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    あるぱ

    一次創作のBLなどを書く

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    あるぱ

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    三題噺のお題で作成した世紀末BL/30分

    #創作BL
    creationOfBl

    最果てにて


     どうして、うつくしいものは脆いのだろう。ぼくは見下ろしながら、何度も繰り返しそう呟いた。チカリチカリと明滅するカラフルな光が、彼の肌色を奇妙な色へ変化させる。ぼくは床に座り、彼の顔に顔を近づけた。かすかに感じる呼吸音。思わず、ほっとしてしまう。
     ぼくがほっとするなんて、おかしな話だ。口元をゆがめ、立ち上がった。それから、薄暗い室内を見渡す。
     廃屋は荒れ果てていて、もはや人間の生活したあとも朧気だ。ただ大きなクリスマスツリーの電飾だけが、滑稽なほど景気よく光る様を、いつか彼は悪夢みたいだねと笑っていた。あれはいつだったか、と思い出すまでもなく、ぼくには三十二日と十一時間、二十三分前のことだと分かる。
     貴重なガソリンと発電機なのに、彼はこのツリーの電飾にそれを使った。たぶん、あの時からもう、だいぶ壊れていたのだ。
     ぼくは部屋を横切って外へ出て、雨水を集めるために作った仕掛けから、コップに水を汲んで彼の元に戻った。本来ならば濾過して、一度沸騰して冷ますべきということは理解していたが、いまとなってはそんなことはなんの意味もない。彼の生命がいつ消えたっておかしくないことは、専門外のぼくにも理解出来た。日に日に痩せ、呼吸音も少なくなっている。心拍数は低値で安定しているが、ときどき不整脈も見られる。だからこの水は命をながらうためではなく、彼の渇きを癒すためのものだ。
     指先を水に浸して、彼の唇に触れる。昨日コップで飲ませようとした時は盛大に噎せてしまったので、今はこうして湿らす程度にしている。彼の舌が微かに動いて、ちゅ、とぼくの指を吸う。その動きにまたぼくは安堵する。
     一頻り吸うと、彼は重たそうに腕を持ち上げ、ぼくの手首を掴んだ。名前を呼ばれ、ぼくは彼の隣に横たわる。
    「つめたいな」
     ぼくを抱き寄せて、彼は言った。
    「すみません」
     ぼくの言葉に、彼はかすかに笑った。
    「違うんだ、ひんやりしてて、気持ちが良い」
     彼は瞼を閉じて、ぼくの頭を撫でた。
    「バッテリーは」
    「省エネにしていますがあと僅かです」
     彼は微かに眉を寄せた。
    「最後のガソリンを、使ってもいいんだよ」
     ぼくは、クリスマスツリーの片隅に置いてある一斗缶の中身を思い出した。缶の底に、本当に僅かにあるばかりだ。
    「いいんです。そんなことは、ぼくには意味の無いことです」
     あなたのいない世界で、ぼくが存在する必要は無いのです。
     そういうと彼は少しだけ困ったように口元を緩め、
    「そうか」
     と、彼は言って、固く口を閉ざした。
     彼が死ぬと、人間は絶滅ということになるらしい。オンラインの回線も全て死んでしまった今、それが真実かどうか確かめようもないが、しかしぼくにとってはどちらも同じことだ。
     彼のいない世界は、つまりぼくにとっての世界の終わりなのだ。
     眠ったのだろうと思ったのに、微かに鼻歌が聴こえてくる。掠れた、調子の外れたメロディ。ジングルベルと、譜面が八割一致する。
     ぼくは、彼の体をそっと手のひらで辿った。脆くてうつくしい、彼の肉体。彼が死ねばこれも、野犬に食われ、微生物に分解され、ほとんどなくなってしまうんだろう。そのことが、いまはひどく羨ましかった。感じられる体温は微熱傾向にある。ぼくは彼の心臓にてのひらをあて、目を閉じた。
     この心臓が止まるその瞬間まで、ぼくはこうしているだろう。そうして、彼が朽ち果てて、その姿形をなくしてもなおここにいることにしよう。ここがぼくの世界の果てなんだから。


    おしまい

    あるぱは「電気」「クリスマス」「最後の廃人」を使って創作するんだ!ジャンルは「純愛モノ」だよ!頑張ってね!
    #shindanmaker #sandaibanashi
    https://shindanmaker.com/58531
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    あるぱ

    DONE三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー 1598

    あるぱ

    DONE三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???) 恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色 2162

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