Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    もえ(BPB)

    @moet124715

    ブ主と主ブと。ポイピクのアカウントの切り替えがよく分からないので、一緒にしてます。すみません。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    もえ(BPB)

    ☆quiet follow

    ブ主で前に上げたものの再掲ですが。
    拙宅受けピアスは基本的に輪王寺咲也で統一してますが、書いたものによって微妙に世界線がズレてますね。今回はあんまり自分から仕掛けていかないピアスのようです。

    #版権BL
    copyrightBl
    #ブ主

    二人の休みと満月と ザーン…ザザーン…
     パチパチパチ…
     潮騒と薪のはぜる音が響く静かな海岸。暗い雲間から覗く仄かな月明かりと焚き火が咲也と秀彦を照らしていた。
    「みんな寝ちゃったっスね−」
     長い枝で薪をつつく秀彦がのんびりと言う。咲也はステンレス製のマグカップを両手で包みながら答えた。
    「そりゃもう夜中だしな」
     日のある内はぽつりぽつりといたキャンパーは、今はもうテントの中だ。日暮れ近くなって海岸にやってきた二人をさして気にするでもなく、それぞれバーベキューにいそしんでいたが、朧な満月が天頂に差しかかる頃には寝るか引き上げるかのどちらかだった。
     今日は秀彦のたまの休みで。前々から満月の日に浜辺で焚き火をしたいと言っていたのだが、奇跡的に咲也の休日とも重なって、このチャンスを逃すまじと出かけてきた。何しろ二人とも忙しい。秀彦は中堅のタレントとして活躍中、咲也は心理学の准教授をしているがやりたいことが多すぎて大学から戻らない日が多々あった。一緒に暮らしているのに互いの顔を見ない日が続くこともままあって、だから何というかこの時間は天からの贈り物のようだった。
    「焚き火、楽しいか?」
    「そりゃもうね! 木が燃えるの見てるだけでも楽しいよ。ほら、炎って同じ形にならないじゃん、だから飽きないっちゅーか。大昔の人もこうやって火を囲んでたんかなーって思うとロマンだしさ」
     後さ、と小さくつけ加える秀彦。
    「照らされてる咲也が綺麗で嬉しい」
     聞いた咲也は微笑した。何も言わず、マグカップを包み込む。一瞬置いて秀彦が問う。
    「咲也は?」
    「ん?」
    「こーゆーこと言わない性格なのは分かってるけど、たまには言ってくれてもいいんじゃないの? せっかくの焚き火だしさ」
    「うん」
    「うんじゃなくて」
    「──態度で示してるだろ?」
     秀彦が勝てない艶美な笑み。揺らぐオレンジ色の光のせいか艶っぽさが増していた。
    「…風が出てきたな」
    「上着、車にあったと思うけど」
    「ん」
     しかし取りには行かずに、咲也は波打ち際に足を向けた。頃は十一月の下旬、火の側でも夜中の風は寒い。自分を抱えたまま黒い海へ行くので、秀彦も何となく後に続いた。
     雲間から見え隠れする月。“あの頃”はフルムーンと言えば悪魔の気が高ぶる厄介な刻限だったが、人間も気持ちが増幅するのは知られた話だ。テンションが高ければより高く、低ければより低く。
    (さあ、俺はどっちでしょう?)
     本当は彼だってラブコールを送りたい。だが元から多くは語らない性分だから、言ってよと乞われても気後れの方が増大している。損な性格だよなと思い、指を噛んだらしょっぱくて。
    (あ)
     咲也はそこで秀彦を振り返った。月を背にしているので秀彦には黒い影としか見えないはずだ。実際、秀彦はどこを見ていいのかと目線を彷徨わせている。
    「ヒデ」
     不安げな彼を短く呼んで、一気に間合いを詰めた。秀彦の肩に手をかけ、近づけた顔をほんの少し上向ける。
     そしてペロリと。
    「ふあっ」
     いきなり唇を舐められて、秀彦は驚きの声を上げた。
    「な、何、さく…」
    「海風でしょっぱいだろ。唇に良くないから」
     語尾を奪ってまた顔を寄せる。ゆっくりと、深く深く合わせて、言わない分の気持ちを込めた。
     ひとしきり求めた後、咲也は耳元でくくと笑った。
    「夜で良かったな、人気タレントのブラウンさん?」
    「さ、咲也…」
    「あっちに戻るぞ、体が冷えた」
     いきなりトーンを普段に戻し、未練もなく離れて焚き火に向かう咲也。ぽかんと見送っていた秀彦は、やおらハッとし大きく叫んだ。
    「なー、夜だったらまたしてくれちゃうの」
    「俺とお前の休みと満月が重なったらな!」
    「どんだけ後」
     さあ?と腕を広げる咲也。秀彦はガクリと肩を落とす。
    「咲也からしてくれるの、珍しいのに…」
    「何か言ったか?」
    「…好きだよぉー! 咲也ぁーッ」
     ヤケになって秀彦が叫ぶと、咲也は笑ってコーヒーを口にした。
     愛しい気持ちは伝えるタイミングってものがあるから。咲也的にはこれで十分。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖❤💞😭🙏💖💖💖💖💯👍💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    もえ(BPB)

    DONEブ主で前に上げたものの再掲ですが。
    拙宅受けピアスは基本的に輪王寺咲也で統一してますが、書いたものによって微妙に世界線がズレてますね。今回はあんまり自分から仕掛けていかないピアスのようです。
    二人の休みと満月と ザーン…ザザーン…
     パチパチパチ…
     潮騒と薪のはぜる音が響く静かな海岸。暗い雲間から覗く仄かな月明かりと焚き火が咲也と秀彦を照らしていた。
    「みんな寝ちゃったっスね−」
     長い枝で薪をつつく秀彦がのんびりと言う。咲也はステンレス製のマグカップを両手で包みながら答えた。
    「そりゃもう夜中だしな」
     日のある内はぽつりぽつりといたキャンパーは、今はもうテントの中だ。日暮れ近くなって海岸にやってきた二人をさして気にするでもなく、それぞれバーベキューにいそしんでいたが、朧な満月が天頂に差しかかる頃には寝るか引き上げるかのどちらかだった。
     今日は秀彦のたまの休みで。前々から満月の日に浜辺で焚き火をしたいと言っていたのだが、奇跡的に咲也の休日とも重なって、このチャンスを逃すまじと出かけてきた。何しろ二人とも忙しい。秀彦は中堅のタレントとして活躍中、咲也は心理学の准教授をしているがやりたいことが多すぎて大学から戻らない日が多々あった。一緒に暮らしているのに互いの顔を見ない日が続くこともままあって、だから何というかこの時間は天からの贈り物のようだった。
    1690

    related works

    recommended works