翌朝、藍曦臣は優しかった。
江澄を気遣って、「もう少し眠ってください」と牀榻を明け渡し、彼自身は卯の刻だからと身支度を整えて、外へと出ていった。
江澄はその隙に自分の客室へと戻り、供人をまとめ上げて金鱗台を去った。
きっと藍曦臣は酔っていたに違いない。酒精を金丹で消すといっても、多少の影響はあったのだろう。牀榻で、なにもかもを間違えた江澄を見て、彼はきっと冷静になったのだ。だからこそ、何もないままに朝を迎えることになったのだ。
沢蕪君とはじまるものがあるはずがなかった。
ところが、それから三日も経たないうちに文があった。
上等な紙には美しい手跡が映える。
白檀が香った。
——体調はいかがでしょう。清談会も終わり、繁忙も落ち着きましたので、あなたに会いに行きたいと思っています。ご都合をお聞かせください。
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