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    kxxx94dr

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    94/ドラロナ(五十路、やもめ、Δ)ミニパパ
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    kxxx94dr

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    パパルドくんとミニルドくんと真壁くん
    アイドルパロです
    ハッピー時空なアイドルがめちゃくちゃかわいい…!
    そのうちミニパパになるパパとミニルドくんですが、今は何もありません

    *独自解釈アイドルです

    #ミニパパ
    mini-dad

    ぼくのゆめ「将来の夢?」

     僕は持っていたペンを止めた。卒業文集の定番といえば定番のこのお題に、なんで動揺してしまったのかはわからない。いつもみたいに何かおっきな夢と、それに対する明るい目標を書いて綺麗に纏めればそれで終わりだ。宿題なんて大体が求められているものがあって、それを当てていくゲームみたいなものだ。
     こうすればいい人って言ってくれる。こうすればちゃんとしてるねって思ってもらえる。普段だってそうだ。授業も学級会も、なんでも好きなことを言ってねって言われても、本当は求められてる答えがもうあるんだ。
     だからいつからかゲームみたいだって思った。だからこれも将来は人の役に立てる仕事を上げて、誰かのために頑張ります、なんて書けばそれで終わりなのも分かっている。
     けどだめだった。もう、本当の夢があったから。ずっとずっと憧れてた夢。誰にも言ったことはなかったけれど、昔から一つ夢があるんだ。笑われるかもしれない。でもずっと思っていた。叶えるまでは誰にも言わないって決めていたから言ったことはなかったし、これからも言うつもりもないけれど、でも嘘はつけなかった。絶対に叶えたい、僕の夢。
     僕はシャーペンをカチカチと鳴らした。






    「みんなー!会いたかったよー!」

     会場からいくつもの声が聞こえた。名前を呼んだり、会いたかったって返してくれたり。僕が言ったことで声だったりペンラだったり、皆色んな反応してくれる。泣き出したり笑顔になったり、ここにいるだけで皆が何かを感じてくれている。自分がそんなきっかけを作れてるって思うと、つい頬が緩みそうになっちゃうんだ。あ、今目があった子、泣きそうになってる。

    「顔」
    「あ、ごめん」

     すれ違いざまこそっと耳打ちされた無音での注意に慌てて顔を引き締めた。そうだ、今はコンサートの最中で、それもまだ始まったばっかり。ここにいる子達は『王子様』な僕を見に来てくれてるんだから、ちゃんと王子様にならないと。
     気合いを入れ直すと、隣で並んで踊ってる真壁くんは笑っていた。クールな顔で踊ってるけど、こうして優しいとこがある彼だから一緒にやってても楽しいんだろうな。
     二歳年上の真壁くんは、いつもこうやって周りに気を配る頼りがいのあるお兄さんで、自分のこと以上に色んなことを気にしてくれてる。レッスンの時も、撮影の時も、そしてコンサート中も。これ以上ないくらい頼もしい相棒だ。
     けれど一旦オフに切り替わると急に幼いとこが顔をだして、年下みたいなとこを見せる。真壁くんファンは気付いてるみたいだけど、カメラの前のあの大人びた顔の下には優しい顔が隠れてる。

    『DOUBLE M』

     次の曲は僕たちのユニット名で、デビュー曲。忘れられない思い出の曲。オーディション勝ち抜いてデビューが決まってもレッスンばかりで中々先が見えなくて。そんな中ユニットでと真壁くんと出会って、デビューが正式に決まったあの瞬間を僕は忘れない。ようやく夢への一歩が踏み出せた。
     そしてレッスンに追われたある日、社長に芸名はどうするのかと聞かれた。最近は本名のままの人が多いし、真壁くんもそのままだと言っていた。

    「ミニルドで。ミニルドでお願いします」
    「まあ、お前の容姿ならそれでもおかしくないけど、何か理由があるのか?」
    「ずっと前から決めてたんです。もし僕がデビュー出来たら、この名前にするって」
    「そうか、わかった」

     真壁くんとミニルドでってことでユニット名はすぐ決まった。ボーカルレッスンもダンスレッスンもキツくて、でもそれがデビューが目前なんだと思わせてくれて気持ち良かった。毎日くたくたになって、でも疲れてるなんて思う暇もなかった。

    「…………え?なんで」

     その日もレッスン室に駆け込むと見知った顔があった。

    「今日から振り付けに入るからな」
    「……なんで……父さんが!?」
    「仕事だよ」
    「だからって……」
    「やあ、君が真壁くんだね。よろしく」
    「あ……よろしく、お願いします」

     僕の声が聞こえてないのか、父さんは真壁くんと握手している。何が起きてるのか理解できていないのは僕だけみたいで、父さんは当たり前な顔でそこにいた。
     たしかに今日からデビュー曲にあわせたダンスレッスンがあるとは言われていた。けど今回の曲の振付師が父さんだとは聞いていない。当然僕が言ったわけでもないのになんで。
     本当はデビューまで父さんには内緒にしておきたかったけど、さすがに未成年の僕は契約の時に言わないわけにいかなくて、父さんに説明して事務所まで一緒にきてもらった。その時社長と父さんが知り合いだったってことを初めて知った。だからこれはきっと、社長が僕に内緒で父さんに話を持っていったんだろう。

    「デビュー祝いに、父さんかっこいいのを作ってきたから」
    「父さん……!」

     思わず抱きついてありがとう、ありがとうって言っていたら、真壁くんがあとで仲良いんだねって笑ってた。だから僕は、僕の一番大切な人なんだって答えたら、また笑ってくれた。
     デビューして、皆にちゃんとアイドルだって認められたら父さんに振り付けてもらえるかもしれない。そんなことは思ってないと言ったら嘘になる。頑張ったご褒美にって一回くらいは我儘も聞いてくれるかな、程度には考えてた。それがデビューと同時に叶うなんて、夢でも見てるのかなって思わずほっぺをつねった。痛かった。そしてそんな僕を見て二人は笑ってた。






    「はい、できました」
    「ありがとう。確認するね」

     書き上げた文集の用紙を先生の机に持っていった。先生はにこにこしながらそれを読んでいた。うん、大丈夫だね、って先生は笑って言ってくれた。

    「これ、お父さんのこと?じゃあ何かお店やるのかな」
    「ナイショです!」
    「そっかぁ、残念。でも叶うといいね。お父さんのお店も素敵だって評判だもんね」
    「ありがとうございます」

     父さんのお店が褒められるのは嬉しい。シンヨコでバーを経営してる父さんのお店は、オシャレだしお酒も美味しいって雑誌とかにも特集されてる。バーの制服を着た父さんはカッコよくて僕の自慢。みんな凄いねってたくさん褒めてくれる。
     僕もカウンターに立ってる父さんは大好き。けど知らない人も多いのかもしれないけど、父さんは昔アイドルだった。カッコいい衣装を着て、キラキラ光るステージで歌って踊っていた。
     昔少しだけって見せてもらったそのステージが忘れられなくて、あの日から僕の憧れになった。笑顔がキラキラしてて、踊ってる父さんもそれを見てる人たちも笑顔で楽しそうで。なんで僕はこれを見れなかったんだろう、って少しだけ悔しかった。
     父さんはもうアイドルを辞めていて、僕が知った時にはバーテンダーの父さんになっていた。けどみんなは知らないのかも知れないけど、父さんは今も踊っている。バーテンダーもしながら振付師として今も踊ってるんだ。テレビにはあんまり出ないから知らない人も多いけど、今でも父さんが踊ってるのはカッコいい。ステージじゃないのにキラキラ光って見えて、目が離せなくなっちゃうんだ。
     一回だけ連れてってもらったお仕事の現場で、静かに待っててって言われてたけど、そんなことも忘れるくらい僕はぽかんとした顔で父さんが踊るのを黙って見てた。いい子に待っててくれてありがとうな、って父さんが近付いてきた瞬間、思わず拍手しちゃって父さんが照れて笑ったのを覚えている。だって今まで見たどの父さんよりカッコよくて、別の人かなって思うくらい輝いてて。父さんってすごいんだって思った。
     僕の父さんをしてる父さんも、バーテンダーの父さんもカッコいい。けどあの輝いてる父さんを見ちゃったらもう忘れられなくなってた。あの日から僕の目標になった父さん。

    『将来の夢。
     僕には目標があります。ある人みたいになることです。その人は今まで僕が見た中で一番キラキラとしていて、思わず喋れなくなっちゃうくらいカッコよくて、こんな人がいるんだと思いました。真面目な人、運動ができる人、勉強ができる人。すごいことができる人はいっぱいいるけど、いるだけでつい見ちゃう人は初めてでした。
      だから大人になったら僕もその人みたいになりたい。そして色んな人を笑顔にしたい。自分が誰かを幸せにできたら、きっと僕も嬉しいから。僕はその人を見た時にすごい楽しいって思ったし、笑顔になってもっと見たいって思ったから、そんな人に僕もなりたい。
     けどこれはまだ秘密なんです。その人にも、他の誰にも。いつか夢を叶えたら、一番にその人に言いたいから。叶うまでは誰にも内緒なんです。
     早くその人に夢だったんだって、目標だったんだって言えるように頑張ります。』


    ――父さん、僕の夢は父さんみたいなアイドルになることだったんだ

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