仮 伊弉冉一二三という男はデリカシーというものを忘れてこの世に生まれてきたのだろうと常々思っている。短くはない付き合いの中で、そのデリカシーのなさに何度青筋を立てたかは幻太郎自身にも把握できていない。そのぐらい心の柔らかい部分にずかずかと入ってくるのだ、伊弉冉一二三という男は。まあ、そんな奴とこいびとどうし、というものになってしまったのだから、人生何があるか分からないなぁ〜なんて呑気に考える今日この頃。
そうそう、青筋を立てたことの一つが先日の出来事だった。
夜も深まった時間帯。扇風機のみで夜を越せる気温となり、快適に惰眠を貪っていたあの夜。
クスクスという笑い声とシャッター音で目が覚めた。朧げな感覚の中で薄らと目を開くとこちらにスマートフォンを向ける伊弉冉一二三の姿があった。寝起きのためいまいち状況が読み込めない中、頭をフル回転させた。