夜の帳が落ちるまで◇ ◇ ◇ ◇ ◇
高校生活3年目の夏、あの子はカザマじゃない他のやつと花火大会に行くらしいと言う噂を耳に挟んだ。
俺は塞ぎ込み落ち込んでるように見えたカザマを花火大会が始まる前の海に誘った。
「夏の海は好きじゃない」なんて言いながらもついて来てくれた。
花火大会の会場から離れた、人気の少ない砂浜に着いて、ジャリ……と砂を踏みしめながら潮の満ち干きを二人で無言で眺めていた。
「分かってたんだ……もう……」
海に沈む夕焼けに照らされた泣きそうな顔が、彫刻みたいに綺麗だと思った。涙が零れそうな赤い瞳はルビーみたいで美しかった。俺は反射的にカザマの事を抱きしめていた。
「カザマ……。言わないでいい。大丈夫だから」
「俺……、俺……。三年間何やってたんだろうな」
987