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    Wayako

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    Wayako

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    無題の拳兄側。
    地獄でしかない。

    #拳ミカ
    fistMicas

    無題(2)サイド、K

    知られなければ、それはなかったことにならないだろうか。
    例えば、壁に落書きをして、それを誰かに見られる前に綺麗に消し去れば、そこにはただの壁があるだけで、汚れていた事実は落書きをした誰かの記憶にだけ残る。それつまり、なかったことと同じことだ。少なくとも、ケンの中ではそう定義した。
    だから、これは、なかったことになる。
    「ミカエラ」
    静かに寝息をたてる弟の耳にそっと囁き、シャツの裾から手を入れる。決め細やかな白い肌をなぞり、自分とは違いまだ柔らかな腹に触れる。ふにふにとした肉の感触が手に吸い付き、それだけで体が熱を帯びた。弟の顔を覗き込みまだ寝ていることを確認し、髪に鼻を埋める。ミカエラの匂いを胸いっぱいに吸い込み吐き出すと、だんだんと腰が重くなり、抱え込んだ小さな体にそれをぐっと押し付けた。身動ぎ一つせず、弟はよく眠っている。それをいいことに、腰を少し揺するとそれが服の上からももにすれ、弱い快楽がびりり、と駆け上がる。
    これ以上は、だめだ。
    興奮に蕩けてきた頭の中で、残った理性が警鐘を鳴らすと、名残惜しくも体を離す。再び顔を覗き、寝ていることを確認してそっと部屋を出て、自室へと早足で向かう。駆け込むように部屋に入るとまだミカエラの腹の感触が残る手で、高ぶったものを掻き上げた。

    こんな悪質ないたずらをはじめたのがいつだったのか、ケンは覚えている。はじめは遊びつかれ眠るミカエラが可愛らしく、ちょっとしたいたずら心で腹を撫でただけだった。ただそれが、あまりに自分とは違い、まるで女のように柔らかなものであったせいで、ケンの中にあった成長期における性への興味と欲に結びつき、小さく美しい弟への欲情となって溢れてしまった。こんなことはいけないと頭で理解しながら、何をしても眠り続ける弟に甘え、知られなければなかったことになると、何度も繰り返してはこうして自室で自身を慰め、死にたい気持ちになる。次の日の宵の口に部屋を訪ねミカエラに会えば、そんなことなど知りもせずに兄を迎え入れる弟に同情しながら、別れる明け方には沸き上がる欲を抑えきれずに安心して眠る弟にそうしてしまう。
    前は、一度吐き出せば数日は安心して兄としていられた。しかし最近では我慢が効かず、毎日のようにミカエラを求め、部屋を訪れてしまう。
    それでも唯一の救いは、まだケンがミカエラの兄だということであった。
    弟を傷つけたくなどない。囁き、匂いを嗅ぎ、触れて、少し押し付ける。それ以上のことは兄としての矜持が働き、することはない。
    ケンが一番怖いのは、ミカエラが起きることだ。欲の対象とされている事実を知られることだ。だから、何度も寝ているか確かめては、とじ続ける瞳に安堵した。
    だって、ケンにはミカエラだけなのだ。子を優秀な駒としてしか見ない母に、顔も知らない父、屋敷に居座る一族たちは母に向けるものと同じ嫌悪でケンを見る。ミカエラだけが、ケンの唯一の家族なのだ。
    そんな家族に、こんなことをしといて何が、と吐き出した熱を布で拭き取り、棺桶に入り込んだ。

    ある事件をきっかけに、衝動的に家を出たのはその数日後であった

    そんなとち狂った青年期の記憶を思い出したのは、飲み会でつぶれたミカエラを御殿に送り、その体をベッドへ転がしたときであった。幼い頃とは違い、ずいぶんと逞しくなった腹筋を見つめる。今やそこに女など重ねないし、思春期の異常な性欲はない。ただ何とはなしに、その腹を撫で上げ、飛び起きたミカエラの瞳に染み付いた絶望と嫌悪と拒絶の色に、ケンは全てを理解した。
    ミカエラは全て気づいていた。
    気づいて、寝たふりをしていた。
    そして、自分の本当の望みにも気がついた。
    本当は、ミカエラに起きて欲しかった。何度も寝ているか確かめては、その瞳が開いて、この想いを知ってはくれないかと望んだ。そうして、ミカエラに受け入れてもらいたかった。今だって。

    知られなければ、なかったことになど、ならない。
    例え、いくら綺麗に消したとして、そこにあるのは汚い落書きがあった壁であり、元には絶対に戻らないのだ。
    それと同じ様に、欲に負け、傷つけ続けた弟の心が戻ることは決してない。

    俺は今、どんな顔をしているのだろう?

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