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    R_mantankyan

    BL。七風と風七とリバしかないです。
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    七風リレー小説の5話目です。

    七風リレー小説⑤七ツ森の姿が見えない。

    先生と少し話し込んでしまったせいで、待ちくたびれて教室に戻ったのだろうか。そう思い探してみるも、薄暗くなった教室棟には人っ子一人見当たらなかった。送っているメッセージにも既読がつく気配がない。

    何処かへ寄って帰ろう、なんて話をしていたのに、何も言わずに反故にするなんて行動を七ツ森が取るはずがない。付き合ってまだ日が浅いが風真は七ツ森の優しさや思いやりがある性格をよく理解していた。

    だからこそ七ツ森は、自分勝手な理由で消えたんじゃないと思った。優しい七ツ森のことだ、〈誰か〉に連れていかれたのだ。何の根拠もないけど、例えば他の生徒に頼み事をされたとか……。そう考えた方がしっくりした。
    まだ学内にいるはずだ。風真は自分の直感を信じて、七ツ森を探す事にした。

    廊下に差し込む光で小さい頃を思い出しながら遊んでいたのが随分と昔のことのように感じられた。七ツ森が暗いところを踏んだから、闇の中に潜むワニに食べられてしまったんじゃ……。

    なんて、そんな事あるはずがない。なのに、どうしてこんなに夕闇が怖いんだろう。
    次第に早足で歩きながら、ふと廊下から窓の外を見ると、街の光がポツリ、またポツリとひとつずつ点き始め、風真の焦燥感を煽った。
    藍色の空には星たちが輝き出す。沈んだ太陽が残した光がかろうじて、校舎の裏の木々を照らしていた。

    そんな場所に七ツ森がいるはずないのに……。そう思いながらも残光を頼りに目を凝らしていると、あるはずがない物が目に入った。それは、裏の森の入口に続く芝生に落ちている。赤くて、四角くて、見覚えのある……。

    (あれは、まさか)

    風真はドキドキと鼓動を速くさせ、走って校舎の外へと出てそのまま森の方へ向かう。不思議なことに、その間誰ともすれ違わない。まるで夜の帷の中に学校ごと閉じ込められてしまったような、そんな錯覚に陥る。

    校舎裏に到着した風真は息を整えるのもなおざりに、芝生に屈み〈それ〉を拾い上げて土を払う。

    赤い牛革が経年変化で少し変色している、七ツ森のパスケースだった。中には七ツ森実、と記されたバスの定期券が入っているので間違いは無い。風真がこれを拾うのは始めてではない。


    『七ツ森……!七ツ森ってば……!聞こえてるんだろ!』
    『あぁ、悪い。イヤホンしてて聞こえなかった』
    『パスケース、落としてる。これがないとお前帰れないだろ?』


    風真の手から落し物を受け取る七ツ森は、なぜかいつも笑っていて嬉しそうだった。
    その微笑みを思い出して胸がキュッと締め付けられる。会ってないのは小一時間だけど、早く会いたい。会って、パスケースを突きつけて文句を言ってやりたい。その後は俺の気が済むまで抱きしめて離してやらない。

    そんな事を思っていると信じられない音が聴こえてきて耳を疑う。

    ゴーン──────

    それは鐘の音だった。
    目の前の森の奥に何があるかを知らない風真ではない。

    (七ツ森……。そこに、いるのか?)

    風真はパスケースを握りしめ、1歩、音の鳴る方へ足を踏み出した。
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