ワンス・アポン・ア・ドリーム 第四話 しとしとと雨が降っている。広い庭の隅っこで、僕は独り、傘も差さずにうずくまって泣いている。
(ごめんなさい……。ごめんなさい、ごめんなさい……)
「天彦?」
「あっ……」
ふいに、柔らかな声と共に雨が止んだ。見上げると、和傘を差し出した母が立っていた。
「お、お母様……」
「もう、ここにいたのね」
優しく微笑みながら母がしゃがむ。ふわりと、雨の匂いに混じって微かに白粉の香りが舞う。
どうしてこの場所が分かったのだろう。今、世界で一番見られたくない人に泣いているところを見られてしまった。慌てて袖で擦ったけれど、余計にポロポロと溢れてしまう。
「あらあら」
クスリと笑いながら、そっと母がハンカチで拭ってくれる。僕の大好きな母の匂い。ますます、ぐにゃりと視界が滲む。
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