春皆さんはじめましてモブです。そこら辺を元気に生きているモブです。因みに性別は男です。
私、フリーの記者をしていまして、今日は夜景が綺麗で、美味しいと評判のレストランへ取材に来ています。
新生活、新入生、新社会人…。
春は新しい季節、そして芽生えの季節。先ほども初々しいカップルが席に案内されていました。私は一人ですけどね。カップルが羨ましいです。失礼、うっかり本音が出てしまいました。まぁ、お一人様で気楽にいきましょう。ですが、ウエイトレスさん?これはなんの苦行でしょうか?景色の宜しい席の隣に案内するとは
どう考えても隣は景色が一望出来てカップルには最適な予約席ですよね?
そんな素敵な席の隣に男の?一人?淋しい?人間を案内するとは…。
記事にするためにも景色が見える場所がいいと事前にお伝えしていたので、お店のご厚意なのはわかっています。分かっているのですが、心が追いつかないと云うのも理解していただきたいです。
ともあれ、ライトアップされた都会の夜景はとても美しくカップルが多く訪れるのも頷けます。
こんな素敵な場所で愛の告白をされたら頷いてしまいます。
イエス一択です。
おや、席を予約していた方々が来たようです。少しの好奇心でどんな方々か見てしまうのは許していただき…
え?
なべしまけいごさん?
え?
あの、え?
見間違いでは?
目を擦りましょう。視界を確認。よし、正常。では、再度ご確認。
鍋島啓護さんだ…
みみみみみ、見間違いじゃない
世界的にも有名なピアニスト鍋島啓護さんだうわぁ本物だ眉間に皺が凄い気難しくて取材なんて極僅かしか受けないで有名な鍋島啓護さんだ実物初めて見たうおおおお、イケメンンン
落ち着きましょう。彼は今きっとプライベートで来ているはず。私と面識はないとはいえ記者が近くにいるというのは、彼にとってあまり気分の良いものではないでしょう。
残念ですが、今日は帰って後日改めて取材にきま、
え?
鍋島さんと一緒にいるのって、あのバビル出版の佐藤入間君では?
新人ながらに彼が書く記事はどれも素晴らしく「6分間の救出劇」は臨場感に溢れた記事でした。
あ、そういえば以前入間君が書いた記事の中に鍋島さんもありましたね。
あの鍋島さんがインタビューに応えたって私達の界隈で凄い話題になっていましたが…。そこから交流があるのでしょうか?流石「ハーレム王」と異名を持つ入間君。鍋島さんも加わっていたとは…その魅力恐ろしや、ですね。
さて、そうと分かれば…帰るために少し浮かせた腰を降ろしました。
何故って?あの2人が何を話すのか気になるからじゃないですか
なので、今の私は壁でありテーブルであり食器であり無機物と化し彼らに悟られないようにすることです。
あ、ウエイトレスさん帰ってないですよ?無機物になりますしていますが、いますからね?ご飯下げないでください。
さてさて、どんな話をしているのやら?
「今日はお誘いありがとうございます。鍋島さんとご飯をご一緒出来て嬉しいです」
「此処の料理が気になっていてな。他に誘う者もいなかったからな。」
「僕も此処のレストラン気になっていたんです。一緒ですね」
「…そうか。」
おやおや〜?
おやおやおや〜?
なにかとてつもなく甘酸っぱい気配を感じ始めましたよ?
そして、プライベートのようですね。
「でも、本当に嬉しいです。誘っていただけて、僕鍋島さんともっとお話したいと思っていましたので。」
「………そうか。」
恋しちゃったんだ〜多分〜気づいてないけど〜
いや気づいています自覚しています何故って?正面の入間君は見えないかもですが、横から見た鍋島さんの耳、真っ赤ですよ。真っ赤。
あのポーカーフェイス鍋島啓護さんの耳が真っ赤。
ちょ、待ってください。もう、応援します頑張って入間君の方も鍋島さんへの好感度高そうですし、これは…脈ありですぞ
「でも、本当に素敵な夜景ですね。東京タワーもスカイツリーも見えますし、お家一軒一軒の明かりも灯っていて綺麗ですね。」
夜景にうっとりとしている入間君。
入間君、今夜景見ていてよかったっですよ。鍋島さん、君にうっとりしていますから。あれ本当に鍋島啓護さんか怪しくなる程溶けた顔をしていますから。
本当に入間君の事好きなんですね…。
甘酸っぱいですね
入間君の顔が向き直る瞬間に何時もの鍋島さんフェイスに戻りました。
流石ですね。匠の技ですね。
「ご飯も美味しいですし、なによりプライベートの鍋島さんを独占してしまって、今日の僕は贅沢者ですね。」
「大げさな奴だな。そう言う入間こそ何時も忙しそうにしていて今日だって本当に空いていたのかも怪しいではないか。」
「多くの方のお話を聞きたいと思っていたら、の結果です。僕だけの時間ではありません。取材を受けてくださる方がいてこその事です。」
「それに、折角の鍋島さんのお誘いですもん、一緒に過ごしたいじゃないですか。」
「……………そうか。」
い、イケメンですねぇぇぇ入間君…。
可愛い顔して、こうさらっと当たり前のように当たり前に出来ない事を言えるのですから、本当に凄い子ですね。
私も見習わないと、ですね。
あと、鍋島さん頑張ってください?
貴方先程から「そうか」しか返してませんよ?恋は押して押して押しまくる。そう、以前聞いたことがありますよ。押しなさいな。押し倒しちゃいなさいな。
「入間。」
「はい。」
そんな私の願いが届いたのでしょうか。今までの雰囲気を崩し、真剣な表情の鍋島さんが姿勢を正し入間君へ話しかけました。
その雰囲気を察したのでしょう。入間君も表情を引き締め鍋島さんへと姿勢を正しました。
正直、可愛い入間君が表情を引き締めても可愛いんですが、鍋島さんも思っているのでしょうか。
顔に『入間可愛い』と書いてあるように見えます。
錯覚ですね。そう思いましょう。
「今日、誘ったのは話したい事があるからだ。」
「お話、ですか?」
「ああ。もし、聞いている途中で嫌になったら帰ってもいい。」
「そんな!最後まで聞かせて下さい」
「いや、本当に嫌に、俺を嫌になるかもしれない。だから、」
「鍋島さん。僕は鍋島さんが何を言おうと、鍋島さんを嫌いになることなんてありえませんよ。」
キュンときました。
入間君の矢は鍋島さんだけではなく私の胸までも撃ち抜きました。
可愛いとカッコいいを持ち合わせる佐藤入間、恐ろしい子…
矢が刺さったままの鍋島さんも決心がついたのか小さく息を吐き
「好きだ入間。俺と結婚を前提に付き合って欲しい。」
言いました
ドストレートに
これは、決まったのではないでしょうか?
入間君の反応は…?
おぉう…。
茹でダコでしょうか?お顔が真っ赤ですね。大きな瞳は潤んでいますね。大変お可愛らしいですね。
「僕も、鍋島さんが好きです。僕で、よければ喜んで。よろしくお願いします。」
それはそれは、夜景なんて足元にも及ばない程、素敵な綺麗な笑顔で鍋島さんの告白を入間君は受けました。
瞬間
レストラン内で拍手が鳴り響きました。
私だけではなく大勢の客・レストランの従業員がこの2人のやり取りを見守っていたようで、ところどころで「おめでとう」「お幸せに」と聞こえてきます。
漸く自分達に言われていると気付いた2人は周りに頭を下げながらも幸せそうに笑い合っていました。
さて、食事も終わりましたしそろそろ帰りましょう。今日はとても良い記事が書けそうです。心の中で2人にお礼を言いながら幸せな気持ちで帰宅しました。
おしまい