秘密のプロフィール キメツ学園中等部紅葉組、3人の男子生徒が昼休みにだべっていた。竈門竹雄、不死川弘、煉獄千寿郎の3人は兄弟繋がりで以前から面識があったが、中等部に入り同じクラスになったことから仲良くなった。
「そういえば、千寿郎の誕生日っていつ?」
「父上に許可をとって下さい」
「「は?」」
何気ない質問に対する答えが予想外で、竹雄と弘の声が重なる。
「次に、母上の許可をとって下さい」
「「え?」」
「最後に、兄上からの許可がおりれば兄上が教えてくれます」
「ちょ、ちょっと待って」
「はい」
一旦ストップとでも言うように、竹雄が千寿郎の前に手を突き出した。
「俺たち千寿郎の誕生日聞いただけなのに、何でそんな面倒くさい話になってんの?」
「俺自身は覚えてないけど、小さい時兄上に近付きたい人達に囲まれて大泣きしたらしくて…」
「あー」
「わかる」
生徒に大人気の煉獄先生はよく生徒に囲まれている。学生時代も人に囲まれていたであろうと容易に想像できた。
しかし、弟から見れば知らない人に囲まれるのは恐怖でしかない。
「兄上や俺自身の事を色々聞かれたので、自衛のためにいっその事全部断ってしまえって父上が言い出して、兄上が同意して、せめて義務教育までは許可制にしましょうと母上が提案して今の形になっています」
「それ、許可もらえた人いるの?」
「不死川先生達にはお世話になっています」
「実兄達か」
「なぁなぁ、うちの兄ちゃんたちは?」
弘の兄たちが許可を貰えたと聞いた竹雄が、自分の兄と友人たちはどうかと聞いてきた。
「善逸さんは父上の、伊之助さんと玄弥さんは母上の、炭治郎さんは兄上の許可がおりませんでした」
「えー、兄ちゃんならいけると思ったんだけどな」
「兄上によると、許可制にした意味がないと…」
「俺、竹雄の兄ちゃん見て嘘のつけない人ってどんな人かわかった気がする」
「確かに。兄ちゃんなら問詰めればバレる気がする。でも兄ちゃんでもだめか~、俺なんて無理じゃん。弘ならいけんじゃね?」
「絶対無理だって、実兄じゃあるまいし。ラスボスに勝てるわけないって」
「それな」
「ねぇ、ラスボスって誰のこと?」
「「煉獄先生!」」
「兄上より父上のほうが怖そうに見えると思うんだけど…」
「うちの父ちゃんより怖そうだもんな」
「どっちも初見はビビるって。煉獄先生のラスボス感は見た目じゃないんだよ」
片や顔に傷がある男。片や威厳のある道場主。どっちもどっちだと竹雄は思った。
「兄上がラスボスって、意味がわからな「キーンコーンカーンコーン」
昼休み終了のチャイムが鳴り、3人が一瞬動きを止める。
「次の授業ってなんだっけ?」
「数学だよ」
「今のうちから数学頑張らないと、高等部で実兄にぶっ飛ばされるって玄兄に言われてるんだよ」
「冗談だよね?」
「ご愁傷様です」
「…お前らも巻き沿いにしてやる!」
男兄弟といえども手を出す喧嘩をしたことがない千寿郎は冗談だと流すが、兄弟喧嘩をしたことがある竹雄は不死川家の事情を察し、そんな2人を巻き込むと弘は決めた。
こうして千寿郎の誕生日は秘密のまま、中等部の日常は過ぎていくのであった。