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    四 季

    @fourseasongs

    大神、FF6、FF9、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きな人です。

    boothでブレワイに因んだ柄のブックカバー配布中:https://shiki-mochi.booth.pm/

    今のところほぼブレワイリンゼルしかない支部:https://www.pixiv.net/users/63517830

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    四 季

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    お盆休みにリンゼル二次創作をupする予定だったのですが、他人様のリンゼル二次創作小説読んだり、ティアキンで遊んだり、寝たり食べたりするのに忙しくってェ……🍀
     ブレワイ〜ティアキンに至るまでのハテノ村リンゼル(書きかけ)。

    #リンゼル
    zelink
    #ブレワイ
    brawley
    #ティアキン

    (仮)fu ru sa to「貴方の故郷は、どんな所ですか」

     姫の問いかけに、騎士はいつだったか、バーチ平原で姫にカエルを勧められた時のように、驚きに目を丸くした。

    【fu ru sa to】

     春の気配を感じさせる風に、雪割草や福寿草が吹かれてそよいでいる。万年雪を戴くラネール山から村に時折吹き下ろす風にも、心なしか、ほのかに暖かな春の匂いが混じり始めた。
     雪深いハイラルの東の果てにある村に訪れる短い春は、だからこそ萌え出る生命の、眩しいようなきらめきがそこかしこに満ち溢れていた。
     清らかな雪解け水が流れる川に架かる橋の先の村外れにある一軒家では、家主である少女が窓を大きく開け放って、春の空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。
    「ああ、春ですね……!」
     美しい金髪が印象的な少女・ゼルダはそう言いながら、春のハイラルの景色を眺めた。
     ──この春は、ゼルダにとって特別な春だった。なぜなら、厄災が封印され、ハイラルに真の平和が訪れてから、初めての春だからだ。

     ハイラルの姫巫女ゼルダと勇者リンクが厄災の封印を終えたのは、昨年、ちょうど中央ハイラルが初夏を迎えようとする頃だった。
     女神から人の身へと戻ったゼルダが、喧騒を離れた場所で静養を、と提言したリンクのすすめに従って、カカリコ村から冷涼で過ごしやすいハテノ村へと移り、村の外れにあるリンクの生家で静養を始めたのが夏の半ば。そうして、ゼルダが百年続いた封印がもたらした疲労を癒しているうちに、季節が一つ、過ぎてしまった。
     心身ともに快復すると、ゼルダは今度は復興に向けて頻繁にハイラルのほうぼうを訪れるようになり、足早に時間は過ぎた。かつてゼルダは王国の姫として、各地で起きている問題を紙の上に書かれた文字の羅列のように俯瞰しながらとらえることが多かったが、実際に各地へ足を運んでみることで、その場所で暮らす人びとの肉声を聞き、人びとの切実な思いに数多く触れることができた。充実した日々ではあったが、あまりにも山積している問題に、ゼルダはしばしば自分の行いが徒労だと感じることもあったが、それでも百数年前のあの日々のように、ゼルダはもう、無力感に苛まれはしなかった。
     そうしているうちに、ハイラルの東の果ての地に長い冬が訪れた。村の家々の屋根にある、堆く天へと伸びた煙突が物語っているように、ハテノ村の雪は深い。村の出入り口から伸びた一本にして唯一の道が雪で埋もれてしまうと、さすがのゼルダも各地への視察を断念せざるをえなかった。そして、雪が降る冬の間、ゼルダは村にとどまることにした。一番の理由は、植物だって花開く春を待ち、冬には眠っているでしょうと、他でもないリンクに言われたからだ。そうして一冬の間、ゼルダのハイラル巡行は一時中断された。その代わり、ゼルダはハテノ村の人びと、とくに子どもたちとの交流を深めることができた。
     厄災の脅威が去った今、子どもたちには手探りで困難に満ちた、だが輝かしい未来が待っている。ハイラルの西の果て、砂漠の中にあるオアシスや、さらにその向こうにある男子禁制のゲルドの街の話、風を自由に操るリト族の暮らすリトの村、大地と共に生きるゴロン族のゴロンシティ、水の中を自在に泳ぐゾーラ族のゾーラの里……。ゼルダの語る話を聞きながら、子どもたちの夢は、ハテノ村を越え、まだ見ぬ広いハイラルの世界へと思いを馳せるようになっていった。
     子どもたちには、教科書や、本で学ぶだけでなく、実際に外に出かけて、本物の植物や動物、ハイラルの世界に触れ合って欲しい。そう、ゼルダは考えていた。ちょうどリンクが旅の間、ゼルダが百数年前に作っていたハイラル図鑑を引き継いでくれていたので、ゼルダはそれを使い、ハイラルに暮らす動物や、そこに生きる植物の話を子どもたちに語って聞かせた。聡明で優しく、子どもが好きな女の子は、いつしか子どもたちに懐かれて、先生と呼ばれるようになっていた。──
     リンクがゼルダに語ったように、冬は、植物が芽吹きの春を待つ季節だ。
     ゼルダは春が訪れたら再び、ハイラルを巡ろうとしていた。
     そうしてその時には、子どもたちにもっとたくさんハイラルについて教えてあげたい。そんなふうに考えていた。

     そうして、冬に備えてリンクが蓄えてくれていた果物の砂糖漬けの最後のひと瓶が空になる頃、ハイラルの東の果てのこの村に春のきざしが訪れた。
     太陽が顔を出す頃になれば、村々の煙突からは炊煙がたちのぼり、働き者の大人たちは仕事へ向かい、子どもたちは遊びに出かけてゆく。村には子どもたちの笑いさざめく声や、女性たちのおしゃべりの声、男たちが楽しく語り合う声があちらこちらから聞こえてくる。
     ──何て幸せな光景だろう。ゼルダは目を閉じて、村のあちらこちらから聞こえる生活音と、村人たちの声に耳を傾ける。農業を生業とする村人の多いこの村で、今一番の話題は今年の野菜の出来具合についてだ。
     ハイリア人は働き者だ。秋の間は冬に備えて備蓄をし、冬の間は春の種まきに向けて準備をしたり、家の中でできる繕い物に精を出し、春になれば田畑を耕し始め、種をまき始めるのだ。
    「本当に、とても良いところですね」
     ゼルダがしみじみと呟くように言うと、ゼルダを見守るような位置に立っていたリンクが頷いた。リンクの表情に動きは少ないが、今は彼がどこか誇らしげな表情をしているようにゼルダの目に映った。純粋に誇らしげに思っている少年のような彼の表情に、何だか微笑ましいような温かな気持ちになり、ゼルダは微笑んだ。
     一方のリンクのほうは、そんなゼルダを眩しいものを見るような気持ちで見つめていた。かつて彼女が姫であった頃の、輝くような長い髪は今は短くなっているにもかかわらず、その笑顔は前より一層眩しかった。伝統的なハテノ村の衣装に身を包んでいながら、どこか気品が漂うゼルダのその姿は、村でも評判だった。
     旅に出ている間、ゼルダは以前フィールドワークの時に着ていた服とマントを身につけていた。そのためか、冬の間、外出の用事がない日などにハテノ村の伝統衣装を身に纏ったゼルダの姿は、リンクにとってはまだ馴染みがない。もしかしたら、この村で、この家で、この姿のまま──と、一瞬頭に浮かんだ考えを振り切るように、リンクは慌てて頭を振った。
     ゼルダはそんなリンクを不思議そうに見つめながら、リビングのテーブルへと移動した。テーブルの上にはガンバリハチミツ入りのホットミルクが用意されている。ゼルダは椅子に腰掛けると、春先の寒さにかじかむ指先を溶かすように、温かなホットミルクの入ったマグカップを両手で包んだ。
     ゼルダの無言の誘いに応じるように、リンクはゼルダの向かいの席に腰掛けた。自分の着ている服とよく似通ったハテノ村の伝統衣装に身を包んだリンクを見つめ、ゼルダは目を細めた。
    「ずっと昔に、私は貴方に、『貴方の故郷は、どんな所ですか』と尋ねたことがあります。
     覚えていますか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクの目が一瞬泳ぐ。
     昔の彼からは考えられないその表情の変化の分かりやすさに、ゼルダは小さく笑みをこぼした。
    「誰にとっても、故郷は大切なもの。
     だから私、まさか貴方があんなに驚くなんて、思ってもみませんでした」
     そう言って、かつてハイラルの姫だったそのひと──ゼルダは、こちらもやはりかつて自分の騎士だったリンクに微笑みかけた。
     かつてハイラルの姫だったゼルダがあの問いかけをした時から、百数年の時が経っていた。
     ハイラルは厄災によって滅び、二人は厄災を封印して百年の時を経て再び巡り逢い、そして──姫と騎士ではなくなった二人は、かつて騎士だったリンクの故郷で今、一緒に暮らしている。
     かつてはリンクの生家だったが、住む人をなくし、取り壊されかけていたこの家を、記憶を失っていたリンクが買い取ったのが数年前。不思議な巡り合わせだとゼルダはしみじみと思った。
     かつて臣下であり友人でもあったインパから、百年前から変わらず続いているハイリア人の村であるハテノ村の話を聞いていたゼルダは、カカリコ村で休養している時から、ハテノ村をぜひ訪れたいと思っていた。復調したゼルダが英傑たちゆかりの地を巡った後、リンクの家があるハテノ村に行ってみたいとリンクに告げた時、リンクは、彼にしてはとても珍しく、非常に驚いたような、虚をつかれたような表情をしていた。
     そしてそれは、奇しくも百数年前、姫だったゼルダが、騎士だったリンクに、「貴方の故郷は、どんな所ですか」と問いかけた時と同じ表情だっのだ。
     ゼルダはその時のことを思い出して、小さくくすりと笑った。
    「貴方があんなに驚くものだから、失礼ですが、ハテノ村は相当に辺鄙なところにあるのか、あるいは、何か変わった風習でもあるのかと思いました」
     少しいたずらっぽいゼルダの言葉に、リンクは少しばつが悪そうに頬を掻いた。
    「いえ、あの、そうではなく──あの時は、姫が、俺の家があるハテノ村に興味を示したことに対して驚いていたんです」
     リンクの言葉に、ゼルダは意外だというように目を丸くした。
    「まあ、そうだったのですか?
     ですがリンク、私は百数年前にも──」
     そこまで言いかけて、ゼルダははたと何かに気付いたように口を噤んだ。
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    四 季

    DONEリンクが姫様に自分の家を譲ったことに対する自分なりの考えを二次創作にしようという試み。(改題前:『ホームカミング』)
    帰郷「本当に、良いのですか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクははっきり頷き、「はい」と言葉少なに肯定の意を示した。
     リンクのその、言葉少ないながらもゼルダの拒絶を認めない、よく言えば毅然とした、悪く言えば頑ななその態度が、百年と少し前の、まだゼルダの騎士だった頃の彼の姿を思い起こさせるので、ゼルダは小さくため息を吐いた。

     ハイラルを救った姫巫女と勇者である二人がそうして真面目な表情で顔を突き合わせているのは、往時の面影もないほど崩れ、朽ち果ててしまったハイラルの城でも、王家ゆかりの地でもなく、ハイラルの東の果てのハイリア人の村・ハテノ村にある、ごくありふれた民家の中だった。
     家の裏手にあるエボニ山の頂で、いつからか育った桜の樹の花の蕾がほころび始め、吹き下ろす風に混じる匂いや、ラネール山を白く染め上げる万年雪の積もり具合から春の兆しを感じたハテノ村の人びとが、芽吹の季節に向けて農作業を始める、ちょうどそんな頃のことだった。ゼルダの知らないうちに旅支度を整えたリンクが、突然、ゼルダにハテノ村の家を譲り、しばらく旅に出かける──そう告げたのは。
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