよ。」
「うん!!だってなんか幸せそうでムカつく!それにこっちの子なんでだろ……トモダチになれそうな気がするの。」
写真に写るのは肩で切り揃えた髪を外にハネさせた子と楽しそうな笑顔を浮かべる黒髪の子の2人。
「2人はいらないから1個でいいよね!」
最後に立っているのがヒーローなのです。
ナシナは全部を壊します。
だれかの生きる理由。
だれかの幸せそうな笑顔。
だれかのあたたかい繋がり。
自分が1番幸せになるために。
CPP,二次創作