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    さくま

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    さくま

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    #ドラロナ
    drarona

    ロくん誕! 八月六日。いや、日付が変わり、八月七日〇時。
     仕事を既に終えたロナルドは、寝る支度をしていた。愛用している派手なパジャマに着替え、歯磨きをし、スマホで仕事の予定が入っていないことを確認する。
     なぜかギルドや吸対からも、八月七日は終日仕事を休んではどうかと言われていた。疑問に思ったが、たまには休みもいいなと思ったから、部屋でゆっくり過ごすつもりだ。
    「さてと、そろそろ俺は寝るわ。おやすみ、ジョン」
    「オヌヌヌー」
     そばでゲームをしているジョンに声をかけ、ソファを広げてベッドにしていると、キッチンにいたドラルクが声をかけてくる。
    「ロナルドくん。今日の夕方ドラドラキャッスルマークⅡで夏祭りするから」
    「俺ん家だけど?! 夏祭り!?」
     突然の思いもよらないドラルクの発言に、どこからツッコめばいいのか分からない。
     しかし夏祭りなんて、仕事絡みでしかなかなか行けないから、出店ふうの食事が出ることは楽しみしかない。
    「つまりあれか? チョコバナナやたこ焼き、かき氷とか、夏祭りの定番メニューをお前が作ってくれるということか?」
    「ふふふ。私を舐めてもらっては困る。射的や綿菓子も用意しようじゃないか!」
    「おおお!」
     思った以上に本格的な夏祭りを再現してくれるようで、ロナルドの期待は最大値まで上がる。
    「ヒナイチくんや半田くんや他の退治人たちから仕事入れるなと言われただろう? もちろん入れてないよね」
    「あっ、そのためか!?」
     なるほど。夏祭りをやるから仕事を入れるなと言われたのか。
     あれ?
    「ちょっと待て。じゃあ何で俺が直前まで知らないんだ?」
    「主役だからね」
    「主役?」
    「ここでみんなを呼んでやるのに、直前までロナルドくんだけが知らないという状況がおもしろいからに決まってるでしょ!」
    「はぁ?!」
     というと、前にドラ公のじいさんが計画したハロウィンパーティーの夏祭り版ってことか。狭い狭いと言っていたくせに夏祭りをするなんて。
    「一八時にはヒナイチくんや半田くん、もちろんギルドの人たちやお世話になっている吸対の人たちも呼んで盛大にやるから。じゃあよろしくね」
     言いたいことを全部言ったというように、ドラルクはご機嫌のまま家事の続きをし始めた。

    ✳︎

     時刻はニ三時三○分を少し過ぎたところだ。
     ドラルクが企画した夏祭りは、ロナルドが思った以上の人たちが集い、大盛り上がりの中、お開きの流れになろうとしていた。
    「ヒマリ、遅いからもう泊まっていくか?」
     夜はもう遅い。大学生だからといって、妹ただ一人が夜道を歩いていいわけがない。
    「ん。恋人。時間」
     しかしヒマリは首を横に振り、ロナルドの誘いを断った。けれど、恋人、という単語をヒマリに対して過保護のロナルドが聞き逃すわけもなく。
    「はっ?! こ、こここここここ、恋人?」
     明らかに動揺をしてしまう。
     まさかヒマリ、これから恋人と会うと言っているのか? こんな遅い時間に……? で、でも、ヒマリはしっかりしているからな。交際まで口を出すわけにも……。
     納得しきれないが、せっかくドラルクが企画した夏祭りが大盛況のうちに終わるのだから、ここで根掘り葉掘り聞いて台無しにするわけにもいかない。
     目の前にいるヒマリを見ると、ヒヨシとアイコンタクトを取っていることに気づく。
     ヒヨシはロナルドが見ていることに気づくと、車の鍵を見せる仕草をし、ヒマリはヒヨシを指差す。
     まさか兄貴公認!? え、俺、知らないけど! いや、兄貴もこんな遅い時間にヒマリを恋人のところまで送り届けるわけがない! えっ、ということはつまり……。兄貴とヒマリは付き合っている!? いや、二人が幸せなら俺は応援するつもりだけど……!
    「小兄」
     動揺しまくりのロナルドにヒマリは声をかける。
    「私たち、応援。ま」
    「ああ、またな……」
     ヒヨシとヒマリが部屋から出ていくのを呆然として見送る。
     私たち、応援。
     や、やっぱり付き合ってる……!
    「なに固まってるんだい、ロナルドくん」
     背後からドラルクが声をかける。
    「びっくりするじゃねえか」
    「驚いて殺すな!」
     反射的にドラルクを殴ってしまったが、部屋を見るとドラルクとロナルドとジョンだけが残っていて、あとのみんなは帰ったらしい。夏祭りの気分を味わう道具も、ほとんど片付いてしまっていた。
    「いやぁ、大盛況だったねぇ。さすが私だ。よくまとめ上げた。ところで、ロナルドくん」
     砂から戻ったドラルクはジョンを抱きながら、ロナルドに笑顔で話しかける。
    「デザートが入る余裕はあるかい?」
    「デザート?」
     チョコバナナは食べた。買ったのかどこからか借りてきたのか分からない綿菓子をつくる機械を使って綿菓子も食べた。なのに、デザート。腹はまだ入る余裕はあるが。
     意味が分からないロナルドだが、自宅に使っている部屋へと通じるドアをドラルクが開ける。
     机の上には、HAPPY BIRTHDAYと書かれた大きなケーキと花瓶に活けた向日葵三本がある。
    「えっ、これ、これは……?」
     目の前の状況を理解していないロナルドが、ドラルクとジョンを見る。
     ドラルクがしてやったりというようにニタァとジョンと笑う。なんだ、その顔は。
    「お、もうそろそろか」
     ドラルクはスマホで時刻を確認しているようだ。
    「三、ニ、……、HAPPY BIRTHDAY! ロナルドくん!」
    「ヌヌヌヌヌン、オヌヌヌヌー!」
     ロナルドは自身のスマホを確認する。
     八月八日。時刻はちょうど○時。
    「いやぁ、君は私とジョンだけに祝われるより、仲のいい人たちに祝われる方が楽しいだろう。前日だがね。でも恋人の特権で、日付変わった直後、最初におめでとうと言うくらいにはいいだろう?」
     ようやくドラルクの真意を理解する。
     つまりこの夏祭りの企画は、ロナルドの誕生日を祝うためのもので、ドラルクとジョンがロナルドに内緒で計画したものだった。そして今日集まってくれた人たちは、ロナルドの誕生日を祝うために集まってくれたのだと。
     ロナルドは嬉しくて泣きそうになるのを堪え、恋人であるドラルクの肩にゆっくりと頭をつける。
    「ロナルドくん?」
    「ドラルク」
     ロナルドの手はマントを掴むが、おずおずとドラルクの手へと移動する。
    「……ありがとう」
     耐えきれず、泣いてしまったのをドラルクは気づいているだろうか。
    「君が喜んでくれたようで満足だよ」
     ロナルドの最大の賛辞を冷静に受け取ったドラルクだが、内心は初めてロナルドから抱きつかれ、ドキドキで死にそうになっていた。
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