Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    夢魅屋の終雪

    @hiduki_kasuga

    @hiduki_kasuga
    夢魅屋の終雪です。推しのRがつくものを投稿してます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💙 💜 🐳 🐙
    POIPOI 91

    夢魅屋の終雪

    ☆quiet follow

    ※モブがメインじゃなかろうか…ってくらいにモブが出ます。
    澄の人生相談。兄上、引きこもってる場合じゃないよ。
    クリスマスアンケートSS

    #曦澄
    #創作モブ
    originalMob

    【曦澄】クリスマスまであと9日【腐向け】高校時代の友人とデパートを巡る江晩吟、
    一応一般家庭よりも裕福層の生まれではあり親の仕送りで生活をしている。
    義兄には高校に入ってからすぐにバイトの許可を出したにもかかわらず、江晩吟にはバイトをしていいという許可が出ていない。
    藍家に家賃として渡そうとも思ったけれど、すでに月々の家賃と生活費は渡されていた。
    よって、仕送りは勉強に必要なモノと自分の衣服などの雑貨に使うくらいでほとんど使っていない。
    仕送りの金額は、高くはないが少なくもない。実家でバイトをすれば確実に月給で手に入るくらいの金額を渡されている。
    とりあえず余った分は貯めてはいるため、そこそこの値段のするモノが買える。

    まず友人と並んで見たのは、財布だった。
    しかし、藍家の当主に見合った財布なんて展示されているような財布はない。
    むしろ彼が使っている財布を見たが、使い込まれたブランド品であり気取らずにいて彼の手にしっくりと似合うモノだった。

    「……財布は、ないな」
    「藍さんには、別なモノ贈りましょう」
    「うん……」

    まだ一つ目だ。と、次に向かったのは腕時計の所だった。
    自分の時計も壊れているし、逆に自分のが欲しいくらいだった。

    「時計をプレゼントって」
    「うん?」
    「貴方の時間をくださいとか、私の時間をあげますって感じがしますよね。まるでプロポーズみたい」

    友人の言葉に、手に取ろうとしていた時計から手をそっと引いた。
    付き合っても居ない男からいきなり腕時計を渡されても、困るだろう。
    それに彼の腕にはすでに、シルバーの腕時計が時を刻んでいる。
    藍啓仁やほかの藍家の人達もしている時計の為、あれは藍家の者の証なのかもしれない。

    「……はぁ」と、江晩吟がため息をついていると、にこにことした綺麗な女性の店員が近づいてきた。

    「どうなされました?」
    「……あ、えっと」
    「年上の男性に送るクリスマスプレゼントって、どんな物がいいと思います?
    間柄は普段お世話になってるお兄さんなんですけど」

    友人が代わりに応えると店員は「どのようなお仕事をしておられますか?」と尋ねてきた。
    どのような…と考えてみる。
    家での仕事をよくしているようにも見えるが、かなり外出もしていてあちらこちらの人と会食だとか会議だとかをしているみたいだ。
    江晩吟の父親とも会議をしている所を、見たことがある。

    「えーっと…営業?接客?」
    「あら、でしたらネクタイをお使いになられますね?」
    「そうですね。白いネクタイを使ってます」

    いつも出掛ける時は、白いスーツにネクタイをしている。藍色の糸が編み込まれているのか光の加減によっては白藍に見えた。
    ネクタイのコーナーを案内されるが、ネクタイは決まっているのだ。
    それを伝えれば、ネクタイピンはどうかと勧められた。
    しかし腕時計と同じような理由が、頭をよぎってしまう。
    江晩吟が迷っていると、店員も真剣に考えてくれた。

    「まだクリスマスまで時間もありますので、ゆっくりお考えになってみては?
    あ、もしくは手作りのプレゼントというのもお勧めしますよ」

    店員は、楽し気に手芸コーナーを示した。

    「手作り……」
    「貴方は、手先は器用だから出来そうですよね」
    「お前も一緒にやるなら考えなくもない」
    「合コンのプレゼント交換に、手作りって……」

    店員と友人と三人で、ははっと笑い合ってから何も買わずにデパートを後にした。
    家に帰るころには、夕飯の時間より少しだけ前だった。
    「もう勝手にせぇ!」と家政夫の声が、藍曦臣の部屋から聞こえる。

    「ああ、江の坊ちゃんおかえりなさい」
    「ただ今帰りました」

    玄関で驚いて固まっているところを、何事もなかったように家政夫に出迎えられる。

    「食事できとるから、手を洗ってきてくださいね」
    「はい」

    洗面所に促されて、手を洗ったりうがいをする。
    ついでにはねていた髪を整えると、すぐにリビングに向かった。
    そこには、食事が藍啓仁と江晩吟の食事しか並べられておらず首をかしげる。

    「帰ったか」
    「あ、先生、ただ今帰りました」

    ぺこっと頭を下げると、難しい顔をしている藍啓仁が「うむ、お帰り」と言ってくれる。
    決まった席に座ると、温かいご飯が横から差し出された。

    「あの、曦臣さんは」
    「曦臣なら、食欲がないっちゅーて部屋から出てこんのですわ」
    「心配ですね」
    「せやろ?だから、江の坊ちゃん後で見に行ったげてな」

    そう言って、キッチンへと戻っていく。
    食事をする時は、会話を禁止している藍家は静かな食事が行われる。
    しかし春のように微笑む藍曦臣が居ない食卓は、どこか緊張してしまうのだ。
    相変わらず食事は美味しくて、箸が進んだ。
    レンコンの料理があると江晩吟は嬉しそうに食事をするために、色んなレパートリーで出してくれるようにもなった。
    精進料理かよ!というくらいに、薬膳が多かった食卓であったためかレンコンも藍啓仁にすんなりと受け入れられた。
    どうしても肉料理が食べたくなれば、江晩吟が作る時もある。江晩吟が聶家のバラ肉に、歓喜するのはその所為でもある。
    食事を終えると、珍しく藍啓仁が食卓から立たなかった。

    「……どこかに出かけていたのか?」
    「はい、デパートでクリスマスプレゼントを物色してたんです。でも、これと言って見つからなくて……」
    「そうか」
    「それで店員が、手作りはどうかと勧めてくれて」

    でも、どうすればいいのか解らないのだと告げれば、藍啓仁は自慢の髭を撫でた。

    「悠瞬」
    「はいはい、どないしました」

    呼ばれた家政夫が、キッチンから顔を出す。

    「たしかお前は、今年も編み物をするとか言っていたな」
    「ええ、彼女さんにストールを上げようかと」

    藍啓仁の言葉に、にこにこしながら楽しそうにうなづく。

    「晩吟に教えてやってくれないか」
    「へぇ、ええですけど……ぼっちゃん誰に上げるんです?今からだと、マフラー一枚くらいしか出来んと思いますけど」
    「あ、えっと……その」

    家政夫は、江晩吟が誰とクリスマスを過ごすのかは知っている。
    けれど、はっきりと聞いてみたいのだ。

    「……曦臣さんに…」

    恥ずかしそうに小さな声でそう伝えると、弟でも見るかのような目で家政夫は頷いた。

    「ええですよ。簡単なのを教えて差し上げます。でも、学業はおろそかにしたらあきませんよ」
    「は、はい!」
    「お前もだぞ、悠瞬。お前が大学の単位を落としたら、私が叔父になんといえばいいのか」
    「ええですやん。ちゃんと、教師になれるように頑張っとりますから」
    「え、悠瞬さんは教師になられるんですか?」
    「せやよ。そしたら、先生とずーっと一緒に居られるもん」

    幸せそうに告げる家政夫に、藍啓仁は大きく溜め息を吐いた。
    藍啓仁としては、自分の様な教師になるのではなくて藍曦臣の秘書になって欲しいらしいのだが、
    それは弟の藍忘機がすればいいと主張して、頑なに譲らないのだ。

    「ぼっちゃんは?どうするん?」
    「え……」
    「親の後継ぐんも私みたいに自由にするんも、江のぼっちゃんの自由ですよ?」

    家政夫としては、藍曦臣の傍にいてもらえると嬉しいのだが……それは藍啓仁の手前口に出さないで置いた。

    「ぼっちゃんが選んだことなら、江社長も夫人も応援してくれますて」
    「……」

    そうだろうか?期待外れだと、かすかな興味すら消えてしまうのではないだろうか……。
    口元を引くつかせて視線が下に落ちると、ふぅ…と藍啓仁が溜め息を吐いた。

    「曦臣に、自分は同性愛者だと告げられた時」
    「……」
    「私はひどく落胆したし、何処で育て方を間違えたのだろうと悩みもした」
    「……」
    「けれど、その事以外は私の期待に応えてくれていた」
    「……俺は、私は両親の期待に応えられていません。いつだって、父の期待は無羨で母からの期待は応えられない」

    ぎゅっと膝の上でこぶしを作って話せば「晩吟」と声を掛けられた。

    「曦臣がな、言ったのだ。
    言わなければいいと思ってはいたけれど、自分の心に嘘はつけないし隠したままでは私を騙すから…と。
    自分の心に寄り添ってみたらどうだ?」
    「自分の心に?」
    「我慢せず言葉にすれば、伝わる事もあるだろう」

    藍啓仁は「お前たち家族は、本当に言葉が足らないからな」と、呆れたようにつぶやく。
    親同士が同級生である為か、性質までも理解されてしまっている。

    「親の期待なんてものは、私たちの身勝手な願いでもある」
    「……」
    「それに応えようとしてくれるのは嬉しいけれど、苦しませる事は望んでいないのだ。
    だから、曦臣と忘機が生きやすいようにと受け入れる……努力は、まぁ…している」

    受け止めきれてないんだな。と、思いながらも藍啓仁を見つめれば、そこには教師ではなくて親の顔をしている人がいた。
    藍忘機と魏無羨が同棲すると行った時に吐血して救急車に運ばれた事もある為、
    自慢の藍曦臣の事でもずっと考えていたのだろう。

    「まずは、晩吟が何をしたいのかを考えて見なさい。それから、両親の言葉に耳を傾けるといい」
    「はい」

    こくりと頷けば、藍啓仁は椅子から立ち上がり書斎へと向かった。

    「とりあえず、ぼっちゃんはお風呂に行っておいで、その後にマフラーを教えます」
    「解りました」

    元気なく立ちあがると、荷物を持って自分の部屋へと向かう。
    途中で、藍曦臣の部屋の前を通る為に扉を軽く叩く。

    「あの曦臣さん、食欲がないって聞いたんだが大丈夫か?」

    声をかけると中から布がずれる音が聞こえてきて、もしや寝込むくらい辛いのか?と心配になる。
    扉が開かれたが、驚いた。
    そこにいるのが一瞬だけ藍忘機かと思うくらいに、笑顔も表情もない。

    「曦臣さん?」
    「……少し、疲れが出たみたいでね。寝れば治るから」
    「……本当に?」
    「うん、本当本当」

    不安になり見上げれば、強張ったような笑顔を浮かべて頷く。
    無理をしているのだな…と、思ってすぐに部屋に戻ろうとした。

    しかし―――ぽとり。

    二人の視線が、そちらを向いた。
    四角い袋が三枚そこに落ちており、男ならばそれを見覚えがあるだろう。
    突き返したはずのそれは、コートにいつの間にかしのばされていたらしい。

    「……晩吟」
    「ひっ!こ、これはその!!!違うんだ!!友人が無理やり」
    「無理やり?」
    「押し付けてきただけなんだ!!!」

    そそくさとそれを拾い集めて、自分の部屋に逃げ込むように藍曦臣の部屋から離れた。
    部屋に入ると押し付けられたコンドームを、ベットに叩きつけた。

    「あ、あの野郎!!!」

    メールで抗議文を送ったが、暖簾に腕押しのようにひらひらとかわされてしまった。


    ▽▲▽▲▽


    取り残された藍曦臣は、気力で立っていた足から力が抜けてその場に倒れこんでしまう。

    「え、あれ、コンドームだよね?え、友人ってコンドームを渡したりするような事するのか?」

    自分が俗世に疎い事は十分に承知しているし、聶懐桑が男友達にエロ本を貸し借りしているのも知っている。
    けれど、コンドームを渡したりするのだろうか?
    少なくとも藍曦臣と金光瑶と聶明玦はしたことが無い。

    「いや、でも、晩吟はヘテロのはずだし……」

    幼い頃から江晩吟を知っているが、彼が男を好きになったと言うのを聞いたことがない。いや、普通聞かないけれど……。
    それでも大学に入ってから三人の彼女ができたとも聞いたし、大学で女性と腕を組んで歩いているのを藍曦臣も見たことがある。
    それで諦めていたならよかったのに、すぐに振られたとしると嬉しくなった。
    部屋の入口でうずくまっていると「あっぶない」と声が降りかかる。

    「……なんや、閉関は終わりですん」
    「悠瞬」
    「なんで、祖内に泣きそうな顔しとりますのん。まるで、忘機やわぁ」

    助けを求めるように家政夫を見上げると、苦笑される。
    手に持っていた軽食を手渡されて、部屋に二人で入った。

    「食べれるようになったら、食べたらええ」
    「……ありがとう」
    「それよりも、なんぞあったん?」

    藍曦臣をベットに座らせて、家政夫は椅子を持ってきて座った。
    どうやら話すまで部屋から、出てくれないらしい。
    さっきは勝手にしろと言って、出て行ったのに……。

    「……実は、帰り道で―――…」

    藍曦臣は、先ほどの帰り道で江晩吟と男と喫茶店に居たのを見た事を話した。
    そのじゃれ合い方や笑い方が、自分が知っているモノと違うために嫉妬したのだと。
    すると、腕を組んで聞いていた家政夫は、すっと指を前に出してきたかと思うと思いっきり人差し指をはじいて藍曦臣の額に衝撃を与える。

    「あっほか!!!」
    「なにするんだ」
    「男友達とじゃれ合う度に嫉妬しとったら、私なんぞあんさんに殺されるわ!」

    そこそこの痛みだった為に額を押さえて、彼を見る。

    「何かあるの?」
    「風呂あがったら、マフラーの編み方を教えるって約束があります」
    「……そう」

    そのマフラーは、きっと彼の友人に渡されるんだろうな……。視線が泳いでから、下に向かう。
    その為か、家政夫の顔に思いっきり『面倒くさい』と書かれている事に気づけないでいた。

    「ともかく、男同士の友達ならふざけてコンドームを押し付け合う事なんてあることやわ」
    「私はした事ないよ」
    「そないな状態になったら、私か先生があの二人の所に乗り込むわ」

    うちのに何してくれてる…と、乗り込んで正座をさせて説教だ。

    「魏のぼっちゃん見てたら、そういうおふざけをする事があるのも解る事やろ?」
    「……」
    「そこまで頭が回らんの?」
    「……」

    過保護に育て過ぎたか?と、一緒に育ったはずの男に対して思う。
    しかし、嫉妬して頭に血がのぼってなにも考えられなくなったのだろう。
    そもそもコンドームを渡されるって事は、なにかしら江晩吟は友人に話をしているわけだ。

    「……もしかして、曦臣兄ちゃんの知り合いかもしれんよ?」
    「え」

    それなら、江晩吟が相談する相手に心当たりがないわけではない。

    「詳しい事は解らんけど、多分…幼馴染やろな」
    「なんで知ってるの?」
    「ぼっちゃん預かる身としては、いろいろとあるんですわ」

    話し込んでいたらしく、江晩吟が風呂から出てきて廊下を歩いている足音が聞こえた。

    「それじゃあ、私はこれで」
    「あ、うん……」
    「食べれるようなら、食べてくださいね」

    念を押されて出ていく彼を見送り、藍曦臣はベットに仰向けになるように倒れこむ。

    「……このまま眠ってしまおうか」

    でも食べなければ、心配をかけるだろう。
    はぁ……とため息を吐いて、再び起き上がる。簡単に食べられるようなサンドイッチだ。

    「どうしようか……」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏☺👏👏👏☺👏☺☺☺☺☺❤☺☺☺♓🅰🇴☺💜💜💜
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

    takami180

    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

    takami180

    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

    recommended works

    takami180

    PROGRESS続長編曦澄9
    嵐来る(羨哥哥が出ます。ホワイサンも名前だけ出ます)
     十日が過ぎた。
     藍曦臣から文はない。自分から文を出そうにも、何を書いたらいいか分からない。
     江澄はひと月は待つつもりでいた。
     そのくらい待てば、藍曦臣からなにかしら連絡があると思っていた。
     ところが、その前に思わぬ客を迎えることになった。
    「元気か、江澄」
     白い酒壺を片手に、門前に立つのは黒い衣の人物である。
    「何をしにきた。とうとう追い出されたか」
    「まさか! 藍湛がいないから遊びに来たんだよ」
    「いらん、帰れ」
    「そう言うなよー、みやげもあるぞ、ほら」
     酒壺が三つ、天子笑とある。
     江澄は魏無羨を客坊へと通した。
    「俺は忙しいんだ。夜になるまで、ここいにいろ。勝手にうろつくなよ。あと、ひとりで酒を全部飲むなよ」
     魏無羨は「はいはい」と返事をして、ごろりと床に寝転がった。相変わらず、図々しいやつだ。
     江澄はそれでも夕刻には政務を切り上げた。
     せっかくの天子笑を全部飲まれてはかなわない。
     家僕につまめるものを持たせて客坊へと向かう。途中、笛の音が聞こえた。
     物悲しい響きの曲だ。
    「お、江澄。待ってたぞ」
     江澄が顔を見せると、彼はすぐに吹奏をやめた。
    「おとなし 2640

    takami180

    DONE曦澄ワンドロワンライ
    第五回お題「夜狩」

    恋人関係曦澄ですが、曦が出てきません。夜狩を真っ向から書いた結果、こんなことに……
     その夜、江宗主は非常に機嫌が悪かった。
     紫の雷が夜闇を切り裂いていく。その後には凶屍がばたばたと倒れ伏している。
    「ふん、他愛ない」
     雲夢の端、小さな世家から助けを求められたのは昨夜のことだった。急に凶屍があふれかえり、仙師全員で対応に当たっているが手が回りきらない。どうにか江家に応援を派遣してもらえないか、という話であった。
     江澄はその翌日、つまり今朝から姑蘇へ発つ予定であった。藍家宗主からの招きによって、五日ほどを雲深不知処で過ごすことになっていた。
     しかし、これでは蓮花塢を留守にできない。
     世家への応援を師弟たちに任せることもできたが、江澄は蓮花塢に残ってひとり苛立ちを抱えることになる。そんなことは御免である。
     世家の宗主は江宗主自らが出向いたことにひどく驚き、次いで感謝の意を述べた。いたく感激しているふうでもあった。
    「あとどのくらいいる」
    「それが分かりませんで。原因も不明のままなのです」
    「ならば、調査からはじめなければな」
     江澄は最初に凶屍が現れたという地点へと向かう。山を進めば進むほど闇が深くなる。今晩、月はまだ出ていない。
     ふいに嫌な気配を感じて紫電 1712

    不知火 螢。

    DONE以前、魔道祖師オンライン交流会5の展示作品の続きが一つ完成しました。
    謎時空の現パロで、藍曦臣がパティシエ、江澄が社畜してます。
    これから曦澄になる予定です。
    彼らがくっつくまでを書いていければと思っています。
    たくさん書けたらまとめてpixivでまとめます。
    作者がゼリーが好きなので、なんだか時間がかかってしまいましたが、楽しんでいただければ嬉しいです。
    めぐる綺羅箱*ゼリーの煌き
    忙しかった仕事も繁忙期が終わったことで落ち着いてきた。
    家に帰って冷蔵庫を開けたら、水と10秒チャージ系のゼリーしか入っていないことに気がつき、食べるものを調達しなければ何もできないことに気がついた。
    家の近くのスーパーに久しぶりに入った。
    なんとも言えないスーパーの寒さと、数の少なくなった野菜たち。
    ちらほらといる独り身であろう人。
    すぐに食べれるものをさがして惣菜コーナーに向かう。

    「あーーー。なんか肉。あと、酒買って行くか」
    ふらふらと歩いていたら、見覚えのある姿が見えた気がした。
    夜遅くだし、あの人ではないだろう。
    そう思って、酒を買いに行く。
    ジャックダニエルを手に取りつまみを探しに行く。
    途中、ゼリーが売っている場所を通った。
    4171