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    夢魅屋の終雪

    @hiduki_kasuga

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    夢魅屋の終雪です。推しのRがつくものを投稿してます

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    夢魅屋の終雪

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    現代AU
    藍家に同居している両片思いの大学生の曦澄
    クリスマスアンケートSS

    #曦澄
    #創作モブ
    originalMob

    【曦澄】クリスマスまであと11日【腐向け】「晩吟は、クリスマスの予定ってある?」

    歯を磨いていると、洗面台の鏡越しに顔を覗き込んでいる家主にそう聞かれた。
    口の中の泡を濯いでから、首を横に振る。

    「ない」
    「そう、よかった。なら、一緒に過ごさない?」

    ものすごく安堵したというような顔で、誘ってくる。
    ないとは、言ったけれど一緒に過ごすとは言っていない。
    けれど、家主の藍曦臣を無碍にるるわけにもいかないだろう。

    「……解った」

    どうせ、彼のことだからクリスマスは会食やら何やらで夜遅くに帰ってくるはずだ。
    しかし、胸に手を当てて喜んでいる藍曦臣にもしや?とある疑惑が浮かぶ。

    「よかった、叔父上に会食を代わってもらった甲斐があったよ」
    「断ったらどうするつもりだったんだ」
    「忘機のところにお邪魔するよ」

    本当に、邪魔だろうな。と、江晩吟は思った。なんせ、江晩吟の義兄と彼の弟は恋人同士で同棲までしている。今年が初めてのクリスマスだ。
    それにしてもやはり叔父である藍啓仁に代理を頼んだのか。
    大学最後のクリスマスだから、家に友人を招いて騒いでみたいのだろう。

    「それで、明玦さんと光瑶が来るまでに部屋の飾り付けでもすればいいのか?
    料理でもすればいいのか?」
    「え?二人は来ないよ??」
    「は?」

    つまり、藍曦臣と二人きりでクリスマスを過ごすということだろうか?
    驚いていると、藍曦臣は首を傾げていた。
    どうやら、本気で彼らを誘っているわけではないらしい。むしろ、なんで二人の名前が出ているんだとばかりの顔だ。

    「つ、つまりは俺とあなたと二人で?」
    「ええ、そのつもりですよ」

    二人を誘うつもりはないし、江晩吟が誰かを誘うことはないと踏んでいる。
    江晩吟に、誰かを誘えるほどに友人はいない。
    一人くらいは心当たりあるが、彼はなんだかんだと言ってブラコンであり自分の兄の側から離れないだろう。
    しかも藍曦臣が、その兄を誘わないと言っているのだから。
    もう一人は、従兄がセッティングした合コンに行ってくると連絡を貰ったばかりだ。
    一度も合コンで彼女が出来てないのによくやる。

    「わ、解った…」
    「約束ですよ」
    「うん」

    嬉しそうにする藍曦臣を見て、うなづくしか無い。
    通いの家政夫が「朝食ですよ~」と声をかけてくると、藍曦臣はリビングに向かった。
    彼がいなくなった後に、熱った顔を洗う。

    「クリスマスだぞ?なんで、俺なんかと……」

    濡れた顔を鏡で見れば、嬉しくてにやつきそうになる自分がいた。
    江晩吟は、小さな頃から優しいお兄さんである藍曦臣に憧れを抱いていた。

    魏無羨が家の外に出てしまって、姉も婚約者の家に通うようになった。
    あの家に一人でいる時間が多くなり、意を決して『一人暮らしがしたい』と告げてみた。
    すると困ったような顔をしてた父に、
    家を出たいなら信頼のおける人とのルームシェアをしろと言われてしまった。
    父が信頼のおける人物なんて、藍啓仁、聶明玦、金光善のいずれかだ。
    金光善は、姉の婚約者の父親だ。
    いわば親戚となる人物だが、どうにも女好きを抜かしても好きになれず、姉の婚約者に対しても絶対に今まで以上に悪態をついてしまう。
    それに、江晩吟が少し苦手とする男が居る。
    では、聶明快はどうだろう?年若いけれど、大手企業の社長を務めており彼の強さには江晩吟も憧れを抱いている。
    けれど友人の兄というだけの間柄で、友人の聶懐桑が居なければきっと気まずいだろう。
    では、恩師の藍啓仁は父と同級生であり今もなお連絡のやり取りをしている。
    一番頼れる人ではあるけれど、そこまで甘えてしまうのもどうかと二の足が出ない。
    途方に暮れていると、藍曦臣が声をかけてくれた。
    藍曦臣は、藍啓仁の甥であり共に暮らしている人物だ。

    『困っているなら、頼ってくれるといいんだよ。忘機も家を出て、部屋も余ってるし』

    幼い頃から憧れていた人と同じ大学に進みたいと願い。
    一年だけでも同じ時を同じ場所で経験したいとだけ願っていた。
    子供の頃の様な距離感じゃなくてもいい、
    話す事も出来なくてもいいとさえ思っていたのに、
    同居の話が出た時は嬉しかった。
    それなのに、クリスマスまで過せるだなんて思わなかった。
    なんせ彼は学生の身でありながら、藍氏を背負ってたつ男なのだ。
    こういったイベントであれば、会食はずっと続くだろうに……。
    それなのに、わざわざ叔父であり江晩吟の恩師である藍啓仁に代行を頼むだなんて。

    「嬉しすぎるに決まってるだろう」

    石鹸の香りがするタオルに、顔を埋めて喜んだ。
    江晩吟が、藍曦臣に向けている気持ちを恋心だと気づいたのは、
    同居するにあたってのカミングアウトを聞いてからだった。

    (あの人なら、受け入れてくれるかもしれない……)

    ▼△▼△▼△▼△▼


    「……はぁ」
    「どないしたん」

    朝食を用意している家政夫が、ため息をつく藍曦臣に声をかける。

    「晩吟の事だよ。クリスマスに二人きりで過ごしたいって誘った意味を解ってないと思うんだよね」
    「ちゃんと伝えましたん?」
    「私が、ゲイだって?伝えたよ、それでもいいって承諾してくれたんだし」

    そやないよ。子供の頃から好きやったと伝えたんかと、
    ツッコミを入れたいけれど余計な事を口にすれば悪い方向に考えを転がす再従兄の性格を見越して口を閉ざした。
    ご自分の恋愛趣向が、男に向けられるのだと伝えただけでも彼にとっては大きな一歩だろう。
    しかし、初恋が未だに続いているとは思わなかった。

    「わて、クリスマスはデートやから連絡してきたらしばきますからな」
    「うん、大丈夫。ちゃんとやるよ」

    それでも、ため息を吐く。クリスマスを明けるために、多忙な日々を過ごしているのは確かだ。
    大学の課題やら論文も仕上げて、藍氏の当主としての仕事もこなしている。
    クリスマスが来るまでは、彼には休みはないだろう。それこそ、睡眠時間も削らなければ仕事はおわらない

    「クリスマスに、晩吟に告白をする」
    「当たって砕けたら、骨くらいひろて差し上げますな」

    江晩吟に告白する!と決意表明を、この二十数年間で何度聞いたことかと呆れる。
    都合が悪くなったり、江晩吟自体が鈍くて伝わらないなどと言うことは、多々あった。
    何よりも穏やかであり押しが強い所がある藍曦臣だが、こういった事には奥手というか不慣れなのだ。
    春のような温かな微笑みを浮かべる美丈夫は、これまで生きてきた中でどれだけの人の袖を濡らしてきたことか。

    (まぁ、彼の特別になった自分が好きみたいな奴らばっかりやったもんな)

    中学高校と思い出しながら、家政夫は大きくため息をついた。
    博愛で誰にでも平等な乱曦臣は、特別を作らない。
    だからこそ、彼の特別になった時にどれだけの注目を集めて名声を手に入れらるかだなんて夢を見る輩は多い。
    しかし彼の特別になった所で、欲望は満たされない。
    隣に立とうが、手を繋ごうが、それは要望に応えているだけのこと。
    もっともっとと強請っても、分け隔てなく優しいのは変わらない。
    おかげで一人、拗らせて泣きを見た男を知っている。
    仕方ないだろう、藍曦臣の特別になるには家政夫や叔父と弟みたいに血が繋がってなければならない。
    唯一の特別な人は、子供の頃からずっと想っているけれど手に入らない人だ。
    今回の同居も、江晩吟の父親に相談をされて
    『なら、信頼のおける誰かとルームシェアして貰えばいいのでは?』なんて白々しく答えたのだ。
    弟の事例もあってか、藍曦臣に愛息子を預けるのがいいのだと判断された。
    いや、その人が狼ですからな?とツッコミは入れたいが、長年すぐ側でしたくもない恋愛相談されてた身としては口を挟むことはしなかった。

    「なるようになったらええですな」
    「……それ、応援しているようで応援してないだろう」
    「しとりますって」

    家政夫は、鼻で笑ってから江晩吟の朝食を用意する。
    今まで新聞を読んで黙っていた叔父が、大きくため息をついた。

    「むやみに手を出すなら、黙っていないぞ」
    「出せませんよ。江社長だって、愛息子の晩吟を信頼して預けてくださったんですよ。
    そんな期待を裏切れるほど、私も野暮ではありません」

    再び藍啓仁は、大きく溜め息を吐いた。
    家政婦も「野暮になったれよ」と小さな声と共にため息を吐いた。
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    月はまだ出ない夜
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     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
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     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
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     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
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     それが今や、書きたいことといえばひとつしかない。
     ――会いたい。
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