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    四 季

    @fourseasongs

    大神、FF6、FF9、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きな人です。

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    四 季

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    書きかけ③。これも『旅路』シリーズ(どれだけ放置しているのか……)。ラブポンドです。
     ティアキンで姫が夕暮れ時? よく行っていた、という話を聞いて、夕暮れ時に何かイベントが起きるのかな……💓💓 と思っていました。……何も起きなかったですね。
     ティアキンでワビスケとペディと娘さんが登場してくれたのは嬉しかったですけども☺️

    #ブレワイ
    brawley

    旅路(ラブポンド) リンクがフィローネ地方、カール山の山頂にあるハート型の池──地図には載っていないが、通称を「ラブポンド」という──に行くと、そこには以前リンクがこのラブポンドで仲を取り持ったハイリア人男性のワビスケと、ゲルド族の女性のペディがいた。
     運命の女性に出会えたら、自分が一番好きな花であるしのび草を渡したいと思っていたワビスケ。彼は、ここラブポンドで偶然出逢ったペディに一目惚れした。それを聞いたリンクが、たまたま持っていた(実はラブポンドの斜面を下りた所に生えている)しのび草をワビスケにあげたのはいいが、ワビスケはその花をペディに渡す勇気もないという。結局、ワビスケに代わって、リンクがしのび草をペディに手渡すことになった。
     あの日、あの場所にラブポンドにいた二人はやはり運命の相手同士だったのだろうか。ペディが一番好きな花もしのび草で、ラブポンドで出会った運命の二人はめでたく結ばれた──となったはずだが。
     久々の再会に驚いたリンクがワビスケとペディの顔を見比べていると、ペディはぎろりとワビスケを睨みつけながら口を開いた。
    「聞けば、あの時渡されたしのび草も、お前からもらったものだというじゃないか。私に手渡す勇気もなかったようだし……。修行が足りん、修行が!
     ……そういうわけで、しばらく二人でハイラル中を行脚して行くことになったんだが、旅立つ前にもう一度、ここに来ておこうと思ってな」
     リンクがペディの少し後ろに立っているワビスケを見ると、分かっているのかいないのか、彼は幸せそうに笑っている。……本人が幸せならそれでいいんだろうと、リンクは結論づけた。
    「それより、お前はどうしてまたここに?
     ワビスケにとっての私のような、運命のヴァーイでも探しに来たのか?」
     ペディの言葉に、リンクは苦笑しながら首を横に振った。
     レイクサイド馬宿からウオトリー村へ向かっていたリンクがラブポンドに立ち寄ったのは、本当にたまたまだ。少し前に神獣ヴァ・ナボリス解放のために立ち寄ったゲルドの街で、ペディの行方やラブポンドについて話題になっていたことが、リンクの足をここに向かせるきっかけにはなっていたが。
     それにしても、ペディがこのラブポンドで、ワビスケという運命のヴォーイに出会えたということが伝われば、もしかしたらこのラブポンドは、運命のヴォーイを探すゲルド族や、同じく運命の女性を探すハイリア人の男性にとっては、恋愛の聖地になるかもしれない。まあ、全てはハイラルに真の平和が訪れてからの話にはなるだろうが……。
     リンクはそんなふうに思いを馳せながら、ワビスケとペディの顔を交互に眺め、口を開いた。
    「これからどこに行くか、決まっているんですか?」
     リンクの問いに、ペディは大きく頷いた。
    「ああ。まずはワビスケの故郷のあるハテール地方に行くつもりだ。砂漠で生まれ育った私にとっては、雨の多いこのフィローネ地方もいいが、ハテール地方やラネール地方も水が豊かな地方だから、行ってみたいと思っていたんだ。とくに、ハテール地方には、しのび草が群生する場所があると聞く。
     しのび草は、基本的にハイラル東部、それもラネール地方以南でしか育たない。オルディン地方は言うまでもなく、アッカレ地方にもほとんどない。
     乾燥地帯のゲルドの街で生まれ育った私にとっては、本当に憧れの花だったんだ」
     リンクはカカリコ村の北にある、大妖精クチューラの泉を思い浮かべた。ハイラル各地にある大妖精の泉の周りには、その地方の代表的な花が育っている。アッカレ地方にある泉ではヨロイ草、タバンタ地方にある泉ではツルギ草、そして双子山地方の泉ではしのび草。そう考えると、しのび草は大妖精クチューラの祝福を受けた花といえるのかもしれない。実際しのび草は、そう考えるに相応しい、鈴のような見た目の、淡い水色をした可憐で美しい花だ。……肝心の祝福を授ける大妖精は、可憐とは程遠い姿をしているが。
     可憐なしのび草が取り囲む派手な大妖精の泉の姿を思い浮かべ、少しげんなりしたリンクに気づかず、ペディは一番好きなしのび草について語っている。リンクがちらりとワビスケの様子をうかがうと、彼は愛しい人の話にじっと耳を傾けているようだ。
    (──……確かに、好きな人が、自分の好きな花について話していたら、聞き入ってしまうだろうな)
     それがそれまで自分の知らなかった花でさえそうなのに、自分も好きな花であるなら、なおさら。
     リンクも旅の途中、しのび草にはお世話になることが多い。薬にしたり、防具を強化するために大妖精に捧げたり。それに、青白い光を放って闇夜を照らすしのび草は、夜道を歩く際の目印にもなる。そのため、植物への興味の基本的な判断基準が「食べられるかどうか」のリンクにしては珍しく、「食用に向いているわけではないが、わりと好んで採取する花」の一つがしのび草だった。事実、おそらくリンクが集めたハイラル図鑑を誰かが見たら、食用になるキノコやハーブの種類が多い反面、花の種類の少なさに驚かれるのではないかというくらい、図鑑に掲載されている花は少ない。
    (でもなあ、花は綺麗だけど、旅に直接役に立つわけじゃないし、どちらかといえば見て楽しむものだし)
     誰にというわけでもなく、心の中で弁明をしているリンクには気づかない様子で、ペディはしのび草について話し続けている。
    「古くから伝わる言い伝えに、聖なる泉を囲むようにしのび草が咲いているとか、迷いの森のさらに奥深くではしのび草を目印に進めば迷わないとか、そういったものがあってだな。
     しのび草は、ハイラルの花の姫の代わりに、ハイラルの人びとが暗闇でも道に迷わぬよう導いてくれる花、という言い伝えもある。
     そもそもその名前が『しのび草』だ。恋といえば忍ぶものだし、可憐で奥ゆかしくて、まさに私にぴったりの花だと思わないか?」
     「しのび草」という名前は恐らく、薬の材料として用いると静音性を高める効果があるからだろうとリンクは思ったが、それは言うだけ野暮なので黙っていた。
     そんなことよりも、気になることがあった。
    「ペディさん。ハイラルの花の姫の言い伝えって?」
     「姫」という言葉に反応し、リンクはつい語気を強めた。
     カカリコ村でインパと出会ってから、リンクは神獣解放と並行して、ハイラル各地でウツシエの記憶の場所を探していた。ウツシエに描かれた景色は、式典場やカラカラバザール、ラネール参道など、場所が特定しやすいものもあれば、正確な場所が分かりづらいものもあった。そのため、リンクは「姫」に関する話が残っている場所や「姫」にまつわる場所であれば、どこへでも行こうとした。実際そうして、平原外れの馬宿にいた老人のトーテツから聞いた話に従い、ウツシエの記憶──サーディン公園での記憶を取り戻したこともある。
     そうして多くの人々の口から語られる「姫」に関する話を集めていくうちに、直接「姫」にまつわる話ではないが、リンクにとって忘れられないひとつの挿話があった。それは姫の名を冠する花のことだ。
     リンクの熱心さがしのび草に対してのものだと考えたのか、ペディは上機嫌で語り始めた。
    「昔むかし、ハイラルには美しい花の姫がいた。夜の闇の中でハイラルの人びとの行く手を照らすよう輝く、花の姫だ。
     だがその姫は、あるとき暗闇から世界を守るためにその身を捧げ、このハイラルから姿を消してしまった。
     そこでその花の姫とよく似た妹姫は、姉と同じ、暗闇の中を照らす花となり、今もこのハイラルの夜を照らしてくれているのだという。
     それがしのび草だ」
     葉の形や花の形、属も違うのだろうが、ふたつの花はよく似ている。それに「しのび草」という名前は、「しずか」と通ずる名前でもある。そして、リンクにとって、姫しずかが特別な花であるがゆえに、姫しずかに似たしのび草は、リンクの記憶に残ることとなった。
     いまだおぼろげにしかかつての記憶を取り戻せていないリンクにも、聖なる力を持ったハイラルの姫が、この国にとってとりわけ重要な存在であることは分かってきていた。そして、ハイラルで「姫」といえば、それはほぼ例外なく、ただ一人のことを指しているのだということも。
     姫の名を冠するその花を、ハイラルで見かけることはほとんどない。たまたま人伝に聞いた話で、絶滅を危惧されている花なのだと知ったとき、リンクはやり場のない焦燥感にかられたのを覚えている。
     それから時折、深い森の奥や聖なる山の山頂で、自分が着ている服の色とよく似た色を纏うその花を見るたび、リンクは胸を掻きむしられるような気分を味わった。それは大切な記憶を取り戻せないもどかしさであり、その花に投影する人の面影を失ってしまった自分への自責の念だった。闇夜に浮かび上がる青白い光を追いかけて行けば、そこにはあの人の幻があるような気がした。そうして近づいてみると、そこには姫の名を冠する花ではなく、しのび草が静かに佇んでいることもあった。……
     リンクの集めたハイラル図鑑に載っている花は、花をウツシエに収めても実が登録されるマックスラディッシュを除けば、しのび草と、姫しずかくらいのものだ。そして、百年前も今も、リンクがしのび草を「花」として認識しているのは、ひとえにしのび草が姫しずかとよく似ているからだ。
     リンクにとって姫しずかが特別なのは言うまでもないし、その理由について言うならば、先ほどリンクが、ペディが話しているのを楽しそうに聞いているワビスケを見て、「好きな人が、自分の好きな花について話していたら、聞き入ってしまうだろう」と考えたのと、同じ理由だ。
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    四 季

    DONEリンクが姫様に自分の家を譲ったことに対する自分なりの考えを二次創作にしようという試み。(改題前:『ホームカミング』)
    帰郷「本当に、良いのですか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクははっきり頷き、「はい」と言葉少なに肯定の意を示した。
     リンクのその、言葉少ないながらもゼルダの拒絶を認めない、よく言えば毅然とした、悪く言えば頑ななその態度が、百年と少し前の、まだゼルダの騎士だった頃の彼の姿を思い起こさせるので、ゼルダは小さくため息を吐いた。

     ハイラルを救った姫巫女と勇者である二人がそうして真面目な表情で顔を突き合わせているのは、往時の面影もないほど崩れ、朽ち果ててしまったハイラルの城でも、王家ゆかりの地でもなく、ハイラルの東の果てのハイリア人の村・ハテノ村にある、ごくありふれた民家の中だった。
     家の裏手にあるエボニ山の頂で、いつからか育った桜の樹の花の蕾がほころび始め、吹き下ろす風に混じる匂いや、ラネール山を白く染め上げる万年雪の積もり具合から春の兆しを感じたハテノ村の人びとが、芽吹の季節に向けて農作業を始める、ちょうどそんな頃のことだった。ゼルダの知らないうちに旅支度を整えたリンクが、突然、ゼルダにハテノ村の家を譲り、しばらく旅に出かける──そう告げたのは。
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