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    846_MHA

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    あのスーツ着こなすのずるいって🍯が言ってました。🍯くんの描き下ろしはありますか...。

    #たいみつ

    スーツ「ッはぁ~~~。無理、このスーツ着てなんでこんなに品があんの大寿くん。無理、本当に無理。一生好き。」
    「何度目だそれ。」
    目の前で恍惚の表情を見せる三ツ谷に、大寿は溜息を吐いた。
    ――
     今日参加するレセプションパーティーのテーマは〝花鳥風月の夜〟。ドレスコードもそれに準じたものでというハードルの高い要求に、頭を抱えた大寿は帰宅早々に三ツ谷を頼った。着物はどうか。目立つなら袴も良いかも。と1人ブツブツ呟いて三ツ谷が突然
    「あ!」
    と声を上げて立ち上がる。
    「ちょっとアトリエ行ってくるから待ってて! すぐ戻る」
    インパルスを飛ばして本当にすぐ戻ってきた三ツ谷が手に持っていたのは、決して普段着では着れないであろう派手な和柄が幾つも刺繍された紫のスーツと、これまた豪華な和柄がプリントされた紫のシャツだった。
    「前に舞台のティザー用で頼まれて作った衣装の候補作だったんだけど、今回のテーマにピッタリじゃねェ?」
    「…俺がこれ着たら堅気のやつには見えなくないか。」
    三ツ谷のセンスは信頼しているが、スーツのインパクトの大きさに大寿は尻込みしてしまう。
    「いや、むしろ大寿くんだからこそハイソなパーティーでこれ着たら映える。断言する。」
    だから、オレに任せてくんない?
    真っ直ぐに大寿を見る三ツ谷がプロの顔をしていたので、大寿は三ツ谷に仕事として仕立ての依頼をかけた。
    ――
     三ツ谷が仕立て直したスーツは大寿の身体のラインにピタリと合っていて、筋肉もひとつの宝飾となっている。心配していた柄の派手さも大寿は見事に着こなして、派手さの中にも品を含んだ雰囲気を醸し出している。
     「はぁ、めっちゃカッコいい。このスーツこうやって着れるの絶対ェ大寿くんだけだなァ…。」
    「おい、もう行くぞ。」
    あんまりにも三ツ谷が褒めるので、こそばゆい気持ちになった大寿が素気なく言う。これは大寿が照れてるとわかってる三ツ谷は、口元に笑みを浮かべながら仕上げに大寿の髪にムースをつけた。今日の大寿は頭の先から爪先まで三ツ谷の手が入っている。
    「はァ…オレの彼氏まじでカッコいい。おい、パーティーでいろんな奴に愛想振り撒いてくんじゃねェぞ。」
    「どの口が言ってんだテメェ。」
    大寿が片頬を吊り上げる。
    大寿も三ツ谷も、もうお互いしか見えないと分かりきっているのに。大寿の心の内を読んで
    「ま、そりゃそうか。」
    と三ツ谷が笑った。
    「じゃあ行ってくる。」
    その様子に満足した大寿が家を出ようとした時、ふいに三ツ谷が大寿の顔を包んで噛み付くような口づけを送った。
    「品もなんもかなぐり捨てて求めるのはオレだけにしろよ。」
    そしてそう呟くと大寿をくるりと回転させ、ドアの外まで押しやる。
    漸く我に返った大寿が慌ててドアの方を見やると
    「いってらっしゃーい。」
    と閉まる直前のドアから三ツ谷が手を振るのが見えた。カチャンと鍵をかける音を聞いてから、大寿は下に待たせてる車へ向かう。
    「社長、ッヒ、お、おはようございます…!」
    秘書が喉の奥で悲鳴を鳴らしたのが聞こえて、今の自分は相当悪い顔をしてるんだろうと察せた。
    「あの、どこかご不調でも…?」
    「いや、問題ない。」
    むしろ絶好調だ、とまでは言わずに車に乗り込み出発を促す。会場に着くまでに、この顔をなんとかしなくてはいけない。
    (帰ってきたら抱く。この服のまま抱く。絶対にだ。)
     閉まる直前に見た三ツ谷の真っ赤な顔を思い出して身体が疼き、大寿はまだ始まってすらいないパーティーの終わりを願った。
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     商談の内容もたいしたものではなかった。ベンチャー企業に求めるべきものではないかもしれないが、あまりにも知見がない、リスク管理が足りない、度胸もない。つまるところ、このオレと新しい商売を始めたいなどという見上げた根性を持った奴ではなく、オレの威を借りて商売をさせてもらおうという狐みたいな男だったわけだ。五分ほど会話したところでこいつとの食事の時間が無駄なものに終わることがよく分かったが、だからと言って即刻商談の場を立ち去るほどは礼儀を捨てちゃいない。こうやってきちんと丁寧に食事をして、それなりの会話をする。しかしそうは言ってももう我慢の限界なので、連れてきた秘書に目配せをしてから「失礼」と断りを入れて立ち上がった。
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