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    ii0314

    今は主にピオイアや長晋、エドシロとか書いてます。他のもジャンル転々と書いたり書かなかったり。
    基本pixiv前に先行して投下してます。

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    ii0314

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    基本的にぐだを気にかけてる社長とぐだの話。
    長晋はおまけ程度だけど社長の思惑としては別におまけではない。二兎追って結果だけ残った。

    また会える日を待ち続ける。「ここって写真機があるのか?」
     第一声。身支度を終えた藤丸がさぁ食堂へとドアを向いたタイミング。ノックも無しに扉を開いたサーヴァントからの問いだった。
    「おはようございます・・・・・・? どうしたんですか朝から」
     扉を開けたサーヴァント、高杉晋作は無遠慮にマイルームへ足を踏み入れる。長く垂れた白い袖と梅色の髪が揺れた。
    「ああ、おはよう。さっき首から携帯型写真機を下げている長髪の男を見かけたんだが」
    「ゲオルギウス先生のことです?」
     カメラを持ち歩いているサーヴァントで真っ先に思い浮かぶのは一人だ。長髪であるのなら十中八九ゲオルギウスのことだろう。
    「うーん、他にもあったかな」
     ゲオルギウスの持つカメラは過去に藤丸が渡した物だ。元はカルデアの備品であるそれの在庫状況は把握していない。
    「ないなら作るか。よし、もう一度しっかり見せてもらおう」
     ダ・ヴィンチあたりに聞けばわかるかな、と思考を巡らせていた藤丸を余所に高杉は身を翻す。声を出す間もなく梅色の髪の端まで見えなくなっていた。
     反射的に呼び止めようと上げた腕が宙で止まっている。
    「フォウ?」
     一体なんだったのか。その心中を代弁するようにベッドの上でフォウが鳴いた。

     藤丸の部屋を出てすぐ。別れたばかりの目的の人物を見つけるのは容易かった。高杉としては逸話も名前も知らないサーヴァントであったが聞きたいことを聞くには関係ない。一言、二言交渉するとゲオルギウスと呼ばれた彼はすんなりと高杉に写真機を渡した。人を疑うことを知らないのか、それともカルデアではこれが普通なのか。後から聞くとこの彼は聖人と呼ばれる者らしい。その出で立ちについて詳細を聞くことはなかったが、その呼称だけこの一連のやりとりに納得は得た。ともあれ、数日で返すとした約束を高杉も違えることはなく。藤丸のもとを尋ねた四日後には高杉の手元にもゲオルギウスと似て非なる写真機が完成されていた。

     幾つかの改造が施された高杉の写真機はダ・ヴィンチ工房で密かに量産された。魔力を込めるとその場に浮き出る仕様がついたそれは、何に使うのか耐久性も優れ、シャッターを押すとビームを出すこともできるおまけ付きだ。最初は変わった機械に興味を示した機械系サーヴァントが手に取るのみだったが、いつしか他のサーヴァント達の目を引きちょっとしたカメラブームをカルデアに引き起こしていた。
    「もしかしてこれで商売起こすのが目的だったりします?」
     写真映えのするシミュレーターを使ったり、ビームで遊んだりとそれぞれ思うがままに写真機を使い回すサーヴァント達。それを尻目に酒を煽る高杉のもとへ藤丸が声をかけた。
    「まさか! これはただの趣味の範囲だ。今はこんな便利なものがここまで気軽に使えるんだし、たくさんあって損はないだろ?」
     空いた手で写真機を藤丸に向ける。身構える間もなくシャッターは切られ、そのまま投げ渡された。
    「君も好きに使うといい。ここは変わり行くものと変わらず残るものが混ざり合う場所だ。その希有な瞬間を切り取っておくのも粋だとは思わないか」
     そう満足げに笑う高杉をフィルム越しに眺める。高杉の言う混ざり合う瞬間をじっと待ち、こちらに向かってくるマシュとフィルム越しに捉えた瞬間にシャッターを切った。

    ***

    「ほーん。高杉のやつ、そんなことを言っておったのか」
    「意外と感傷的なんですかね」
     カメラシャッター対決だか何だか。シャッターのビームを先に当てた方が勝ちらしい謎の大会を開いたぐだぐだとした集まりに藤丸は足を運んだ。予行演習などといって絶賛シャッター対決を行っていた二人は藤丸とマシュの訪れに一時休戦とした。高杉の話になったのは、そんな大会主催者の二人にルール説明を聞いている最中のことだ。
     高杉の言葉をなぞり、希有な瞬間ですか・・・と無意識に溢れ出たらしい声が隣から聞こえた。
    「よく考えるとすごいことが起きてると感じるときはあるので、その記録を残すのはいいアイデアだと思います」
     先日北斎さんの描いたイースターエッグを撮ってしまいました、と少し照れくさそうにマシュが笑う。藤丸自身もアルジュナとイアソン、小さい熊の方のオリオンが三人でカレーを食べているのをつい激写してしまったばかりだ。違う時代、違う場所、本来なら関わることのなかった彼らが一堂に会するこの場所は希有を通り過ぎて奇跡に近い。
    「私も結構楽しくて好きですよ、これ。斉藤さんなんか変に嫌がるからこの大会の予行演習並みに白熱しちゃいました」
     楽しそうに笑う桜色の剣士の後ろで、スーツの男の苦笑いが見える。相当逃げた様子と結局沖田が勝ったらしいことを食堂で意気揚々と岡田が話していたのも記憶に新しい。
    「しかしこの写真、本当に残るのか? 流出したらいろいろとまずいんでない?」
    「そ、それは・・・・・・。確かに私たちの手元に残ることはないかもしれません」
     易々と持ち出せるわけもないことは薄々と感じていた。機密事項にあたるだろうこれらの記録を藤丸が持ち帰れることはきっとない。
    「大殿ー! 今度はオレとも殺ろうぜ!」
     いつの間にシミュレーターに入ってきたのか。先ほどまでいなかったはずの大柄な体躯にその体躯以上に大きな長柄武器。元気に振り回す槍の先に器用にぶら下げられたカメラが音を立てて風を切る。
    「なーんか変換がおかしいような。あやつ、趣旨わかっておるのか?」
     呆れ口調の信長のもとへ駆けてきた森に藤丸はこれまで会う方々にした問いを出す。 
    「森くんはどう?」
    「あ?」
     主語の足りない藤丸の言葉に一瞬片眉を上げたもののすぐに察して視線を槍の先に向けた。
    「殿様こそどうなんだよ。それ、楽しんでんのか?」
     それ、と合わせてあわや切られるかと思う位置を槍が通り過ぎる。そしてぶらさがったカメラは藤丸の手元のカメラの前で止まった。
     逆に問い返されると考えてもいなかった。幾ばくか逡巡し、けれど答えは最初から分かりきっていた。
    「・・・・・・うん。少しの間でもみんなとの思い出が残るのは嬉しいし、楽しいよ」
     これが最終的に手元に残らないとしても。このカルデアで皆といる間は、きっと何度でも見返すことができるし何度でもシャッターを切るだろう。マシュも隣でしっかりと頷いていた。
    「がはははは!そうかよ! あの社長もたまには役に立つことすんじゃねぇの!」
     そのどこか満足そうな笑みに既視感を覚えるも気に留めることはなく。大会開始の信長の声に合わせ、マシュと共に参加を申し出た。

    ***

     日記の中に、日々撮った写真を挟む。現像はダ・ヴィンチ工房へ行く必要があるが、誰でもできるよう説明書を添えたセルフサービス式だ。二十四時間フル稼働している現像機は夜寝静まった頃に密かに動く音が時折聞こえる。大方、夜睡眠を取らない趣向のサーヴァントやこっそりと現像したいサーヴァントが動かしているのだろう。
    「で、それが本当の目的だったのかよ」
     鎧を脱いで髪を下ろした、これから寝入ろうとしているのが見て取れる姿で森は隣の男に問いかけた。
    「僕らはいつまでもマスターくんの側に居られるわけではないからな」
     脱いだ羽織を丁寧に畳み、日記帳の置かれた台の下へ重ねる。梅色の長い髪を結ぶ紐を簡単に解くと手ぐしで数度整えた。その繊細な指先を森は静かに目で追っていく。
    「それに、仮に記録は残らなくてもこの写真機ぐらいはきっと手元に残る」
     本来魔力の籠もった物は藤丸の手元に残らない可能性が高いが、時が来ればデータ消去と共にただの写真機へと移り変わるよう細工を施してある。高杉にとってその程度の抜かりはない。人理修復後から異聞帯への間のデータベースを漁り、どういったものが藤丸から回収されてしまうのかを綿密に調べ上げていた。
    「中身がなくとも、これさえあればこの日々にまた出会えるはずさ」
     高杉が森の目前で揺らすそれは他の者が持つものとは少し異なる。試作段階でできたプロトタイプの写真機を高杉は使っていた。そこから取り出した一枚の写真を森に差し出す。
    「そしてこれは僕たちだけの記録」
     受け取った写真を暫し眺めた森は何も言わずに布団横へ置いた。懐にしまいすらしなかった森の態度に高杉は思わず吹き出してしまった。
     だがそれでも構わない。いつか消える泡沫の存在であろうと、この瞬間が存在したことはシャッターを切るまでもない事実なのだから。それに、一度起きた奇跡が二度起きない保証もあるまいと。
     遠き明日を見ては、いつしか、
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    ii0314

    DONE長晋3本目
    特異点SAITAMA以来の遭遇をカルデアで果たした二人が、最終的に二人で深夜にラーメン食べる話。
    二度目のラーメンも優しさの味がした。「うわっ」
     カルデア内の曲がり角、何か面白いことでも思いつかないかと当てもなく歩いていた昼下がり。角から現れた大男とぶつかる寸前で一歩足を引いた。カルデア内はもっと巨体の、人だかそうじゃないんだかなものも多いが高杉の知っている基準では十分大男に入る人物が角から顔を出した。
     反射的に出た声は何もぶつかりそうになったからだけではない。真っ赤な髪との境目がわからなくなるほど血濡れた顔や鎧。その装いに少なからず驚きを得たからだった。
    「一応聞くがそれは全て返り血か?」
     一体どこまでが返り血でどこからが彼の血なのかまるで判別がつかない装いの彼に声をかける。彼の逸話を聞く限りでは全て返り血でも不思議ではない。ましてやマスターとのシミュレーション帰りであるならば治療もせずに廊下を闊歩しているわけもなかろうことは予想ついていた。気に留めるほどでもないと思いつつ、それでも声をかけてしまったのは、認識した手前無視するのもどうなのかという気持ちと、幾ばくかの興味。SAITAMAで初めて出会った彼のことを少しばかり気にかけていた。あわよくばもう少し話してみたいとも思っていたのだ。
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