おひいさんに押し倒されている。
いつものアホみたいな笑顔はナリを潜めて、いつか見た怖いくらいの真顔とも違う、オレの知らない感情を浮かべた顔で見つめてくる。
ソファの上でオレに跨って、逃がさない、って言ってるみたいに顔の真横に左手をついて、反対の手でオレの手首を掴んでいる。
……ほんの少しだけ、その手が震えているのが伝わってきて、察しの悪いオレでも流石にこの行動の意図くらいは読み取れた。
わからないのは理由だけ。いろんな『なんで?』がぐるぐる回って上手く言葉がまとまらない。
「……きみが、」
おひいさんが絞り出すみたいにしてようやく発した声はそれはもう可哀想なくらいに震えていて、おひいさん自身もそれを気にしてか再び黙り込んでしまった。
……オレが、何ですか。別に逃げたりしませんし、ゆっくりでいいんで教えてくださいよ。
そう言いたくても、気が動転しちまってカラッカラの口ではおひいさんと同じことになりそうだったんで、自由な方の手をおひいさんの背中にそっと回して宥めるみいにさすってみた。
おひいさんは一瞬ビクリと肩を震わせたあと、脱力してオレの胸元に項垂れるみたいに頭を預けるとポソリと小さな声で呟いた。
「……きみが好き」
……まぁ、こんなことをしでかす理由なんてそれくらいしか思いつかなかったから、ある程度予想はしてましたよ。
オレの心臓がバクバクと暴れてる理由も多分あんたと同じなんで、早いとこ返事を伝えてさっきの続きになだれ込むとしますかねぇ。