「王様と僕 第二幕(途中)」 テラさんと二人芝居をすることになった――というか、強制的に決められた。
「じゃあ、今から台本を修正してくよ! 準備はいい!?」
「は、はい!」
放課後の、蔦のはびこる古い倉庫にて。小道具の伊達眼鏡を光らせ指示棒を持ちながら、テラさんがホワイトボードの前で教師さながらに進行していく。一人芝居用の脚本を二人芝居用に変えるため、台詞やシーンなどを調整する必要があるらしい。彼が読み上げる修正後の台詞を、僕は必死に台本に書き込んでいく。
『王様と私』は、1860年代のシャム、現代のタイが舞台の実話を元にした物語だ。家庭教師として宮廷に入ったイギリス人のアンナは、封建的な王としばしば対立する。いつしか二人の間にほのかな恋心が芽生えるも、王に病魔が襲い、最後は――という悲しい結末だ。
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