秘め事[Sco博♂] 作戦中のオペレーターのプライバシーなどあってなきが如きもの。ましてや指揮官の肩書を持つ身ともなれば。
「――以上でミーティングは終了だ。では各自配置に戻ってくれ。ああ、Scout、君は少し残ってくれるか」
呼び止められた上司への憐れみの眼差しを投げかける部下たちに小さく手を振りながら、男はやや足早に作戦机の前に立つ痩身の指揮官の元へと歩み寄った。
「ドクター、何か気がかりなことでも?」
「ああ、少し……いい、片付けの残りは私と彼で済まそう。そもそもここは私の天幕でもあるしな」
片付けの手を止めた後方支援担当の若手オペレーターたちは戸惑いながらも、暗に示された人払いの指示を見誤ることはなかった。めいめい手にした書類や機材をまとめながら、上官たちの邪魔にならぬよう速やかに去っていく。そうしてがらんとした空間に残されたのは、先ほどまでのざわめきの温度だけを残した空気と二人の男だった。
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