なあ、と隣の恋人に呼びかけた声は、自分でもよくわかるくらいに拗ねていた。自覚してしまうとすぐには言葉を続けられなくて一瞬口ごもってしまった。からかうように零れた笑い声を睨みつけて、小さく咳払いしてからブラッド、ともう一度呼びかける。楽しそうな声が何だよ、と答えて、それに合わせるように顎の下をくすぐられた。
「これ、そんなに楽しいのか?」
言いながらブラッドリーの指先を突く。恋人に触れられるのは好きだけれど、こんな風にどこかのペットみたいにはしてほしくない。普段は違うだろと訴えれば、そうだったかと白々しい言葉が返ってくる。覚えてねえなと言われて、それでようやくカインにもブラッドリーの考えが読めた。だったら見本を見せてみろとか、そんなことを言うに決まってるのだ。
1218