キス 内側から鍵をかけた予備室。ロナルドが一人暮らしをしていた頃には縁もなかった動画配信用の機材に囲まれた部屋の中央。そこに不釣り合いに配置されたマットレスの上で向かい合う二人は、しっとりと唇を合わせていた。
ぎゅっと己の太ももを掴んで離さないロナルドに対して、ドラルクは初心な恋人が羞恥心に負けて逃げ出さぬよう、相手の後頭部をやわりと抑えつけ、空いた手で頬の輪郭をなぞっていた。
「っん、ん」
固く引き結ばれた唇は、ドラルクの舌が撫でたところで開かれることはない。しかし鼻で息をしている様子もないロナルドは、赤ら顔で目尻に涙まで浮かべている。それが羞恥からか、息苦しさからかはわからないが、どちらにせよ彼にとって現状が容量オーバーなのは誰の目から見ても明らかだ。
2635