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    846_MHA

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    たいみつ。付き合ってない。三ツ谷くんと席が隣の同級生が、ひっそりこっそりたいみつデート(未満)を目撃する話。※モブの高校生視点※

    #たいみつ

    隣の大人 三ツ谷隆くん。人当たりが良くて誰とも分け隔てなく接するから、クラスの皆に好かれている、私の隣の席の人。くじ引きで席が決まった時は周りの子達からかなり羨ましがられた。三ツ谷くんは優しいうえに顔も良いのでそりゃあモテる。そんな彼が大きな暴走族の隊長だったなんて、最初に聞いた時はなんの冗談かと思ったけど、いつか校門の前に頭に刺青が入ってる人やゴツいバイクに乗った人達が三ツ谷くんを迎えに来たのを見て本当なんだとびっくりした。人は見かけによらない。
     そんな彼は、ホームルームが終わるとすぐに帰る日がある。お母さんが一人で働いていて、小さい妹達の面倒は三ツ谷くんが見ているらしいと、彼と同じ中学だった子から聞いたことがあった。
    ――
     この日、放課後のチャイムが鳴ると三ツ谷くんに申し訳なさそうに話しかけられた。
    「オレ今日はこれで帰らなきゃならなくて、本当に悪ィんだけど日誌頼んでも良い?」
    今日は私たちが日直だったから、授業後の黒板消しや、ノートを集めて職員室へ持って行ったりした。三ツ谷くんは黒板の高いところを先に消してくれたり、提出物のノートを重いからと一人で持って行ってくれたり、さりげない気遣いがものすごく上手で。彼と一緒に日直をして、これはモテるよなぁと納得してしまった。なんというか、他の男子が子どもに見えるくらい三ツ谷くんは大人っぽい。
     今日のことを思い出しながら、私はすぐに答えた。
    「全然いいよ。っていうかノート運んでくれたし、日誌はやらせて。」
    「ありがと、助かるワ。」
    私の返事を聞いて、三ツ谷くんはホッとしたように笑う。あ、笑うとかわいい。さらにモテポイントを見つけてしまったな。
    「妹ちゃん達のお迎え?」
    「そう、今日はお袋いないからオレがお迎え。早く行かないとうるせェんだアイツら。」
    「二人とも保育園だっけ?」
    「一人は学童だよ。二人迎えに行ってそのままスーパー寄って、帰って夕飯作んの。あんま遅くに食べさせたくねぇから早く帰りたくて。」
    だから日誌やってくれて助かる、と三ツ谷くんが帰り支度をしながら話してくれる。ご飯まで作ってるとは知らなかった。今日は課題が結構出たけど、三ツ谷くんはいつやるんだろう。考えたらなんだか心配になってしまって
    「学校の課題とかもあるのに、家の家事とか妹ちゃんの面倒とか大変じゃない? 大丈夫?」
    気づけばそう口に出していた。私の質問に、三ツ谷くんは笑顔で応じる。
    「ずっとこの生活だからそんなでもねェよ。心配してくれてありがとな。」
    「そっかァ、偉いね。頑張って。」
    「おぅ、じゃあまた来週。」
    日誌頼んでごめん、と最後にもう一度謝って彼は足早に教室を出て行った。
     三ツ谷くんを見送って、日誌を書こうとペンを取る。今日あった出来事を書き並べながら、私はまだ彼のことを考えていた。ずっとこの生活って言っていたけど、一体いつからなんだろう。私だったら今でも無理だって言っちゃいそう。それを平気でやってる三ツ谷くんは、大人っぽいんじゃなくて本当に大人なんだなぁと思った。
    ――
     それから暫く経った週末のある日、原宿で買い物をしていると、駅前で三ツ谷くんを見かけた。黒のハイネックシャツの上にオーバーサイズのカッターシャツ、下はダメージが入ったスキニーパンツっていうシンプルな組み合わせがすごく似合ってる。制服の着こなし方を見た時から思ってたけど、三ツ谷くんってお洒落だ。
     声をかけようしたその時、三ツ谷くんが改札の向こうへ手を振ったので、進めていた足をピタリと止める。誰かと待ち合わせしてたのか。てか三ツ谷くんすごく嬉しそう。まさか彼女だったりして。
    「すまねェ、待たせた。」
    「いや、むしろ待ち合わせ一〇分前だワ。オレが早く着いたの。」
    三ツ谷くんに話しかけていたのは私の予想の斜め上をいく人だった。デカくてゴツくて怖い。あ、でも顔はかっこいい。
     ただやっぱり漂う雰囲気がヤバくて、三ツ谷くんはあの人にいじめられてないか心配になった私は、思わず街路樹の後ろに隠れて二人のやり取りを覗いてしまう。いや、そういえば三ツ谷くんは暴走族の元隊長なんだった。となるとお友達かな、だと良いな。
    「今日はどうする。」
    「いつものクレープ屋が期間限定出してるってクラスの女子が言ってたからまずそれ食って、その後はちょっと古着屋覗きたいんだけどどう?」
    「期間限定のクレープって何味なんだ。」
    「キャラメル&ナッツだって。大寿くん好きでしょ。」
    「…別に。テメェに付き合うだけだ。」
    「ぶふっ。」
    「おい笑うな。」
    「味気にしておいてそれは嘘だろ~!」
    私も咄嗟に口元を抑える。あの見た目で期間限定のクレープを気にしているのがなんだか可愛くて、笑いそうになるのをなんとか堪えた。三ツ谷くんは遠慮なくケラケラ笑っている。クラスでもよく笑ってるけど、こんな風に笑うのは見たことない。やっぱり仲良い友達同士なんだろうな。
    「古着屋回った後に、本屋寄りてェ。」
    「良いよ。オレも今月号の雑誌見たい。」
    「で、夕飯はどうすんだ。」
    デカくてゴツくて怖いイケメンが問いかけると、三ツ谷くんはそれまで楽しそうに話していたのにシュンとしてしまった。
    「…それが今連絡きて、急にお袋が夜勤入ったから一八時までに帰らなきゃいけなくなっちまったんだ。」
    「じゃあ一七時頃に解散するか。」
    「…またオレの都合でごめんな。」
    三ツ谷くんが申し訳なさそうに謝ってる。こんな日まで妹達の面倒見るって本当に大変だなぁ。そんなことを思っていると、デカくてゴツくて怖いイケメンが三ツ谷くんの頭に手を置いて、いきなりわしゃわしゃと撫で始めた。
    「わっ!」
    「謝んなって何回言えば分かんだテメェは。」
    その撫で方は豪快で、三ツ谷くんが縮むんじゃないかっていうくらいの勢い。頭はあっという間にボサボサになっていく。三ツ谷くんの髪の毛は細くて透けてて綺麗なのを、隣の席から見て知っている。触り心地良いんだろうな、ちょっと羨ましい。
    「ブリーチしすぎて髪の毛傷んでんぞ。」
    「うっせェ! ボサボサになるからやめろって!」
    「テメェがされる機会なんてそうそうねェんだから、黙って撫でられてろ。」
    「ハア?!」
    「十分兄貴やってんのに、何を謝ることがある。胸張っとけ。」
    「…急に兄貴感出すじゃん。」
    「兄貴だからな。」
    それまで撫でられることに抵抗していた三ツ谷くんが大人しくなる。デカくてゴツいイケメン、かっこいいじゃん。怖いは撤回しよう。
    「よし、もっと褒めてくれて良いぜ。」
    「調子良い奴だな。」
    頭を撫でられてる三ツ谷くんは学校の時とは違う、子どもみたいな笑顔。私が綺麗だと思っている髪も、触ると傷んでいるらしい。大人だと思ってた三ツ谷くんは、ちゃんと私と同じ一六歳の男の子だった。
     デカくてゴツいイケメンは、今度は自分が乱した三谷くんの髪を元に戻すように、優しい手つきで頭を撫でている。何故かそれ以上は見てはいけない気がして、私はそっと街路樹から離れて駅へ向かった。さっきの会話を聞いてたらクレープが食べたくなっちゃったけど、二人に会ったらいけないのでそれはまた今度。
     今日はあの二人がお迎えの時間がくるまでたくさん楽しめますように。駅前から見える大きな鳥居にそっと祈って、山手線の改札をくぐった。

    ===
    「今日の夕飯決まってんのか。」
    「うーん、焼きそばとかにすっかなァ。」
    「…。」
    「…ふは。な、夕飯無しじゃなくてオレん家で食おうぜ。スーパー寄るから買い出し付き合って。」
    「…おう。」

    結局夕飯まで一緒にいた二人。
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