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    Hana_Sakuhin_

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    Hana_Sakuhin_

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    ⚠︎ドラみつ♀ 女体化
    三ツ谷の恋愛相談を受ける大寿くん。
    龍宮寺は少ししか登場しません!

    #ドラみつ♀

    大寿くんの恋愛相談室

    「これは友だちの話なんだけど」
    「あぁ? オマエがどうした?」
    「大寿くん、デリカシーって知ってる?」

    昼下がりのファストフード店は、ほとんどの席が女子高生によって占領されていた。アレやコレやと流行りのラブソングや、それなりに際どい彼氏の愚痴で盛り上がっている。その中で三ツ谷の目の前に座る大寿は、随分とミスマッチな光景だろう。

    「日頃のテメェの言動思い返してみろ」
    「あー、お互い様ってやつ?」

    常人なら恐れ震えてしまいそうな大寿の眼光にも、三ツ谷は慣れたもので軽く返す。そうしてトレーに広げたポテトの山から、普段なら妹たちに譲るであろうカリカリのポテトを選んで口に放り込む。長子同士、遠慮はなしだ。

    「まあでもいいや」

    相談ごとは意外に雑多な場のほうが向いている。特段、声を抑えることもなく、三ツ谷は言い放った。

    「男を落とすのってどうしたらいいかな?」

    そのとき、大寿は悟った。最初の時点で友だちの話だと言った三ツ谷の言葉を信じなくとも、受け入れておくべきだったのだ。意趣返しなんてしなければよかった。「あ?」大寿は地を這うような低い声で聞き返したが、もちろん聞こえなかったわけではない。

    「あ、もちろんだけど物理的にじゃないよ」三ツ谷は気にせず続ける。
    「・・・・・・おい」
    「少女漫画もさ、読んではみたんだけど壁ドン床ドンは無理だし、もっとおっぱいも大きければいいけど、ねえ?」

    千冬に借りた甘々な少女漫画じゃ、到底参考にはならない。あれは可愛い女の子がやるから成立する。普段は八戒や大寿と一緒にいるので小柄に見られがちだが、三ツ谷はこれでも百七十センチはあるのだ。脳内でシュミレーションをしようとして、あまりの悲惨さに頭を抱えたくなった、と口早に告げられる。

    一方、大寿も違う理由で頭を抱えたくなっていた。男を落とす、と言われたときに思い浮かんだのは、三ツ谷のお察し通り相手を気絶させるという物理的な方だった。もちろん今になってみれば、それが現実逃避だったってことは百も承知である。だからこそ、この目の前のファストフード店に馴染む、セーラー服の少女の言葉に頭痛がした。

    「知るか。オレにそういう相談をするな」
    「ウン、ごめん。でももう大寿くんにしか相談できないんだよね」

    三ツ谷は見た目はそれなりに不良だが、話してみれば人当たりも良いし、友人も多いだろう。その言葉が嘘だと分かってなお、すぐさま拒否できなかった時点で、三ツ谷にだいぶ絆されている大寿の負けである。

    「・・・・・・ほつれた服でも直してやれ」
    「昨日ボタンつけ直してやったワ」
    「・・・・・・手料理でも食わせとけ」
    「もう両手で足りねぇくらい食わせてる」

    そこまで言ったところで、三ツ谷はニヤニヤと笑みを浮かべた。大寿は嫌な予感がする。

    「やっぱ大寿くんって優しいよね」
    「あ?」
    「つか、手料理ちゃんとおいしいって思ってくれてんだ」
    「都合のいい解釈すんな。帰るぞ」

    本気で帰る気なんてない大寿が形だけ椅子を引くと、三ツ谷は「ごめんって」とジャケットの袖を掴んだ。必然的に見上げてくる藤色の瞳に、大寿は思い切り息を吐いた。妹弟が世話になっているから、なんて言い訳は形になる前に胸中で弾けて消えた。

    大寿はもう一度当てつけのように溜め息をつくと、椅子に座り直した。三ツ谷の顔が目に見えて安心の色を浮かべる。

    「・・・・・・告白はしたのか?」
    「当たって粉砕しろってこと?」
    「テメェは鈍いからな」

    もはや相談というより会話のドッジボールである。三ツ谷は机に上半身を預けて、紺色のセーターからちょこんと出た両の指先でシェイクを持った。薄い唇にストローから桃色の液体が吸い込まれていく。

    「テメェにしちゃあ随分と弱気だな」
    「だてに五年も片思いしてないよ」

    出会ったあの日から、ずっと。三ツ谷は彼の人と揃いの龍が刻まれた右のこめかみに、そっと触れた。背後の窓から春の麗らかな光が差し込み、伏せた長いまつ毛が整ったその顔に影を作る。

    その憂いを帯びた三ツ谷の姿は、女子高生だとは思えない。いっそ目に毒なほど、色香を纏っている。大寿は眉間に深くしわを刻んだ。この女をそういう対象で見ることはないが・・・・・・、大寿の脳裏に牽制するかのように、左のこめかみに龍を泳がす男が浮かんだ。

    「もっと女の子っぽかったら良かったのかなァ」

    三ツ谷は呟いた。喧嘩に明け暮れた日々は、まだ記憶に新しい。男連中に混じって、いつだって体を張ってきた。周りの女の子たちが恋バナをしている間に、女であることで舐められないように拳を握ってきた。そのことを大寿もよく知っている。

    「でもさ、それでもアイツの背中を追いかけたこと、後悔してねぇンだよな〜」

    ふっ、と三ツ谷は笑った。あの頃も、そして今も。背中を合わせた日々を誇りに思うこそすれ、後悔することはないと断言できる、と。いっそ朗らかな笑顔だった。


    「おい、三ツ谷」

    かたり、テーブルが音を鳴らした。名前を呼ばれた三ツ谷は顔を上げて、大寿の顔の近さに「な、に・・・・・・」と目を見開いて先の言葉を失う。ふわりと香水特有の甘い香りが、鼻先をくすぐった。

    「たいじゅ、くん」

    すぐそばに男の顔があり、今にもキスをされてしまいそうという状況なのに、三ツ谷は呆けた顔をして固まっている。存外、警戒心がない。大寿は険しい顔をして、藤色の瞳を睨みつけた。

    「・・・・・・シェイク、口元についてるぞ」

    言いながら三ツ谷の口元に伸ばした大寿の手は、彼女の背後から伸ばされた大きな手のひらによって阻まれた。大寿にのみ向けられる、その人を殺さんばかりの眼光は薮をつついて蛇を――龍を出した代償だ。

    「独占欲だけは立派なもんだな」
    「生憎だが、コイツにはオレのもんだって印が、とうの昔から刻まれてんだよ」

    大きな手のひらに口を塞がれて、突如として現れた龍宮寺の名をもごもごと呼ぶ三ツ谷。その右のこめかみを、見せつけるように節くれだつ指先が撫でる。大寿は何度目かになる溜め息をついた。当て馬になる気はない。

    「勝手にしろ、帰る」

    席を立った大寿に、龍宮寺の両手を引き剥がした三ツ谷が顔を真っ赤にしながら「た、大寿くん!」と叫ぶ。どうしよう、と見つめてくる目が混乱している。

    「もう二度とテメェの相談には乗らねェ」


    しかし、吐き捨てた大寿は知らない。
    このあとも三ツ谷から『ドラケンが手ェ出してこないんだけど、それって魅力がないってことだよね?』と厄介な相談をされることを。
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    Hana_Sakuhin_

    MOURNING『昨夜未明、東京都のとあるアパートで男性の遺体が見つかりました。男性は数日前から連絡がつかないと家族から届けが出されておりました。また、部屋のクローゼットからは複数の女性を盗撮した写真が見つかり、そばにあった遺書にはそれらを悔やむような内容が書かれていたといいます。状況から警察は自殺の可能性が高いと――「三ツ谷ぁ。今日の晩飯、焼肉にしよーぜ。蘭ちゃんが奢ってやるよ」
    死人に口なしどうしてこうなった。なんて、記憶を辿ってみようとしても、果たしてどこまで遡れば良いのか。

    三ツ谷はフライパンの上で油と踊るウインナーをそつなく皿に移しながら、ちらりと視線をダイニングに向ける。そこに広がる光景に、思わずうーんと唸ってしまって慌てて誤魔化すように欠伸を零す。

    「まだねみぃの?」

    朝の光が燦々と降りそそぐ室内で、机に頬杖をついた男はくすりと笑った。藤色の淡い瞳が美しく煌めく。ほんのちょっと揶揄うように細められた目は、ふとしたら勘違いしてしまいそうになるくらい優しい。

    「寝らんなかったか?」

    返事をしなかったからだろう、男はおもむろに首を傾げた。まだセットされていない髪がひとふさ、さらりと額に落ちる。つくづく朝が似合わないヤツ、なんて思いながら三ツ谷は首を横に振った。
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