黒死牟に芸妓の擬態(現代軸で女装でもオッケーです!)を要求する無惨様 己のスケジュールを完璧に管理する無惨だが、たまにダブルブッキングしてしまうこともあるのだ。次から次へと予定を詰め込んでしまう性急な性格に加え、現代のように電話ひとつで変更が出来るような便利な時代ではない。
人との付き合いが主である仕事柄、突然頼まれて断れないという場面も多いのだ。
そのダブルブッキングは突然訪れた。
「商談で自分のいる座敷に行くことになった」
顳顬を押さえながら無惨は苛立った様子で言う。
貿易商の集まりで見覚えのある社長がいるなと思ったら、芸妓をしている時の御贔屓さんだと思い出した。海外なら青い彼岸花があるのではないか、と宮内庁や政府に出入りしている貿易商とは必ず繋がりを持っている。時々、それが月彦としての付き合いか、芸妓として座敷で会ったのか解らなくなるくらい、多くの人間と馴染みになっているのだ。
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